我が自慢の妹達は(2)
「それじゃ、いってきまーす」
ぼくの自慢の妹に別れを告げると「ニャー」っという返事が聞こえた。人間の言葉は分かっちゃいないと思うから、いってらっしゃいでは無いだろう。
「猫って人間の言葉分かるのかな」
「どうでしょう、今度聞いてみたらどうですか?あなたの妹のミーかユキに」
そうするよ、って返したらバカにされそうな気がする。というかバカにされてるのかな?いや、双葉流のボケなのか?
「そ、そうするよ」
すると、ヘヘンっと見下したように笑われてしまった、やっぱりバカにされてたちくしょう。
「よっ、御両人」
内心で膝を折って涙をほろりさせていると、背後から声変わり終わったのかどうか分かりづらい、耳に優しくない高音ボイスが……。誰だったかな?
「おいおい、無視すんなよ親友よ!」
自慢では無いけど、ぼくの交友関係は狭い、幼馴染の双葉をマイフレンドとしてカウントしていいのなら……アレ? これでようやく二人……?
「そんな、そんなことあるかぁ!?」
「な、なんだよ、そんなに親友が嫌だったのかよ!?」
あ、そのツンツン髪を指で摘んでくりくりする仕草、思い出したぞ、倉守タケシじゃん、エンカウント率低いから素で忘れかけていた。
双葉はじっとタケシを見ると、ふぅっと小さくため息をついた。
「ですが、倉守さん、優斗を親友と呼ぶには、友好度がまるで足りてませんが」
友好度って……ぼくはゲームのキャラか何かかな?
「そうかぁ? スケジュールで見て分かるようにお前らには結構会ってるんだけどな、ほれ」
自慢気にスケジュール帳を突き出されたので、覗いてみると、確かに、月曜から日曜までしっかり書き込まれている。なになに、野球部、バスケ部、UFO制作同好会、文芸部……etc。確かに週1の割合くらいで親友と談合と書いてある。
「前から気になってたけど、33部活掛け持ちってこれほんとに活動してるのか?」
「おうよ、なんて呼ばれてるか知ってるだろ、俺は」
「敵無し、味方無し、スケコマシ」
「うんうん、って違うわ! 敵無し、味方無し、喧嘩無し!ピースフルタケシだ!」
べしーんと大げさにツッコミを入れられた。
こいつは我が校に存在する33の部活全て掛け持ちするだけでなく、ちゃんと活動しているという。
「でも、タケシそれ全然定着して無いと思うぞ、聞くのは闇の仲裁人」
「なんだそれ、だせえな」
どっちもどっちだと思うけど。
「私も聞いたことあります、闇の仲裁人、全校生徒だけでなく、教師にも良い顔するので、どっちを取っても、利用価値があるとか」
「なんだそれ、あんまり聞きたくなかったな……」
大袈裟に肩を落とすタケシだったが、分かっているはずだ、自分で味方無しと自虐するくらいだし……幅広い顔を持っているということは、気安く秘密を言えないということ、友達以上親友未満が関の山なのかもしれない。
「まあまあ、元気出してください、これだけ会話すれば優斗さんの親密度は50くらい上がってます、親友の壁を破っちゃってください」
ちょっと双葉さん!? 友好度が親密度に変わってなんか濃密な関係っぽくなってますよ! ていうか、親友の壁を破った先は何が待ってるんですかね!?
「そ、そうか、うおおお燃えるぜ!」
「燃えないでくれ!」
校門が見えてくると、風紀委員とジャージ姿の体育教師がいる、これから学校だと思うと月曜日の朝みたいな気分にさせられるのだった。