今はニンゲンですから!(4)
「優斗は甘やかしすぎなんですよ」
「そうでもないだろ」
言ってから考える、甘やかしてるつもりはない、はず……確かにかわいいからある程度大目に見てるけど、それって甘やかしてるわけじゃないよな?
「ま、そういうことにしておきますが、時に、あの二人がついてきてしまった場合、ちゃんと言えるんですよね?」
ふむ? さっき言ったとおり追い返すつもりだけど? こんなに決意脆い男だと思われているのだろうか!
「ゆうと、勉強ってどんなことするの?」
「勉強は、そうだな、ぼく達のする勉強と二人がする勉強はちょっと………………ええええ!?」
「ん? どしたの?」
着いてきていた、着いてくるのが当たり前のように。
「ちょ、おいおい! ダメだって! 着いてきたら!」
「なんで?」
「それは、じろじろ見られるから?」
「ユキは見られてもいい」
「そもそも、学校には二人みたいな子供は入れないんだよ!」
「ダイジョーブ! なんとかなるって!」
ダメだ! 何を言っても返される! 助けて双葉!
双葉に救助の視線を送るも、何故かぷいっとそっぽ向かれてしまった。なんで!?
「それに、お昼のネコ缶は持ってきてな……ネコじゃないか今は……くぅぅ、どうすれば……!?」
「優斗、もういいよ、諦めて?」
ミーに背中をぽんと叩かれる、何故だ! 何故勝てない!? ぼくは悪くない! 正義は負けない! 負けないんだあああ!
「正義は勝つんだああああ!」
「ついに壊れましたか」
双葉はスマホを耳に当てながら、なにやらもそもそ話している、あ、通報かな? やめてね。
小学生女児の前で「正義が勝つ」、とか絶叫している人間なんてマトモじゃないもんね? 悪かったから許してね?
手短に通話は終わったみたいで、スマホを慣れた動きでしまうと鞄を持ち直した。
「さ、行きましょう、遅刻は嫌です」
「え、ええ? 二人は?」
済ました顔ですたすた歩き始めてしまった。問題は山積みだというのに!
「いいんですよ、倉守さんにがんばってもらうので」
倉守? 倉守倉守……? 誰?
「タケシさんです、闇の仲裁人とかいう」
「あ、ああ、タケシか、さっきの電話タケシだったのか」
「そうです、消しゴムバトル部の朝練中だったみたいですが、二つ返事で快諾していただきました」
なんだその部活……朝練するほどのものなのか?
って、待て、それよりも……。
「ま、まさか、この二人連れて授業するってわけじゃないよな!?」
「そのまさかです」
「は、はぁ!?」
「「わーい」」
膝を折って倒れそうになるぼくと真逆に、声を上げて歓喜する二人。クラスメイトに質問攻めされてもみくちゃになる未来が今からでもしっかり見えるし。
兄妹の関係でもないのにパパとか呼ばれてロリコン扱いされるかもしれない、ぼくの平穏な学校生活は……。