ぼくは不審者じゃありません、この2人? ペットです。(5)
あれから佐藤さんによるミニファッションショーが開催されたが、それもユキの「ぐぅぅ」という腹の音を合図に終了することとなった。
会計は15000円と希望ジャストで、安くなって無いじゃん! 嘘付き! と脳内のぼくが抗議したのも束の間、手渡しされた紙袋の中には、外着3着ずつ、オマケでパジャマ、靴下下着とフルセットが揃っている、それもコスプレまがいの服じゃなくて普通の服だった。
むしろ、どれも凄くかわいく、この二人が着たところを想像するだけで、思わずにやりと笑みが漏れそうだ。レジで微笑む佐藤さんが初めて神々しく見えた。
「ゆうと、まだ?」
ユキがぶかぶかのジャージを両手でぷらぷらして遊びながら首を傾げた。
「もうちょっと待ってね……あれ? これ着て帰ったら?」
お腹空いた~とうなだれる二人を見ると、来たときと同じぶかぶかのジャージ姿だ。このかわいい服を見ると、よくここまでこんな格好で来れたなと、正気を疑いたくなるレベルだ。
「あーそれがですね、私も提案したんですよねー」
あれ? そうなのか、じゃあなんでだろう? この服普通に見えるけど、実はいやらしい所に穴が開いてたり、えっちな刺繍とかしてあったり……?
「そのジャージですが……お兄さんの匂いがするから着たいらしいですよ、もしかしてブラザーラヴな関係ですか?」
はあ!? なんだそれ!
「ちがうちがう!」
首の骨がおかしくなりそうなくらい首を振る。
おかしいだろその理由! 確かにネコは匂いで安心したりするが、変なとこでネコアピールしなくていいから!
「ミー、ユキ」
「ん?」
「?」
「今すぐ着替えてこないと、昼飯抜きだからな!」
「「ええー!?」」
この時の二人が出した声は、同フロアーの端から端まで聞こえたらしい。