妖精は、無用心である。
フィオナのキャラ、気に入ってます。
今日は3話連続投稿します。1時間置きに出す予定です
ーーーーという訳なんだ」
アホか。しかも底無しの。
「失礼なのですっ!」
やべ、声に出てた。
「だってお前ら、そんな罠に引っかかるなんて殆どギャグだろ」
そういうとフィオナはまた顔を真っ赤にして何か言っているが、俺は聞こえないフリをする。
彼らの話はこうだ。
いつものように森を飛んでいると、角砂糖が落ちていた。妖精族は甘いものに目がないらしく、2人してそれを夢中で舐めていたそうだ。
その時点でどうかと思うが、さらにその先には角砂糖の道が続いていて……
と、まあここまで聞けば分かるだろう。
間抜けにもそれを追っていった結果、上からカゴが落ちて来た、という訳だ。
ティナの方は何とか抜け出せたそうだが、フィオナは捕まってしまい、何とか人間は振り切ったが怪我を負ってしまって動けなくなったらしい。
まぁなんとも締まらない話だ。
妖精族はみんなこうなのか?
「ところで、怪我人を放置してティナはどこに行ってたんだ?」
「あぁ、コレを採って来たんだ。見つけるのに苦労したよ…」
そう言ってティナは、
青白く光る花を取り出した。
「綺麗だけど、これがなんだってんだ?」
「妖精の霊薬の材料になるんだ。薬効成分を抽出するのに2、3日かかっちゃうんだけど、他に手はないしね。」
なるほどな。
……ん?
「なぁティナ、それちょっと貸してくれないか」
「え?良いけど、貴重なものだから無くさないでね?」
俺は花を受け取ると、それをアイテムストレージに入れる。
妖精たちには少し怪訝な顔をされたが、まぁいい。
クラフトルームに花を取り出す。
とりあえず分解だ。
「よし、いけるな」
分解した花から、薬効成分を抽出し、丁寧に不純物を取り除いていく。
…………できた、薬効成分100%だ。まぁこれで間違いないだろう。
ついでに入れ物も作るか。
もともと入れてあった大きな岩の一部を切り取り、成形して磨く。
青磁のように美しい石製の瓶ができた。
その瓶に、抽出した薬効成分流し込む。これでよし。
ふふふ、我ながら見事な手際だ…
…「ねぇそろそろ花、返してくれない?」「顔が気持ち悪いのです」
おっと、ついニヤついてしまった。
「すまんすまん、ちょっと集中してた。ほらこれ」
「え、なにコレ…??」
「綺麗な瓶なのです!」
「俺のスキルで薬効成分を抽出してみたから、見てみてくれないか?あ、何か違ってたら戻す事もできるから心配するな」
俺がそういうと、ティナは瓶の蓋を開けて匂いを嗅ぐ。
「っ!?これはっ…!?」
「どうしたのです?」
?なんか騒いでるな。
「…君、名前はなんて言うんだい?」
「アルフレッド・リンドロートだ。アルって呼ばれることが多いかな」
「そうかい、じゃあアル。僕は妖精の国では薬剤師をしているんだ、自分で言うのもなんだけど腕には自信がある。そして、いままで色んな薬を見てきたけど、こんな霊薬は見たことがないよ」
「どこか間違ってたか?」
「ううん、霊薬には間違いないんだけど。純度が異常なんだ。薬剤師の中にも製薬のスキル持ちはいるけど、ここまでのものは見たことがない。しかも、ものの数分でなんてありえないよ……。ねぇアル、君のスキルってどんなものなんだい?」
「うーん、それが説明しづらいんだよな。」
「そうなのかい、あ、他人にスキルのことを尋ねるのは君たちの間ではマナー違反だったね。ごめんよ。さぁフィオナ、これを飲んで。ちゃんとアルにお礼を言うんだよ?」
「にんげん!褒めてやるです!」
「こらフィオナ、その呼び方はやめるんだ。僕らは助けてもらったんだから、ね?」
「うっ。…アル、ありがとうなのです」
なんだこいつ、可愛いところあるじゃないか。
「ああ、お安い御用だ」
「最低でも3日は帰れないと思っていたから…本当に助かったよ。ありがとう、これでみんなに心配かけずに済みそうだよ。」
「そうか、それは良かった。」
すぐそこでフィオナが身体に見合わない大きさの瓶を抱えている。
妖精の体に合わせて作るべきだったかな…
俺の霊薬を飲んだフィオナは、すっかり元気になった。
怪我する前よりも身体の調子がいいらしい。
「それじゃあ、もう捕まるんじゃないぞ」
「うん!ありがとなのです!」
最初と比べるとだいぶ愛想が良くなったなこの妖精。
ティナの方は何か難しい顔をしている
「…ねぇアル、後日改めてお礼がしたいんだけどいいかな?」
「それは良いけど、俺は別に大したことしてないぞ?」
「いや、ここで動けないままだったら、また捕まっていたかもしれない。妖精は高く売れるからね…」
ティナは少し悲しそうな顔をする。
「そうか…」
俺もまた、気分が沈んでしまう。
彼らの仲間の中には人間に攫われて帰ってこなかった者たちもいるのだろう。
「お礼は…そうだな、また明日ここに来てくれるかい?妖精の国に案内するよ。」
「え!人間を国に入れるのです!?」
「フィオナ、この人は僕たちの恩人だ。姫様も許してくれるさ、それに前例が無いわけじゃない」
なんだか話が大きくなって来たな。まぁいいか、妖精の国も見てみたいしな。
「じゃあ明日また、ここに来ればいいんだな?」
「うん、よろしくね」「ちゃんと来るのです!」
そう言って俺たちは別れた。
その日はもう暗くなり始めていたので、まっすぐ家に帰ることにした。
家に帰ると、母が夕飯の用意をしていた。
「あら、おかえりなさいアル。遅かったのね」
「うん!ウサギを追っかけてたら夢中になっちゃって」
我ながら安い嘘だ。
妖精のことは両親には言わない方がいいな。止められるかもしれないし、妖精たちにとってもそれがいいだろう。
「あれ?そういえば父さんは?」
「お父さんは狩に行ってるわ。もうすぐ帰って来ると思うけど…」
そう話していると、ちょうど帰ってきたようだ。
「…ただいま」
「あらお父さん、おかえりなさい」「わぁ!今日もすごいね!」
父さんは猪のような生き物を担いでいた、大きいな。
大物を捕らえた時は、父さんはいつも切り分けて他の村民に配っている。代わりに野菜や果物など、うちでは手に入れにくい物を持ってきてくれるので、持ちつ持たれつなのだ。
父さんがイノシシ(?)を捌いている。俺は結構グロいのには強い方なので平気だ。
しかし、この世界の人は内臓を食べると言う文化は無いのだろうか?
新鮮なレバー以上に美味いものなど無いというのに。
いや、あくまで個人的な意見だが。今度こっそり食べてみるとするか。
父さんがイノシシを捌き終わり、料理が食卓に揃う。
今日のメニューは、野菜スープに黒パン。そして焼いたイノシシ肉だ。
「アル、美味しい?」
「うん、美味しいよ母さん」
母の料理は美味しい。美味しいのだが、調理法が荒々しいいうか、野性味に溢れている。
肉などは基本的に塩を振って焼くだけだ。
いわゆる男飯というやつ。
父は気に入っているようだが、俺は少し一辺倒に感じてしまう。今度なにか自分で作ってみるかな。
夕飯を終えて、母さんとお風呂に入る。
…もう一度言おう。「母さんと」お風呂に入る。
あぁ、世界はなんて素晴らしいんだ。
明日は約束があるので早めに寝るとしよう。
…と、その前に、日課である剣の素振りと魔法の練習を魔力ギリギリまでする。
最近は水魔法も上達してきて、バランスボールくらいの大きさの水を3つくらいは出せるようになっていた。
「しかし、なかなか(中)にはならないなぁ」
剣を振りながら頭の上にふわふわと水を漂わせ、そう呟く。
水魔法の熟練度があがると、派生して氷魔法が使えるようになるらしい。早く習得したいものだ。
そんなことを考えていると、魔力が底をつきそうになったので今日はもう寝ることにした。
明日が楽しみだ。
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