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人生は、異世界転生までの暇つぶしである。  作者: ぱいん兵
第1章 ー幼少期ー
6/16

外の世界は、平穏である。



4年の月日が流れ、俺は順調に美少年に成長していた。


オレンジがかった輝くような茶髪に、スッと通った鼻筋、大きくて少し垂れた亜麻色の瞳。



完璧だ。完全に勝ち組だ。




そして




「「アル!誕生日おめでとう!」」





今日は俺の5回目の誕生日である。




母に魔法を使っていたのがバレた日、リンドロート家はちょっとした騒ぎになったが、結局母の見間違えだったという結論に至った




それほど、赤ん坊が魔法を使うと言うのはあり得ないことだったらしい。




そもそも魔法というのは、みんながみんな使えるわけではない。



母があまりにも当然のように使うので、大したことはないと思っていたが。



然るべき場所で、然るべき教育を受け、訓練を重ねてようやく使えるようになるそうだ。




その中でも、魔法使いと呼ばれるレベルに達するのは200人に1人だとか。




ちなみに、魔法を扱えるようになる年齢は15歳前後だと言われている。







「父さん、母さんありがとう!」




食べきれないほどのご馳走が並ぶテーブルを囲み、家族みんなで俺の誕生日を祝う。




しばらくして、父がおもむろに長細い包みを取り出した。




「アルフレッド、お前も5歳になった。そろそろ持っていてもいいだろう」




そう言って父が俺に包みを渡す。



開けてみると、そこにはシンプルな皮の鞘に収まった剣があった。



父のものと比べるとかなり短めだが、鞘から覗くその美しい刀身は、確かな切れ味を感じさせるものだった。




「ありがとう!父さん!大事にするよ」




俺は笑顔でそう言う。



5歳の子に真剣など早いと思うかもしれないが、この世界では5歳の誕生日に剣をプレゼントすると言うのは、騎士の家のしきたりなのだそうだ。




4歳になる少し前から、木剣でだが父から剣術の修行を受けていた俺は、父に少しでも認めてもらえたような気がして嬉しかった。




俺の剣の腕前はと言うと、まぁそこそこである。



元の世界でもあまり運動は得意ではなかったし、ステータスも魔術師寄りだ。



当たり前のことだが、父には全く歯が立たない。




ちなみに、5歳になった俺の今のステータスはこうだ。





>アルフレッド・リンドロート


レベル:1


体力:10→25


魔力:17→40


攻撃:10→27


防御:9→23


敏捷:18→35


スキル:【クラフトルーム】


魔法:水魔法(下)火魔法(下)<





やはり、何度も気絶しながら魔法を使い続けただけあって、魔力の伸びは著しい。


毎日のトレーニングの成果が出ているのか、その他のステータスもなかなか良い感じだ。




一般成人のステータスの平均は大体50くらいだと言われているのを考えると、5歳にしては相当高い方だろう。




「ねぇ母さん!外に行ってもいい?」




以前から、5歳になったら1人での外出を許してくれるという約束を取り付けていたのだ。



外出といっても村の外には出られないが。




「ふふふ、いきなり?うーん、あなたどうしましょう」




「まぁいいんじゃないか、行かせてやれば」




「アル、良かったわねぇ。くれぐれも、森に入ってはいけませんよ?」




「わかってる!じゃあ父さん、母さん!行ってくるね!」



「行ってらっしゃ〜い」




母が笑顔で送り出してくれる




「アル、せっかくの剣だ、持って行きなさい」




そう言って父は俺の腰に剣を差した。




「わかった!ありがとう父さん」




父は笑顔で頷く。




そして、俺は家を飛び出した。



試したいことは山ほどあるのだ。ずっとこの日を待っていた




家を出ると、まず目の前に広がるのは麦畑だ。



黄金に輝く麦が、まるで生きているかのように波打っている。




「そういえばもうすぐ収穫だったな」




この世界の主食はパンである。日本人としては米が恋しくなるが、少なくとも我が家の食卓には出たことがない。



探せばあるのかな。




少し歩くと、民家がちらほらと見える。


俺が生まれたオリバ村は、人口300人にも満たない小さな村だ。




村民同士は仲が良く、基本的には物々交換で生活必需品などは手に入れる。



例外としては、2ヶ月に一度だけ商人がやってきて、特産品や工芸品を商人に売ることで貨幣を得ることができる。


そして得たお金で、嗜好品や本など村では手に入らないものを購入したりする。





麦畑を抜けてしばらくすると、周りと比べて一際大きな家が目に入る。





領主の家だ。



教会で、魔術(特上)を授かった子と、その両親、あと使用人が何人か住んでいる。



この領主だが、教会で会って以降、一度だけ顔を合わせたことがある、偉そうに村民を見下すような態度。



やはり好きにはなれなかった。




しばらく歩いていると、少し開けた広場があり、その向こうには丘がある。




俺はさらにその丘を越え、人目につかない場所まで来た。




「よし、この辺りでいいかな」




今日はスキルを使って色々試していこうと思っている。



とりあえずその辺の岩を収納してみるかな。



おぉ、なかなかの大きさの岩も余裕で入るな。これはいい。



その他に何か使えそうなものがないかその辺を散策していると、茂みの奥がぼんやりと光ったような気がした。




「なんだ?」




茂みに近づき、草をかき分けてよく見てみる。すると




「キャッ!」






小さな悲鳴を上げたそれは、薄桃色の肌に、エメラルドグリーンの羽を生やした、可愛らしい妖精だった。




どうやら羽を怪我しているようだ。その他にも細かい傷が目立つ。




ボロボロだな。




「怪我、してるの?」




恐る恐る声をかけてみる。




「近寄らないで欲しいです。人間はキライなのです。」




と、キッパリと拒否されてしまった。少しイラっとしたが、やはり心配だ。




「まぁそう言わずにさ、大丈夫?動けるかい?」




「うるさいです、人間。どっか行くのです。」




なんだこいつ。人が心配してやってるのに。




しかし、どうしたものか。流石にここに放置するのは気が引けるしなぁ。




そうやって色々と考えていると、奥からもう1つの光が近づいて来る。



そこにいたのは、エメラルドグリーンの身体に、薄桃色の羽を生やしている、さっきのとは対照的な外見をした妖精だ。





「フィオナ、大丈夫?」




どうやら怪我をしている妖精はフィオナと言うらしい。




「ティナさん!来ちゃダメです!」




フィオナは俺の方を睨みながらそう言う。




「大丈夫だよフィオナ。この子はまだ子供だ、それに僕たちを攫うような人間とは違うよ。よく見てごらん、優しい目をしている。」



後から来た妖精は、俺の方を見ながらそう言う。




なかなか良く分かってるじゃないか。




「でも…」



フィオナの方は納得いかない様子だ。生意気な。




しかし、妖精を攫う人間がいるのか、全くどの世界にもロクでもない奴はいるもんだな。




「驚かせてごめんなさい。君たちに危害を加えるつもりはないから安心して。もし良かったら話を聞かせてくれないかな?」




俺は出来るだけ落ち着いた声でそう言った。すると、ティナと呼ばれた妖精が、ゆっくりと口を開く。










「僕たちは、逃げて来たんだ。」














新キャラを登場させるのは楽しいです。


ブクマ、評価、是非お願いします。

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