新武器は、オーバーキルである。
「悪い悪い、あの時はホント眠かったからさ」
「ひどいのじゃ!あんまりなのじゃ!お主が話しかけるなと申すから黙って待っておったのに!女にうつつを抜かしおって!」
「全部見てたのか!?」
「心の中まで丸見えじゃ阿呆が!」
「阿呆とは何事だ。のじゃロリめ」
「のじゃロリってなんじゃ!妾は誇り高き雪女じゃぞ!」
「なんだ、雪女だったのか。ずいぶんと俺のイメージとは違うな」
なんというかもっとスレンダーで大人っぽくて…
「ほれ、お主が思っとる雪女とはこうゆうのじゃろ?」
「あー!そうそう、正にそんな感じ。っていつの間に!?」
「何を言っとる。妾はもう実体は持っとらん、この程度なら朝飯前じゃ。まぁこの姿が一番落ち着くがな」
そういって、のじゃロリは元の姿に戻る。
「他には何ができるんだ?」
「そうじゃな、氷の妖術なら大得意じゃ。あとは他の者に憑依して操ることもできるぞ」
「それは物騒だな、刀に戻すか。」
「もうあの中は窮屈で嫌なのじゃ!ここの方がまだマシじゃ!」
「うるさい奴だなぁ。お前は今まで散々人間に迷惑かけてきたんだろ?」
「なに?妾は人間に危害を与える様な輩とは違うぞ?」
「でも人間を凍らせたとか何とか…」
「いつ妾が人間を凍らせたと言った!妾が凍らせたのは無差別に悪行を働く不届き者だけじゃ!」
「ほう、じゃあ何で封印なんかされたんだ?」
「やはり人間には妖の類はよく思われんでな。こちらが歩み寄っても恐れられてしまうんじゃよ。」
「なるほど」
「妾の一族は人間に近づかん事を掟としておったが、妾はどうしても逃げ隠れながら生活するのに耐えららんかった。」
雪女は哀しそうな顔をする。
「それで人里に降りて、人間と共に生活する道を選んだんじゃ。初めは上手くいったったんじゃが、あるキッカケでバレてしもうてな」
「そのまま封印された…と」
「そうゆう事じゃ、妾が入っておったあの刀は今まで色んな人間が手にして来た。ロクな使い方をする者がおらんかったが、お主は少しばかりマシな様じゃ」
「妖刀なんて物騒なもん使おうなんて思わねえよ、災いがどうとか書いてあったしな」
「そういえばさっきから気になっておったのじゃが、お主のその目は魔眼か?」
「あぁ、そんなもんだ。少し前に森の妖精姫から貰った」
「ほう、珍しいのぉ。あのヴィクトリアが人間にそんな物を与えるなど…」
「ヴィクトリアの事を知ってるのか?」
「ああ、知っているとも。人里を避けて暮らすもの同士、色々と助け合うことも多くてなぁ。」
ヴィクトリア、そんな昔から姫様だったのか…いったい何歳なんだろう。
「そうか、悪いやつじゃないって事はわかった。ところでお前、名前は?」
「人に名を尋ねる時は自分から名乗るものじゃ」
ちっ、めんどくさいやつだな。
「アルフレッド・リンドロートだ。よろしくな」
「妾は雪花じゃ。よろしく頼むぞ我が主」
セッカ…雪花か。雪女らしい名前だ。
「ん?主?」
「妖が人間に名を教えるというのは、主従関係を結ぶという事じゃ。お主もそのつもりで妾の名を聞いたのだろう?」
「いや待て、そんなこと知らなかったし、そもそもお前が俺を主人として認める理由がないだろう?」
「何を言うか、もうお主の人となりは分かっておる。なにせ心が読めるのでな、そう時間はかからんよ。実力も申し分ない様じゃ。」
「……わかるのか?」
「これだけ生きておったら強者の雰囲気というのは何となく感じるものじゃ。お主は少し異質じゃがな」
「なるほど」
「これからよろしく頼むぞ、アルフレッド様よ」
「そういうことなら仕方ないな、よろしくな雪花。俺のことはアルでいいぞ。」
そう言って俺たちは主従関係を結び、その日は眠りに落ちた。
ーーー・ーーー・ーーー・ーーー・ーーー
「あるじ!早く起きろ!アル様やー!」
「あぁ…もううるさいなぁ雪花」
「朝が来たのじゃ!はやく!早くアレを出してくれ!」
「あぁ……わかったから静かにしてくれ…」
雪花は、あれから俺のクラフトルームの中にずっと住んでいる。中にいるうちにだんだん居心地が良くなってきたらしい。
そして、俺がいま彼女に何を要求されているかと言うと…
「ほら、これだろ」
「おぉう!これじゃこれじゃ!妾はもうこれ無しでは生きていけないのじゃ!」
冷たくて甘い、子供が大好きなアレ。そう、アイスクリームだ。
砂糖は高級品だが、俺特製のスライム液は想像以上に高く売れたらしく、フランクは上機嫌だった。
なので、次の取引を行った際にオマケで砂糖を付けてもらったのだ。
生乳をスキルで分解して生クリームを作り、これまたスキルで卵と砂糖を混ぜて、最後に氷魔法で冷やせば、シンプルなアイスクリームの出来上がりだ。
その一部始終を見ていた雪花が、アイスクリームに興味を持ってしまい。一口食べさせたところ見事にハマったのだ
ひっきりなしに要求してくるので、1日1回と決めて与えている。それからと言うもの、毎朝こんな感じに起こしてくるので迷惑極まりない。
クラフトルームの中では、雪花が幸せそうに氷魔法でアイスクリームを作っている。
最近は作り方も覚えたようで、材料を渡すだけで済んでるからまだ楽だな。
「ふわぁあ…起きるかぁ」
「主様!今日はブルーベリーを入れるのじゃ!」
「おぉ、そうかそうか、それは美味しそうだな」
俺はブルーベリーを出してやる。アレンジまで覚えやがって。
「なぁ雪花」
「ん?なんじゃ主様よ」
「クラフトルームの外に出ることってできるのか?」
「そりゃあ出してもらえるのなら出来るが、なにせ身体を失っておるのでな。魔法は使えるが長くは保たんし、物に触ったりとかは出来ん」
雪花は今の世界のことを学び始めている。魔法やスキルなどと言った物も俺が教え込んだ。
「そうか」
あの刀の中だったら大丈夫なんだよなぁ
「その刀ってまだ使えるのか?」
「うむ、名刀には違いないぞ。妾が入っていた時と比べると月とスッポンじゃがな。」
「俺が使う時だけ入ることって出来そうか?」
「わからんな、やったことがない。それに戻れなくなるかもしれんしな、あまりしたくはないんじゃ」
「戻れなくなることは無いと思うぞ、知ってると思うが、俺のスキルがあれば確実に分離できる」
「そうかそうか!そうじゃったな。なら問題ない」
「よし、じゃあそれを食い終わったら試してみよう。」
ーーー・ーーー・ーーー・ーーー・ーーー
俺は例の刀、〔氷月〕を持って外に来ていた。
まだ雪花は入っていない。とりあえずはこれで試し斬りだ。
木の人形を用意する。作りは適当だが、大きさは申し分ない。名前はジョニーだ。
《スパッ》《スパッ》
刀を切り返しながら往復させると、綺麗に三分割された人形が地面に崩れ落ちる。
「おぉ、これでも充分だな。」
『そりゃそうじゃろう、伝説の名工が作った刀じゃ。そもそも半端な刀では妾を封じ込めることなど出来なかろう』
「そうゆうもんか。さぁ、次だ、これに入ってくれ」
『ぐぬ…やはり少しイヤ…「アイス抜きにするぞ」…やるのじゃ』
俺は雪花を出してやる。一瞬うっすらと具現化したように見えたが、すぐに刀に吸い込まれていった。
〈入れたのじゃ!さぁ主!早く済ませてくれ!〉
「よし。」
俺は第2のジョニーを取り出し、刀を振った。
《スッ》
「ん?なんだ今のは」
刀は通ったが、木の人形は崩れない。
「おかしいな……」
触れてみると、刀が通った場所に少しだけ段差が生まれた。
「これって…」
そう、断面が滑らかすぎて貼り付いていたのだ。どう考えても普通じゃない。
〈次は魔力を流しながら切ってみよ〉
「え?あぁ…わかった」
よく分からないがやってみるか。
俺は第3のジョニーを(以下略
《スッ》 《ピキピキ》《パァッーン》
おいおい
切れた後に凍りついて砕け散ったぞ。オーバーキルにも程があるだろう。ごめんよジョニー…。
「これは……」
「お主の魔力が刀に流れ、妾を媒介として具現化したんじゃ。妾は氷の妖じゃからのぉ」
チョット何いってるかわかんないです。
「なるほど、威力がありすぎることは分かった。魔力を流して使うのは本当に危ない時だけだな。」
これは強すぎるな。当分は雪花なしでいいだろう。
〈やったのじゃ!〉
「俺の心を読むなと言っているだろうが」
〈仕方ないじゃろうが!〉
生意気な下僕め。
ーーー・ーーー・ーーー・ーーー・ーーー
>アルフレッド・リンドロート
レベル:32→34
体力:350→372
魔力:583→607
攻撃:392→429
防御:378→402
敏捷:557→589
スキル:【クラフトルーム】【翡翠眼】【吸収】【発熱】【発光】【物理攻撃抵抗】【魔法攻撃抵抗】【ドレイン】【幸運】
[【ブラックアウト】32/1500 【激運】1/10【物理攻撃反射】7/2000【魔法攻撃反射】6/2000【HP自動回復】3/700【探知】11/500【自爆】5/100]
魔法:火魔法(中↑)水魔法(特上↑)風魔法(上↑)土魔法(上↑)雷魔法(上)<
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