のじゃロリは、偉そうである。
「おかえりなさーい」
「ただいまー!」
「商人さんはどうだった?」
「あー、あんまり良い物はなかったよ」
「そう、それは残念だったわねえ。」
「でもポーションとかはたくさん売れた」
《ジャラジャラジャラジャラ…》
母さんが目をひん剥いている。まだ白金貨も入ってるんだけど
「ほら、母さん。コレで新しい服でも…」
そう言って母さんに金貨を10枚渡そうとしたが、突っぱねられてしまった。
「子供が変な気回さないの、それはアルが稼いだお金なんだから。使うべき時まで取っておきなさい。」
「うん。分かった…」
そう言って俺は自室に戻った。
ーーー・ーーー・ーーー・ーーー・ーーー
「ふぅ…しかし大儲けだったな。」
原価がかかっていないから、ほとんど利益率100%だ。
日本円にして143万円。子供の小遣いには過ぎた金額だな。
だが、今日の1番の収穫は恐らくコレだ。
俺はクラフトルームに例の錆びついた剣を取り出した。
ぱっと見ると剣がどうかすら怪しいが、俺の翡翠眼にはこう映っていた。
〔妖刀・氷月〕太古の時代に極東の国で作られた刀。その刀身に妖を宿し、使用者には災いが降りかかると言う伝説が残っている。妖刀だと知りながらも、その圧倒的な斬れ味に魅入られ命を落とす者も少なくはなかった。<
とんでもないお宝だろう?あんな馬車の隅に傘みたいに立てかけられていた時は目を疑った。
恐ろしい文言だが、使わなければどうという事はない。
そして、何と言っても刀というのが良い。日本的な国があるのかもしれないな、是非いつか訪れてみたいものだ。
「しかし、酷いサビだな。」
俺は丁寧に錆を分解していく。なかなか大変だな。
しばらくすると錆の分解が終わり、光沢を放つ美しい刀身が露わになった。形状は完全に日本刀である。普通のものよりも少し白っぽいかもしれない
鞘とかの細かい汚れを落として…っとこれで完全復活だな。
これが氷月の本来の姿か、しかしよく切れそうだな…………いやいや、ダメだダメだ。
危ない、魅入られるところだったわ。
俺は刀を鞘にしまう。鞘は漆塗りのようになっていて、その上から白い布が巻かれている。カッコいい。
しかし、刀身に妖を宿すって書いてあったな。
……いやまさか、そんなはずない
でもここは異世界だぞ?…ちょっと試してみるか。
魔物からスキルポイントを取り出すことが出来るなら…
「分解」
俺は、錆ではなく刀そのものを分解する。刀身と何かを無理矢理乖離させるような感覚だ。
クラフトルームの中で、氷月が光を放つ。
光が刀に収束していくように収まる。しかしそこには何も変わらない刀身があるだけだった。
「なんだ、何もないか。まぁそうだよな。」
そうこうしていると夕飯が出来たようなので、食卓に向かい、いつものように魔法の練習をしてから眠りについた。
ーーー・ーーー・ーーー・ーーー・ーーー
「おい……おいお前さん…早く起きんか…」
声が聞こえる。
「……ん?誰だ、こんな時間に…」
俺は辺りを見回すが、部屋には誰もいなかった。
「寝るな!ここじゃ!ここじゃ!」
「なんだこの声は、変な夢だな。」
「夢じゃないわ、はよこの変な所から出さんか!」
「変な所?…あっ。」
俺は慌ててクラフトルームを開く。すると中には
濡れているような美しく黒い髪を腰辺りまで伸ばし、白い着物に身を包んだ、深紅の瞳の少女がこちらを見ていた。
「お主、どうやって妾と氷月を引き離した?」
「あ、あぁ、それは俺のスキルを使ったんだ」
なんだこいつ、あの刀の中の妖か、しかしなぜすぐに出てこなかったんだ?
「寝ておったのじゃ、起きたら出られるようになっていて驚いたぞ。」
「心読むのやめてくない?」
「しょうがないじゃろう、勝手に聞こえてくるんじゃよ。」
「しかし、何で刀の中になんか居たんだ?」
「封印されたんじゃよ、昔はやんちゃしとったからな。奴らを何人も凍りつかせてやったわい。くっくっく、妾も若かったわ。」
「そうか、おやすみ」
しかし、とんでもない奴を出してしまったかもしれないな。
「おい!寝るな!ここから出さんか!」
「なんで?」
「なぜって、こんな気持ちの悪いところにいつまでもおれるか!」
「気持ちの悪いとは失礼な、それは俺の大事なクラフトルームだ」
「くらふとるーむ?なんじゃそれは、異能か?」
「異能って言うか、スキルだな」
「すきる?さっきも言っておったようだが、よくわからん。ちゃんと説明せい。」
「まぁ異能でも意味は同じだろうな。しかしお前、ずいぶん偉そうだけど自分の状況わかってんの?」
「どう言う意味じゃ?」
「そこは俺のスキルの中だ。つまり、お前をどうするも俺次第ってこと。」
おれは石ブロックを1つ取り出し、バラバラに切り刻んでから溶岩のように溶かして元に戻す。
「な?分かるだろ?」
「ゔっ…人間風情が調子に乗りおって…」
「そういう訳だ、俺は眠いから寝る。話しかけるなよ」
「ぐぬぬ…」
ーーー・ーーー・ーーー・ーーー・ーーー
次の日の朝。
「ふぁぁ…よく寝たな。」
すると、扉がノックされる。
「アルフレッド、早く準備をして出てこい。始めるぞ」
「あぁ!今いく!」
俺は顔を洗い、服を着替え。父さんに貰った剣を持って外に出た。
「よし、行くか。」
日課のトレーニングである。以前と同じメニューなら、もう楽々とこなせるようになっていた。
「なんだアル、ずいぶんと余裕そうじゃないか」
「え?あぁもう2年もやってるしね」
「そうか」
そんな会話をしながら父さんと組手をしていると、母の声が聞こえた。
「お父さーん、アルー!ご飯できてるわよー!」
「わかったー!」
「よし、じゃあそろそろ切り上げるか。」
鞘に剣をしまい、家に向かう。最近は技術も付いてきていて、組手に真剣を使っていた。
俺のステータスはもう充分高いが、それに頼りきりになるのは危険だ。なので、父さんとの組手の時はステータスを抑えて技術を磨くことに努めている。
ステータス全開でやっても父さんに勝てる気はしないんだけどな…
ーーー・ーーー・ーーー・ーーー・ーーー
「「「ごちそうさまでした」」」
「アル、今日はどうする予定?」
「今日はハンナと遊ぼうかなって、昼ごはんも食べてくるよ」
「そう、仲が良いのね!」
「あぁ、まぁね」
「森には入るなよ。」
「うん、分かってるよ父さん」
ホントはちょくちょく入ってるけど……
「じゃあ行ってきます!」
「行ってらっしゃーい」
家を出た俺は、中央広場に向かった。
「ごめんごめん、待たせちゃった?」
「ううん、私も今来たところだよ」
「そっか、ならよかった」
「じゃあ行こっか。ママも待ってると思うし」
今日はハンナの家に行く予定だ。何か手土産があったほうがいいかな…あぁ、スライム液でいっか、アレなら間違いないだろう。
しかし、いくら子供とはいえ女の子の家ってのは緊張するものだな。
ーーー・ーーー・ーーー・ーーー・ーーー
しばらく歩くと、ずいぶんと小さく、造りの雑な家が何軒か並んでいた。
獣人が住む区域だ。
「ここだよ!上がって上がって!」
「…おじゃまします」
この地域の領主は、獣人差別がとにかく酷い。わざとこの様な家を充てがわれているのだろうな。全く嫌になる。
「あ、いらっしゃい。あなたがアル?ハンナからいつも聞いてるわよ!ハンナったらいつもアルがアルがってうるさいんだから」
「もう!ママ!そんなこと言わなくて良いの!
「あら、いいじゃないの。本当のことでしょ?」
「初めまして、アルフレッド・リンドロートです。娘さんにはいつもお世話になってます。これ、つまらないものですが…」
「あははっ。そんなかしこまらなくて良いのよ!自分の家だと思ってくつろぎな……って、これ、スライム液じゃないか!こんな高級な物良いのかい?高かっただろう?」
「いえ、自作したものなのでお金はかかってないです。効能は保証しますよ?」
「そうかいそうかい。ハンナから聞いていた通り、アルくんは凄い子なんだね。ありがたく頂いておくよ。あ!お茶でも出すわね」
ハンナのお母さんは上機嫌で部屋を出て行った。
「ごめんねアル。うるさい人で…」
「いや、賑やかでいいじゃないか。それに良い人そうだ、素敵なお母さんだね」
「えっ、そ、そうかな…」
ハンナはそう良いながら少し顔を赤くした。口ではああ言っても、自分の母親が褒められるのは嬉しいのだろう。可愛いやつめ
その後はハンナとハンナママと3人で昼食を食べてから色々な話をして、ハンナの家を出た。
「今日はありがとうございました」
「アタシも楽しかったよ、またいつでもおいで。」
「アル、また来てね!」
ハンナは今日、俺が作ってあげた服を着てくれている。本当に似合うな。
金色の髪に太陽の様な可愛らしい服がよく映える。また、夕焼けに照らされた髪がキラキラと輝いて…うん、天使だ。
「うん、ありがとう。じゃあまたね」
俺は家に向かって歩き出した。
帰ると、母さんが夕飯の準備をしていた。俺は庭の薬草たちに水をやる。
最近は薬草の栽培をしているのだ。生えていたところの土ごと持ってきて、動物や魔物の骨などを肥料として与えている。
最近は質のいい薬草がたくさん育つ様になったな。
「アルー!ご飯よー!」
「はーい!」
家に戻り、夕飯を食べる。
風呂に入り、歯を磨いて、魔法の練習をしながら、父さんが買ってきてくれた魔道書を読む。
そしてベッドに入ってランプを消した。
………………
………………あれ?何か忘れているような…なんだっけ?
まぁいっか。寝よ……
「おい、お主!ふざけるでない!いつまで妾を放置するつもりじゃ!」
あ、完全に忘れてた。
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