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人生は、異世界転生までの暇つぶしである。  作者: ぱいん兵
第1章 ー幼少期ー
10/16

初めての友人は、もふもふである。

初のヒロイン登場


「…はぁ…はぁっ…」




「どうしたアル、もう終わりか?」




東の空が明るみ始める頃。俺と父さんは庭に出ていた。




剣の特訓だ。




元騎士である父さんの訓練は厳しいが、1日1日の訓練が身に付いていくのが分かる。子供だから吸収が早いのかもな。




「…まだやれる」




「そうか、なら早く立て」




父さんは普段は優しいが、剣術の事となると人が変わる。朝の特訓のメニューは、ランニング、素振り、型、そして組手といったシンプルなものだが、1つずつがハードだ。




5歳にしては運動能力が高いと自負しているが、メニューをこなすだけで立ち上がれないほどに疲れてしまう。


それを汗ひとつ流さずにこなす父さんは、間違いなく化け物だ。





今は組手をしているところだが、父さんは両手用の剣を片手で扱っている。左腕が自由に動かないのだ。騎士時代の古傷だと言っていた。




そんな父さんに俺は、攻撃を一撃たりとも当てたことがない。




「うぉりゃああ!」


《ガン! ドサッ》




「そんな単調な攻撃が当たるわけないだろう。俺はそんな教え方はしてないぞ」




「くっ…もう一回!」




「いや、今日はここまでにしておこう。そろそろ母さんが朝飯を作っている頃だ。」




父さんはそう言って踵を返す。

俺は地面に座り込んで大きなため息をつく




〈まだまだだなぁ〉




最初に比べるとかなり動けるようになっているのは間違いない。まだ身体が小さいので、歯が立たないのは当たり前だが、やはり悔しいものは悔しい。





「アル、お疲れさま」




「うん、ありがとう母さん。おはよう」




朝ご飯は黒パンとスープ。



うん、いつも通りだ。しかしこの世界には出汁という概念がないのか?マズくはないんだが、味気ないな。味噌汁が飲みたい…




「……ん、うまいな。」




父さんは相変わらずお気に召しているようだ。

この世界では本当に美味しい方なのかもしれないが、外で食べたことがないから分からない。








今日もまた、いつもの場所で魔法の練習と実験をするつもりだ。




そういえば、最近になってようやく雷魔法を扱えるようになった。威力はスタンガン程度だが。どうやら魔力だ電気の通り道を作ってやる必要があったようだ。




あとは何と言っても氷魔法だ。事あるごとに水を作っていたからな、上達も早いだろう。最近暑くなってきたし涼しくて丁度いいな。



魔力もかなり上がっている。



>アルフレッド・リンドロート


レベル:1


体力:25→31


魔力:40→55


攻撃:27→33


防御:23→28


敏捷:35→44


スキル:【クラフトルーム】【翡翠眼】


魔法:火魔法(下)水魔法(中)風魔法(下)土魔法(下)雷魔法(下)<




【翡翠眼】のお陰で魔力の扱いがしやすくなったしな。魔法を習得するのもだいぶ楽になった。




「じゃあ、外に行ってくる!」




「行ってらっしゃい、気をつけてね〜」



《バタン…》


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねぇあなた、あの子大丈夫かしら…?」




「どういう事だ」




「友達もいないみたいだし、家でも1人でどこかを見つめて固まってることが多いじゃない?」




「そうだな」




「うーん、あの歳にしてはしっかりしてるとは思うんだけど。なんだか少し心配だわ…」




「大丈夫だ、アルフレッドには根性がある」




「根性ってあなたねぇ……。あの子、何か隠してるような気がするのよね…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「さて、今日は何をしようか…」




俺はいつもの丘に向かって歩いていた。




「村から出て行けよ半端者っ!」「獣臭えんだよ!」「いつも同じ服ばっか着やがって」




なんだか騒がしいな。




声がする方に目を向けてみると、小さな女の子が男3人組に囲まれていた。




なんだ、イジメか。異世界でもあるんだな



はぁ…。あっちで自分が受けていただけに、こういうのは気分が悪いな。




「おい、その辺にしとけよ」




「あ?誰だお前…」「ロベルトさん、こいつ、リンドロートの…」




「あー、はっはははは!あの変人家族か!親が変人だと子供も頭がおかしいようだな!帰れ帰れ、お前のような庶民と話すだけ時間の無駄だ」




「変人だと?」




こいつ、やけに高そうな服を着ているな。下品で派手な装飾が付いている。そして例のごとくマッシュルームカットだ。正直ダサいぞ




「俺の父様がそう言ってたんだ、お前の所の親父は薄汚い獣人の肩を持つ変人だってさ!」




あぁ、そういえば少し前にウチにお礼しに来た獣人の家族がいたっけな




「それがどうかしたのか?」




「下等な獣人の味方をするなど、頭がおかしいとしか思えないだろう。なぁ?お前ら」


「全くだ」「そうですね」




この世界には、いわゆる亜人という者達がいる。大きく分類すると、獣人、ドワーフ、エルフ、そして魔族。ここに人間を加えた5つの種族が存在している。




ドワーフやエルフ、魔族は人間とも友好な関係を築いているが、獣人はどうも一部の人間から差別対象として見られているらしい。




特に、この村の領主は差別意識が酷い。




「小さな女の子を寄ってたかって虐めるのか。さすが上等な人間様は違うな」




「黙れ!こいつは獣人の、しかもハーフだぞ?」




「だから何だ」




「ハーフなど半端者で気持ちが悪い!コイツに存在価値などない」




「はぁ、お前がどう思ってるかは知らんがな、放っておく訳にはいかない。今なら見逃してやるから消えろ、二度とその子に近づくな」




全く、幼稚な考えを持った大人がいるからこういうガキが現れるんだよ。あ、俺もまだガキだった。




「庶民のくせに偉そうに、俺を誰だと思っている!」




「しらん」




「俺の名は、ロベルト・オーグレーン。領主の息子だ」




「そうか、よろしくなロベルト。さぁ、早くどっかいけ」



本当は翡翠眼で見ていたので知っていた。あの嫌味なオヤジの1人息子か。


順調に悪い影響を受けているようだな。




「君!危ないから逃げて!私のことはもういいから!」




あっ、近くで見ると可愛いなこの子。守ってあげたい。何としても。そう、例え命に代えても。




「心配してくれるのか?俺なら大丈夫だよ。ところで君、犬系?猫系?おぉ、しっぽふわふわだなぁ!触ってもいい?」




「え、ちょっ、なにっ!?ダメだよそんなの!?」




嫌がられてしまった、むむむ。触りたいな、まぁその辺は追い追い考えていこう。恋は駆け引きなのだ。




「舐めやがって!おいビート、ダニエル!」




「わかってますよ、ロベルトさん!」


「えぇえ…リンドロート家はマズイよ…ビートだってあの噂は聞いているだろ?」




噂?何のことだ?




「ダニエル、俺の言うことが聞けないのか」



「うぅ…わかりましたよぉ〜」




そう言うと、取り巻きの2人が出てきた。そして




「おりゃああーっ!…《ドサッ》ぐっ」



3歩目でコケた。



「おいダニーっ…早く立てよっ…」



「うぅっ…うう…」




おれは何を見せられているんだ。



そうこうしている間に、翡翠眼でこの3人組を見ておいた。





>ロベルト・オーグレーン


レベル:3


体力:15


魔力:40


攻撃:19


防御:15


敏捷:20


スキル:【魔術(特上)】


魔法:火魔法(下)風魔法(下)




>ビート


レベル:1


体力:17


魔力:10


攻撃:20


防御:19


敏捷:10


スキル:【剣術(上)】


魔法:ー




>ダニエル


レベル:1


体力:9


魔力:26


攻撃:15


防御:13


敏捷:10


スキル:【製薬(上)】


魔法:ー <




どうでもいいが、農民などの平民には基本的に苗字はないらしい。俺の父さんは元騎士だと言っていたからな。それで苗字持ちなんだろう。



しかしまぁ、なかなか優秀なスキルが揃っているな。その割にはステータスが低いが。まぁこの歳にしては優秀な方なんだろう。




「なにをボケっとしてやがる!」



《ヒュン》




余裕で躱せるが、さすが【剣術(上)】いい太刀筋だ。でも父さんの方が100倍速い。てかこいつ真剣使ってんじゃねえか。危ないだろ、殺す気か




「ちっ、ちょこまかと…!」《ブンッ》




「おいおい、そんなに振り回してたら…」



剣を避ける




「…危ないだろ?」




「なっ…!」



俺はビートと呼ばれた少年の後ろに回り込み、尻を蹴り飛ばす。




彼は前のめりに畑に倒れ込み、泥まみれになる。

そういえば、昨日は雨だったっけ。災難だったな、少年よ。




「あわ、あわわ」




ダニエルとか言うやつはずっとアワアワ言ってるぞ、何しに来たんだこいつ。




「ちっ、使えない奴らだな。まぁいい…おい!そこの庶民!」






《ボォウ…》



ん? なんか俺の近くの草が燃えてる…


ああ、火魔法か、さすがは魔術スキル持ちだな。でも、やたら威力が低い。




「降参すれば半殺しで許してやる。」


ロベルトは手の上に火の玉を漂わせながらそう言う。



じゃあ降参しなかったら殺されちゃうのかボク。コワイナー




「はぁ…あんまり使いたくないんだけどなぁ…」




「おい!何をブツブツ言ってる!次は本当に当てるからな!」




強盗か。




「ああ、当ててみろよ。」




「ど、どうなっても知らないぞ!」




お、本当に撃つのか。予想外だった。




《バシュッ…シュゥゥウ》



「なっ…なんだそれは!」




「見れば分かるだろ、水だよ」




「そういうことを聞いてるんじゃない!何でここに水があるんだ!」




「いや、火を消すためだけど…」




「くそっ!ふざけやがって!これでどうだ!」




彼の撃った大量の火魔法(卓球ボールくらいの火の玉)は、全て俺が作った水の壁によって消火されていく。




「はぁっ…はぁ…」




「どうした?もう打ち止めか?」



どうやら彼は魔力切れのようだ。燃費が悪いな、時代は省エネだぞ。




「じゃあこっちから…」


《パァーンッ》




俺には人間を燃やす趣味はないので、バランスボールサイズの水球をそこそこのスピードでぶつけてやった。




おぉ、伸びてる伸びてる。貧弱なヤツだな




「ほら、連れてけよ」


《…ドサッ》




おれは取り巻き共に、気絶しているロベルトを投げ渡した。




「ひ、ひいぃ!」「く、くそっ!覚えてやがれ!」




ビートよ、その台詞はさすがにベタすぎるぞ。




「ふぅ…行ったか。君、怪我とかしてない?」




「えっ、あっ、はい…」




「そうか、よかった」




「あ、あの!…ありがとう…ございます」




「ん?ああ、俺が勝手にやったことだから気にしないでいいよ」




「いえそんな!何かお礼をさせてください!」




「え、じゃあ尻尾さわらさて」




「そ、それはっ…その…ダメですっ」




「そっかー…」




「その、私たち獣人族の尻尾は、伴侶と決めた人にしか触らせてはいけないんです…それにその、くすぐったいし…」




「なるほどな、じゃあいいや」




「ごめんなさいっ!助けていただいたのに…」




「いいよ気にしないで。あ、お礼ならさ、俺と友達になってくれないかな?まだ友達いないんだ」




「それはもちろん!(私も友達いないですし…)」




「え?なにか言った?」




「いえ、何でもないです…」




とにかく、友達ができた。けど


「えっと、とりあえず、敬語はやめにしようよ。たぶん歳、同じくらいだよね?」




俺は苦笑いしながらそう言った。




「はい!あ。えっと、うん!わかった!」



よしよし。いい笑顔だな、不覚にも少しキュンとしたぞ。失敬な、俺はロリコンじゃない。断じて違う。

精神が肉体に引っ張られてきているのカナー。





「ところで名前は?」




「私はハンナ!君は?」




「ハンナか、いい名前だね。僕はアルフレッド、アルって呼んでくれ」




「アル…アルかぁ…。よろしくね!アル!」




「おう、よろしくな」




「ところでアル、私なんかで良かったの?」




「何が?」




「友達のこと。私、獣人だし、しかもハーフだし…」




「なんだ、そんなことか。さっきも言ったが、差別なんてものは幼稚でくだらないものだ。それに何より、ハンナはこんなに可愛いじゃないか。こっちからお礼を言いたいくらいだよ。」




「えっ!そんな…そうかなぁ…」




真っ赤になってる。いや俺はロリコンじゃないよ。この子を口説くのはもう少し成長してからだ。光◯氏in異世界だ。




にしても、綺麗な髪色(毛色?)だな。

ところどころ汚れてはいるが、金色っぽい黄色かな?そしてピンと立った耳に、フワフワの尻尾。素晴らしいな。ビバ異世界。




「そういえばハンナは、何の獣人なの?」




「あ、私は孤人族と人間のハーフなんだ」



「ほう」




ハーフでこんな感じってことは、純血の獣人は全身が毛むくじゃらなのか?



ちなみにハンナは、耳と尻尾だけが獣だ。


ハンナの両親。グッジョブ。




「ところで、アルはすっごく強いんだね!あの3人ってこの辺の子供の間では有名なんだよ?」




「鍛えてるからな。」




あいつらのあのスキルなら有名で当然だろう。まだ弱すぎるくらいだ。




「あ、でもアルのお父さんってカールさんだもんね!アルも教えてもらってるの?」




「ん?それはそうだけど。父さんを知ってるの?」




「当たり前だよ!剣聖、カール・リンドロート!単独でレッドドラゴンを討伐した英雄。この大陸であの人の名前を知らない人はいないよ?」




なにそれ超憧れるんですけど。しかし父さん半端ねえな。そりゃあ強いわけだ。




「父さんは凄かったんだな」




「凄いなんてもんじゃないよ!私の家族に食糧も分けてくれるし…獣人族のみんなを領主様から守ってくれたりもするし、本当に尊敬されてるんだ。」



「そっか」




父さん、カッコいいじゃないか。




「ところでハンナ、君のスキルって何なんだ?」




「身体強化だよ。早く走れるようになったり、力が強くなったり体が丈夫になるんだ」




「凄いじゃないか、そんなスキルがあるなら何であんな奴らにやられっぱなしだったんだ?」




「ロベルトくんは領主様の所の子だからね、彼に怪我をさせてしまったら、獣人族みんなに迷惑かけちゃうもん…」




「そうゆうことか…」




彼女の目には涙が浮かんでいた。悔しくてたまらないのだろう。獣人族が不当な扱いを受けていることが。




「大丈夫だ、次にまたなにかあったら俺が守ってやる。だから泣くな」



「アル…そんなの悪いよ…」




「なに言ってんだ、友達なら当たり前だろ?」



「アル…ありがとうっ!」



ハンナが俺に勢いよく抱きついてくる




「ちょっ!?」




俺は慌てて引き剥がそうとするが



「うぅ…ありがとう…ありがとう…」



彼女は泣いていた。さすがにこんな状態で引き剥がしては男が廃るってもんだ。








俺は、彼女の頭に優しく手を乗せた。











楽しんでいただけたなら幸いです。


ブクマ、評価励みになるので是非お願いします。


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