プロローグ
初投稿です。
気軽に読んでもらえると嬉しいです。
「人生は、死ぬまでの暇つぶしである」
あなたはこの言葉に自信を持って反論できるだろうか?
どこで見たのかは忘れたが、この言葉を初めて見たとき、どこか引っかかるものを感じながらも、俺は明確な否定をすることは出来なかった。
そう、あの時までは…
ーーー・ーーー・ーーー・ーーー・ーーー
朝。
カーテンの隙間から陽の光が差し込む。
俺は憂鬱な気持ちで身体を起こした。
…といっても寝ていたわけではない。
今週はスマホゲーム(いわゆるMMORPG)のイベントが開催されており、寝る間も惜しんでネットの友人たちとゲームに励んでいた。
「悪い、そろそろ落ちるわ」
俺のことを彼女持ちのイケメン大学生だと思っている方々に一時の別れを告げてから部屋を出た。
時刻は午前7時。
歯を磨いて顔を洗い、テーブルの上の朝飯を食べてから、シワシワの制服を着た。
ここらでは有名な高校の制服である。…もちろん悪い意味でだが
そして、学校指定のバッグを肩にかけて家を出る。
朝日が徹夜明けの目には眩しすぎて、やや俯きながらいつもの通学路を歩いていた。
「こんなはずじゃなかったのに…」
と、毎日毎日この道を通るたびに思っていたことが、無意識に口に出てしまう。
ーー高校受験当日。
成績優秀だった俺は、自信満々で完璧な答案を提出した。そして見事、偏差値最底辺の高校に首席で入学を果たしたのだ
そう、出願の時点で志望校を間違えていたのである。
これに気づいた時は逆に笑えてきたよ。うん。
まぁそんな訳である意味、分不相応な学校に通うことになった俺は、御察しの通りヤンキーどもにイジメを受けていた。
「おいタケ、売店で焼きそばパン買ってこいよ」
申し遅れたが、俺の名前は安井 武。ヤスイ タケルだ。
そして、俺に歴代のヤンキーが5万回は言ったであろうテンプレなセリフを吐いたこのアホヅラはジャックである。
本名は知らない。
高校生だというのに赤髪のモヒカンに鼻ピアスをしているというイカれた風貌の彼は、どうやら俺の事が大好きなようで取り巻きを連れてほぼ毎日絡んでくる。
そして同じくほぼ毎日言っているが、この学校の売店に焼きそばパンは売っていない。
「ジャックさん。焼きそばパンは売店に売ってません。」と、俺が震えながら言う。
ビビっているわけではない、笑いをこらえているのだ。
ビビってないもん……
「あ?そーだっけか?」と、ジャックが取り巻きAに聞く。
取り巻きAはオモチャのように何度も頷く。
もうこのやり取りは何度目なんだろうか。彼の脳みそはトロけているに違いない。
ーーーーー放課後。
イカれヤンキーから解放された俺は家路についた。
交差点での信号待ちで、ふと道端に目を向けると、電柱の根元あたりにうちの学校の生徒手帳が落ちている。
「誰かが落としたのかな」
なんとなく拾って開いてみると、そこには100%見間違えることのない、赤髪に鼻ピのアホヅラの顔があった。
奴が生徒手帳を学校に持ってきていると言う事実に衝撃を受けていると、信号が青に変わったので歩き始める。
そして前々から少しだけ気になっていた、奴の本名が書かれているであろうページに手をかけた瞬間。
身体の右側から、受けたこともないような衝撃が俺を襲った。
〈あ、これ死んだわ〉
死ぬときというのは案外冷静なもので、横たわりながらだが、周りを見る余裕すらあった。
俺のすぐそばには例の生徒手帳が落ちていた。
開いているページに目を向けるとそこには…
[2-F]・百合園 慧
「なま…え……キ…レイ過ぎ…だろ…」
それが俺の最後だった。
いや、言い直そう
俺の’’この世界での''最後だった
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そして俺はこの数分後、あの言葉が明確に間違っていたのだと知る。
正しくはこうだろう。
「人生は、異世界転生までの暇つぶしである」
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