表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アスタリア戦記 救済の哀赤  作者: 株式会社マイナーゲームス
2/5

踏み締める鎖 2

団長と別行動を取るエリクリードたち、一人で盗賊の相手をする女騎士、村へ到着する後続の部隊。

「帝国の者は皆殺し」

不穏な鎖が村を歩く。

死屍累々とは正にこの光景と言える惨状だ。村人に盗賊の死体。そして、一人の茶色の長い髪に軽くボリュームを付けた女騎士を取り囲む五人の盗賊の生き残りたち。

「ふふ、良い目ね」

歳をある程度重ねより女の色香と母性を感じさせる容姿に不釣り合いな恍惚の表情を浮かべている。この女性の本質の片鱗が見える。

「この女、強す過ぎる」

大男が圧倒されている。

「楽しみたいの、あなたたちもそうでしょう? だから、派手に暴れてわたくしを誘ったのでしょう?」

言っていることがメチャクチャだ。彼らは明日を生きる為に略奪を行っているのだ。決して彼女の気を引く為の行いでは無いのだ。

いや、普通ならば成敗するなど言うものだが彼女は言わない。

ゆっくりと一人の盗賊に近づく。誘うように両手を広げながら。

「ふふ、いつまでも我慢する必要は無いのよ。さあ、発露なさい、発情なさい」

胸から尻、そして足まで掛けた抜群の体躯は戦場を魅了する。

「うぉらぁ!」

背後にいた盗賊が斧を投げる。

女をそれを見ずに手に持った丸盾で受け流しながら正面の盗賊に当て絶命させる。

「まだ、あなたの番じゃないのに、よっぽど我慢出来ないのね」

斧を拾い先程の盗賊に投げ返す。

盗賊は躱す。

「このクソアマ、ぶっ殺っ」

躱したのに、はずなのに腹部に生暖かい感触が広がる。

腹部に槍が刺さっている。

「あら、斧だけと言った覚えは無いのだけれど。ふふふ、一人で興奮し過ぎて逝っちゃうなんて、女性を満足させられないわよ、そんなんじゃ」

盗賊が倒れるのと同時に残りの三人が一斉襲いかかる。

彼女は更に笑みを広げる。

盗賊たちの攻撃を全て受け流し剣を抜き一人に突き刺す。

「グハァ」

「さあ、眠りなさい」

楽しそうに言いながら剣を抜き取り次の盗賊を刺し最後に斧を奪い残りの一人に叩き付ける。

「ふふ、とっても良い顔よ。わたくしも濡れてしまいそう」

盗賊の一人がか細い息で何とか延命させようと必死で呼吸する姿がたまらない。生まれたての赤子が初めて肺呼吸する瞬間の感動にも通ずる興奮だ。

「さて、殿下と合流しなければ……」

鎖の音がそれを遮った。

「あら、まだ面白そうな娘がいたのね」

ぼろ切れのシャツとパンツ姿の全身傷だらけの背中まで届く赤い髪をした女が彼女の方へ向かって来る。

明らかに盗賊たちとは異なるのは服装、怒りに満ちた表情から分かる。

そして、彼女にとって最大の興奮材料だ。

「帝国の者は皆殺し」

鎖を鳴らす女は斧を構えた。



村落近郊

「殿下もご多忙の身でどうして討伐隊を出させられないのか」

「くく、これは俺の為に用意して下さった舞台だ。聞こえるか男たちの盛り合う声が」

「貴様のような変態と一緒にするな」

「言ってくれるな。帝都ではプレイボーイな隊長らしくない言葉だな」

オールバックで引き締まった表情の黒を基調とした甲冑に身を包んだ騎士、リーゼン・アリマー。彼の横で一人興奮する麻布の服を着た青年はゼフロ・アベヒィテンだ。

「ゼフロも隊長も殿下たちと合流するのが先でしょう」

後ろから弓を携えた紫の癖毛の気弱そうな少年、ミカエル・フォルツが二人の間に立ち静止させる。

「ちっ、今はお前と遊んでいる場合ではないな」

「俺の分もちゃんと残して下さいよ、団長。くく、まだ、楽しめて無いんだからな」

元盗賊であるゼフロの言動が最も団長と似ているのは何という皮肉だろうか?

「言っていろ。ミカエル、ゼフロ。俺たちも向かうぞ」

三人は村落へ向かった。



エリクリードたちは村落にいる盗賊の討伐にあたっている。

「そんな粗末な斧じゃ私の盾は貫けないわ」

エレナーデは盗賊の斧を中盾で防ぐ。彼女の守備の高さは騎士団でも抜きん出ている。

それでも団長には遠く及ばないが。

「ふん、ボサッとする。貴様は記憶に留める価値など無い」

エロイデが横から盗賊に槍を突き刺す。彼は帝国内でも有数の槍の技量を誇っている。

先程言い合いしていた彼らとは違い息の合った連携で盗賊たちを始末していく。

「殿下、盗賊以外に何者かが潜んでいるようです」

村長の遺体と盗賊たちの遺体、彼らの傷の付き方違っている。盗賊たちの方は強い力で

ぶった切られている。

「これは……」

「殿下、我らの側に」

盗賊たちとは明らかに次元が違う。


「『妖艶の死神』は一緒じゃねぇみてぇだな」

亀の甲羅を被った男の声が正面から聞こえる。

「あんたが頭目? だったらさっさと散りなさいよ」

「待つんだ。エレナーデ」

一人特攻しようとするエレナーデをエリクリードが静止させる。

「彼らを手に掛けたのはあなたなのか?」

「そうだ。つっても俺の手下がやったんだがな」

ボスはそう言うと鉄製の斧を手に取った。

「王国正式斧、同盟軍の装備」

ボスの斧にエロイデが食い付く。

「そうさ。俺たちタートルヘッドにはアジトはねぇ。ただ、大陸を渡り歩くだけだ」

大陸中を渡り歩いた戦果だろう。同盟軍の良質な武器を所有している。

「我々、帝国製より遙かに軽く、耐久力に優れています」

要するに軽くて丈夫な装備を持つ敵に重くて脆い装備をしているこちらは幾分か分が悪い。

「エロイデ、あんた怖じ気づいたわけ?」

「いや、相手の装備を知らずに踏み込んで負傷するお前の姿が見えただけだ」

「言ってくれるわねぇ」

敵前で言い合うこの余裕。

「装備の優劣が勝敗を決める絶対条件じゃないってこと」

「その身に刻んでやろう」

二人が駆ける。頭目は待ち構える。

女騎士と鎖の女、エレナーデ、エロイデと頭目。

対峙する両者。

そして、いがみ合う隊長リーゼンと盗賊でのゼフロ。

この騒動の行方は?

次回は随時投稿致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ