第三話 廃人眼鏡
沢沿いを上流へ上流へと登って行く。
別に山頂を目指して居る訳ではないのだが、何となく上を目指している。
高みを目指すことで、島の全体像が掴めるかも知れない。
ただ、いかんせんグルコサミンとコンドロイチンが足りなかった。
俺の膝に痛みが走る度に休憩を取り、歩き、休憩を取り、その繰り返しだった。
翔子は流石に若いだけあって、いや、引き篭もり歴が短いだけあって元気だった。
あるいは体脂肪が少なく身軽だからだろう。
その癖、出っ張って居る所は出っ張っていて、自己主張の激しい身体をしているものだから色々と俺が困ったことになる。そして、俺を困らせることが大好きな翔子の性格のために、さらに困ったことになる。
翔子は自分の身体のことを自覚しているから手に負えない。
隙あらば自分の身体をネタにして俺をからかってくるのだ。
年長者としてはしたない真似は~と、一度は説教を試みて、口が動かなかった。
十歳年下? 十歳年上? 真横にしか成長していない俺が年上面すること自身にまず説教だ。
むしろ膝の具合の為に足を引っ張ってるのは俺の方なんだ。
この無様な姿で年上面は、出来ないよな……。
今日の食事用の魚は、ワタを使った撒き餌と木製の罠を作って昨日のウチに捕らえて置いた。
最終的に手掴みしてビニール袋に放り込んだのは翔子だったけども。
魚を捌き、火で炙り、いつも通りの昼飯にしようとしたところで今日は珍客が乱入した。
「おおっと、ここで第一島民と第二島民にエンカウントだ!!」
その珍客ははボサボサ髪の、まだ二十にもなって無さそうな若い眼鏡の男だった。
本当に、この島で初めて出会った相手が俺達だったのだろう。
人肌が恋しい子犬が駆け寄ってくるみたいに走って来た。
まだ、グルコサミンもコンドロイチンも豊富な奴だ。
「いやぁ~、焚き火の後を見つけて追って来たんだけど、意外に早く追いついた。良かった~」
「……で?」
そんな子犬の眼鏡を見詰め返すのは翔子の氷点下の冷たい視線だった。
既に怒っている、いや、すでに臨戦態勢に入っている。
人を見たら泥棒と思えって言葉が日本にもあったっけ。
思えば日本人、そんなに優しくない。優しければ俺は引き篭もってない。
「で? って、いや、せっかく出会えたんだから一緒にパーティ組まないかなぁ~って」
「ふ~ん、で? 何が出来るの? 回復魔法とか使えたりするの?」
回復魔法を使える人材がこの島に送られてくるはずが無い。
奇跡の人として何処かで教祖さまをやってるはずだ。
もしくは是非とも病院に勤務していて欲しいヒーラー職だよ。
「回復魔法は使えないけどさ。その~丸一日、何にも食べて無くって、ご相伴にあずかれないかなぁ~って思いまして~」
「ご相伴にあずかれないわよ? だって、箸は二組しかないもの」
実際は予備や他の用途を考えて十本以上あるんだけどな。
それにしても会話のペースが速すぎて、口を挟む隙間がない。
「いやいや、丸一日水しか飲んでない可哀想な相手に恵んでやろうとか、そういう日本人同士の思いやりの精神が……」
「無いわよ? ここ日本じゃないし。日本でも可哀想だとも思わないし。他人なんてどうでもいいし?」
実に現代っ子な翔子の反応。
実に他人に無関心な反応。
実に無関心にされすぎてドロップアウトした惨めな俺。胸がズキリと痛んだ。
「物々、交換……」
これが、俺が、口に出来た、精々の言葉だった。
察しと、思いやりと、譲り合いで、標準的な日本人だ。
「おぉ、トレーディングね。OKOK。俺からは、そうだな~お徳用のマッチの中身から少しで良い?」
「全部頂戴。どうせ食べなきゃアンタ死ぬんだから、その死体から貰った方がお徳じゃない? お徳用カバンでしょ?」
「翔子、それでいい。ビニール紐でも、ビニール袋でも、何でも良い」
翔子はこの眼鏡を遠ざけたかったようだけど、三人で食べても余る量だ。
問題は、無い、はず。あるとすればキノコの食中毒で死ぬ人間が一名増えるだけだ。
「むぅ~、鷹斗がそう言うなら良いけど……器は別にしてよね」
出来上がるものは翔子いわく『石狩鍋』。
本当は『石焼鍋』なんだけど、まぁ、いいや。
手の平サイズのお椀に汁を掬って菜箸で具を適当に放り込む。
それを眼鏡に渡した。
眼鏡からはマッチが五十本ほど。
物々交換の原始社会なのか、科学が発展した文明社会なのか悩ましい商取引だ。
「うぉっ、うめぇ!! 塩が効いてるし旨みもたっぷり。生産職スゲー!!」
腹が膨れて人心地がついたのか、聞いても無いのに眼鏡は自分のことをぺらぺらと話し始めた。
この島で目覚めて三日? 四日? 誰とも遭遇せずに居たらしい。
支給されたカ○リーメイトを温存しながら、人の痕跡を見つけ、俺達の後を追ってきた。
追いつかれたのは俺のグルコサミン不足のせいだ。
「でさぁ、非生産的な皆さんって文章は失礼だよね? 俺はちゃんとネトゲでは生産職のサブキャラも作ってたってのに」
眼鏡はいわゆる廃人。オンラインネットワークゲームに24時間体制でinし続けた廃人だった。
ゲームの中では生産者、ゲームの外ではただの消費者だ。
結局、ウェブを巡回して上から目線で眺めていた俺と変わらない……引き篭もりだった。
いや、安全圏から他人に不愉快な思いをさせてないだけ、俺よりも善人だな。
俺は十年、翔子は一年、眼鏡も一年。
さらわれた理由は長さが基準と言うわけではなさそうだ。
金髪……ピアス……っは、引き篭もりってわけでもなかっただろうし。
延々と廃人眼鏡は自分の事について語った。
翔子はずっと冷たい視線のまま、話を聞いても居ないようだった。
俺は、相槌というものがどういうものか思い出すのに必死だった。
そうして自分を語り終えた廃人眼鏡に向かって翔子はこう言った。
「そう、だから? 結局はネトゲの廃人で、何にも出来ない役立たずってことは解ったから消えてくれる?」
翔子が怒っている理由は解っていた。
嫉妬、あるいは俺を奪われる恐怖だ。
とても簡単な話、翔子は俺に依存していた。
初めから自分の生死を託すほど、俺に依存していた。
エスパーじゃないから何故かは解らない。
だけど、俺を生きる理由にしていることだけはわかっていた。
だから、二人の間に割り込んでこようとする廃人眼鏡は最初から明確な敵でしかなかったんだ。
「あ……えっと……鍋、美味しかったよ」
「うん、マッチ、助かった」
トボトボとさらに上流に向かって歩き始めた廃人眼鏡の後姿は、とても寂しそうだった。
出会う順番が違えば、トボトボと歩いていたのは俺だったのかもしれない。
……いや、俺の脚じゃ追いつけなかったわ。
普通に餓死して死んでたわ。
「アタシ、嫌な奴? 性格、悪い奴?」
「否定、しない。日頃、行動、考えろ」
「あ~!! からかったことまだ恨んでるの!? そこは男の甲斐性見せなさいよ!! 朝には男の硬さを見せたんだから!!」
「……見たのか?」
視線を逸らしよったぞ、この小娘。
俺が就寝中にズボンの中を覗いたのか?
おい、主催者。これは法に反する行為じゃないのか?
まぁ、いいや。
減るもんじゃないし、この重たい空気を冗談で流せるのなら流してしまえ。
ゲームじゃない。だから、ゲームの知識しか無い奴は要らない。
……現実社会もそうだな。現実の知識を持たない奴は要らない。
でも、現実の知識を得るには会社に勤めなきゃいけなくて、……会社は現実の知識がある奴しか採用しないからm……それで現実の知識を得るには、……こんな南半球の島で考えることじゃないな。
遠い日本の社会問題については日本人が考えてくれ。
……あ、俺も日本人だったわ。そして引き篭もりも社会問題だったわ。
◆ ◆ ◆
島がある。山がある。ならば、どこかに温泉がある……と、思いたい。
湧き水と大量の薪でも良いのだけど、冬のことを考えると熱源が欲しかった。
来年のことを考えると鬼が笑うと言うけれど、考えて居るのは今年の冬のことだ。
漫画の方はさておき、植物図鑑の方は島の植生について随分詳しく書かれていた。
似た感じの毒キノコがある地味なキノコ、どう見ても毒にしか見えないけど食べられるキノコ、選ぶなら後者だ。
赤、青、黄色と色取り取りな信号機のキノコ三兄弟が煮込まれる石狩鍋。
コレを見て箸をつけるには相当な勇気が必要だろう。
でも、実際は旨み成分が溶け出して美味いのだから手に負えない。
植物図鑑を軽く読んでみただけでも、この島では一年中なにがしかの食べ物を安全に手に入れられることが解った。
さらには虫を追い払うための草の存在や、薬草の類、あるいは毒草の類まで事細かに記されていた。
人間には無毒でも、動物には有毒な食べ物なんていくらでもある。
犬や猫にタマネギやチョコレートを与えてはいけないと言う話は有名だ。
成分の一つが毒として働いて簡単に死んでしまうのだ。
そういった食べさせてはいけないものを肉団子に混ぜておけば、新しい肉団子の材料が出来ることだろう。
もちろん、人間も死んでしまう植物もあるので、その辺りも懇切丁寧に書かれていた。
動物用の毒餌による狩りは許される。
だけど、落とし穴などによる罠は許されないんだろうな。
もしも、落とし穴に誰かが落ちて死んだりしたなら、作り主の首筋がパンッ……と、なるんだろ? 過失致死だとかを認めて貰える主催者だとは思えない。
「鷹斗~、気持ちいいよ~♪ 一緒に入らないの~?」
「入らない」
適当な水辺が見つかったので、水浴びを希望した翔子が全裸になって……と、いうところで止めた。
小魚の中には小さな穴に潜り込もうとする奴が居る。
それが体内に入ると恐ろしい死を招くのだ。
カンディル、だったかな?
ネットで見た奴は男性には恐ろしい魚で、女性にも恐ろしい魚だろう。穴の中から入って中から食い荒すのだ。
なので、パンツを脱ぐことだけは譲らなかった。
そして、翔子が水浴びに満足するまで俺は植物図鑑を読みふけっていた。
熟読に徹していた。
塩の供給源である海との距離を考えると、この辺りが限度だと思うのだけど、いっそ、ここに拠点を構えても良いかもしれない。
一年生きるか、それとも死ぬか。ワンイヤーオアダイ。
一年間を生きると約束したからには、一年を生き残ってみようと思う。
そう再度の決意したところで翔子が裸のまま俺のところに戻ってきた。
「さ、さ、さ、さ、さ、さ、さ、さ、寒いっ!!」
そりゃそうだ。まだ初春、雪解け水は冷たかっただろう。
俺をからかう為なら命も懸ける翔子の根性は認めよう。
唇が紫色一色に染まっている。
「鷹斗よ!! 肉布団!! 肉布団の用意をするのじゃ!!」
「はいはい、その前に身体と髪をちゃんと拭けよ?」
金髪ピアスの服は色々な意味で役に立った。
今はタオルだ。食器を洗う布にもなる。濾過装置の一部にもなっている。
彼の尊い犠牲が無ければ俺の服が切り裂かれていたところだろう。
なんたらブランケットを重ねたシートを広げ、人間暖房機として横たわる。
「はぁ~、温まるなぁ。アタシ、デブ専の子の気持ちが解った気がする~♪」
「いや、俺はどんどん体温を奪われて辛いんだが? どれだけ命懸けなんだよ?」
全裸になった翔子に抱きつかれれば、そりゃあ、反応するところは反応する。
でも、紫色の唇を見ると、げんなりする。つまり半カチの半萎えだ。
からかう為に水浴びをしたのか、抱き付くために水浴びをしたのか。
両方だな。あんまりにも俺がつれないものだから。
「背後で女の子が水浴びしてるのに……一切!! 覗かないなんて失礼じゃない? 鷹斗は不能なの?」
「目覚ましとして毎日機能しているだろうが」
「そうだねぇ、若い女の子に裸で抱きつかれて、今も、元気してるねぇ……据え膳食わぬは男の恥って言葉知らないの?」
「むしろ、俺が捕食される側だと思う体勢でそれを言うのか?」
「じゃあ食べて良い?」
「駄目だ」
「ケチ! ケチンボ!! 毛チンポ!!」
「お前はオッサンか……まったく」
ここ数日で俺のインディアン語も日本語にまで昇華した。
気安く話せる相手と言うのは十年来だ。
十年来の友? 使い方が大きく違う気もするけれど、友達ってこんな感じだったような気が……まったくしないな。
平然と裸で抱きついてくる女友達なんて居たら、学級崩壊どころではないモラルハザードだ。
あの廃人眼鏡の出会いから数日、未だ誰にも出会っていない。
そして、俺の膝の具合を考えて、少しずつ、少しずつ、ゆっくりと登っていった結果。
やっぱり、出会っちゃうんだよなぁ……。
◆ ◆ ◆
「た、食べ物……トレード……」
沢の傍らでうずくまった廃人眼鏡。
あの後も、上流を目指し続けたらしい。
水だけは生水だけど困らなかったため、何とか生きながらえていた。
「どうする? ここでゆっくり死ぬのを待とうか? それとも無視して先に進む? で、戻ってきたときに荷物を拾うの? どう? この翔子ちゃんの完璧な計画」
完璧すぎて引くわ。
翔子は相変わらず氷点下の視線を廃人眼鏡に向けていた。
今の二人の人間関係を壊しかねない全てのものに対して、この瞳を向け続けるのだろう。
ビニール袋の水槽の中には二人で食べるには多すぎる量の魚がある。
日ごとに魚を獲るための木製の罠の数が増えていくからだ。
罠の質もあがって、いまではガチンコに頼ることも無くなった。
またパンイチになられても困るし、沢の傾斜が急流になってきたので、あまり迂闊に足を入れられないからだ。
代わりに罠にとっては絶好のポイントが増えた結果、二人では食べきれない量の魚を抱えている。
「俺、助けたい。翔子、どうする?」
久しぶりのインディアン語。
駄目だな。翔子の他に誰かが居れば元通りだ。
今、翔子の頭のなかで色々なものがグルグルしていることが解る。実際に、身体をグラグラ揺らして考えてるからな。感情と理屈と理性とがせめぎあって居るんだろう。普段の羞恥心にもそういったせめぎあいが欲しいのだが、こちらは期待できそうにない。
「ねぇ? 何を出せる?」
「え……と、マッチ?」
「駄目、全部。鞄の中身を全部。ううん、鞄ごと全部。どうせ持ってても死んじゃうんだから構わないでしょ?」
足元を見た素晴らしいトレードだ。
需要と供給のバランスを考えるなら、命と荷物の交換レート。
等価以上の善良な取引には違いない。
「……わかった。それで良いから。なにか、食べ物」
「はい、これあげる」
「「え?」」
廃人眼鏡と二人で声が重なった。
翔子の提供した食料、それは、カ○リーメイトが一本。
俺の中では「まだ持ってたんだ」と「たった、それだけ?」の二つが重なっていた。
このまま翔子に任せると廃人眼鏡は餓死確定なので仕方が無い。早めの夕食といこう。
魚を捌き、火で焙り、濾過した海水と、命懸けのキノコ類を豪勢にぶち込み、最後に真っ赤に焼けた石を放り込んで石狩鍋の完成だ。
石狩の人、ごめんなさい。
「いやぁ~、腹一杯って幸せだわ~」
「せっかく私が取引を纏めたのに……あ~あ、鷹斗に裏切られた~! う~ら~ぎ~ら~れ~た~!!」
「餓死寸前、メイト一本、全然、足りない」
インディアン嘘つかない。
俺と翔子は相変わらず、同じボウルから。
廃人眼鏡には二杯分を掬って寄越した。
「え~っと、そっちの太った人……」
翔子が氷点下どころか絶対零度の視線で威圧した。
自分は横綱、関取、メタボ、肉布団、妖怪脂肪分と口にしても他人が太ったと表現するのは許されないことなのか。
「た、鷹斗さんは、サバイバルスキルが高かったりする人? もしそうなら、教えて欲しいかなぁ~。ほら、また行き倒れになっても目覚めが悪いでしょ?」
「全然? 早く死ねばいいのに。あ、もう荷物も貰ったから、好きなところで死んでいいからね?」
し、翔子……流石に引くぞ。
「マンガ、見た。図鑑、見た。ネット、見たの、覚えてた」
「あぁ、あのマンガ……そう言えば趣味じゃないから読んでなかったっスね。あと図鑑も」
説明書を読まない新しい地球人よ。
説明書は困ったときに読むもの、今がその時だ。違うか?
「え~っと、鞄の中に入ってるわね。よしよし。良い炊きつけがまた手に入ったわ」
「あ、あの~翔子さん? よろしければ図鑑を見せてほしいかな~って」
「トレード? 何と? 眼鏡とトレードする? あと、名前で呼ばれるほど親しい関係になった覚えないから」
ひでぇな。図鑑と眼鏡のトレードって、読めないだろう。
そして俺はお前の苗字を知らないぞ?
「翔子、荷物、返してやれ」
「えー? 折角トレードしたのに、返しちゃうのー?」
「対価、もらう。海水、取ってきて、貰う。残り、少ない」
「あぁ、鍋に塩が効いてると思ったら海水だったんっスね。労働力として報酬を返します!!」
翔子は相変わらずの冷たい視線だが、これ以上、人死にを背負うのはゴメンだ。
金髪……ピアス……だけで、もう十分だ。
それに、俺を連れて居るからこんなに遅いだけで、廃人眼鏡の足なら、往復しても二日か三日で追いついて来るだろう。
俺は黙って残りの魚を捌き、川の水で洗って、鍋の残り汁に漬けてから焼く。
二・三日分の食料だ。火を通しておけば二・三日なら腐らないだろう。……と、思いたい。食中毒になったら、ごめんね?
あとは、愛用の杖の一本、賢者の杖の槍を差し出した。
「えっと、鷹斗さん? 別に俺は杖が無くても……」
「杖、違う。槍。往復、獣出たら、危ない。ナイフ、交換」
野生の獣に出会う危険性に思い至ったのか、頷いて、廃人眼鏡のナイフと俺の槍をトレードした。
愛用の棒にガムテープを使った分、明らかに俺が不利なトレードだが、これで海水が手にはいるなら安い物だ。
「な、なんか、武器の交換って照れるッスね。こう、男の友情的な?」
「照れるな。翔子、怖い」
翔子はニコニコと笑っていたが、このタイミングで笑って居ることが怖かった。
怒っている以上に怖い表情って本当にあるんだな。
最近、翔子は俺に悪夢を見せるための絶妙なポイントを探り当てたらしい。
きっと今日は悪夢だろう。どうせまた、悪夢だろう。