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有人島物語  作者: 髙田田
有人島物語~春夏の始章~
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序章 目覚めの時

 全ての物語は、誰かを楽しませるために書かれているのであって、誰かを苦しめるために書かれている訳ではないということをご了承ください。なお、この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 その日、目が覚めると俺は砂浜に倒れていた。

 おかしい、何があった?

 俺は確かに昨日、深夜アニメを見た後、布団の中で眠っていた筈なのに?

 辺りを見渡すと一つのリュックサックが落ちていた。

 背負い鞄の中身を漁ると黒い封筒が一通。

 あぁ、俺は知ってる。この展開。飽きたわ。

 きっと、俺は……いや、俺達はこれから殺し合いをさせられるんだろ?

 そのデスゲームの模様を大富豪達が笑いながら見物するんだろ?

 それから、両親にお前らは売られたとか言われちゃうんだろ?

 俺は、その使い古された陳腐な説定に溜息を吐きながら封筒を開けた。

 封筒の中身のメッセージはこうだった。


「非生産的な皆さんへ。当プログラムへの強制参加おめでとう御座います。このプログラムは無人島で約千名の非生産的な皆さんにリゾートを満喫していただくだけの簡単なプログラムです。決してデスゲームなどではありませんので、殺人、強姦、強盗、窃盗、暴行、器物破損などの強く法に触れる行為は行なわないでください。皆さんの活動は24時間体制で監視されており、それらに該当する行為を行おうとした段階で運営側より忠告音による調停を行います。次いで警告音。それでも行為が止らない場合には、被害者保護のための対抗措置が施されますのでお気をつけください。具体的には加害者への死を持って対応させていただきます。では、これから一年間に渡るリゾートライフをお楽しみください。この島からの脱出を図ることも自由ですが、皆さんの故郷である日本からの距離を考えますと無謀としか表現しようの無い行為であることだけはお伝えておきます。尚、空腹や病気、怪我による死亡はバカンス中の事故として扱われますので悪しからず。これより一年間後に迎えの船が参ります。なお、参考資料といたしまして、さ○とう・たかを先生による劇画サ○イバルと植物図鑑をご用意致しました。どうぞこれを熟読してリゾートを満喫してください。では、お元気で。一年後にまた会いましょう」


 はい? デスゲームではないですと?

 2Lの水が入ったペットボトルが二本に、漫画の本と植物図鑑、カ○リーメイトが五箱、あとは真剣なサバイバルナイフとお徳用のマッチ箱、銀色のガムテープに銀色のシート、複数枚のビニール袋にビニール紐の玉、あとは様々な錠剤が少々。

 コレを使って、一年間を、この島で、生き延びろ……と?

 はははははは、ご冗談を。

 高々、十年間、部屋から出なかっただけで、この扱いは、ねぇ?

 インターネットを通じて電脳空間ではちゃんと外出してましたよ?

 俺は引き篭もってないよ? 引き篭もってないよ?

 電脳世界でアバターは外出中。

 そう思いながら浜辺で体育座りをして海を眺めていた。

 ず~っと海を眺めていた。

 おかしいなぁ? いつになったらこの夢は覚めるんだろう?

 おかしいなぁ? そういえばお母さんが起こしに来なくなって何年だろう?

 おかしいなぁ? そういえばお父さんが扉越しに怒らなくなってから何年だろう?

 はやく、起こして欲しいなぁ。

 はやく、こんな悪夢からは目覚めたいなぁ。

 おかしいなぁ。おかしいなぁ。おかしいなぁ。


 という現実逃避にも飽きたので、サ○イバルを熟読した。

 うん、なるほど、水を必要以上に飲むと体力を消耗するのか~。

 で、一日に生きるのに必要な水分量は1リットル。

 成人男性は一日に最低1500キロカロリー必要なのか~。

 あ、でも俺の場合は体脂肪分があるから若干有利なんじゃね?

 カウチポテトならぬ浜辺カロリーをしながら俺はサ○イバルを読みきった。

 なるほどなぁ~、異能バトル系も良いけどたまにはこういう漫画も面白いな。

 今度、漫画喫茶に行ったら読んでみよう。

 この十年間行った事無いけどさ、ははは。


 で、気がつくと、水が4リットルほど空になってた。

 で、気がつくと、カ○リーメイト五箱ほど無くなってた。

 うん? おかしぃなぁ?

 俺はただ浜辺で漫画を読んで、水を飲んで、カ○リーメイトを齧ってただけなのに。

 え~っと一箱が400キロカロリーだから、まぁ、これで今日一日分のカロリーは摂取できたわけだ。

 で、口がパサパサしたから水をガブガブと飲んだわけだ。

 そうやって、ぼんやりしてると日没が来たわけだ。

「さ、寒い……」

 島は南国っぽい雰囲気なのに夜は凍えた。

 何か無いかと鞄を漁ると銀色のシートが出てきた。

 確か、これは災害時に毛布の代わりになるとかいう赤外線が何とかのシートだ。

 どうか、ただのアルミホイルではありませんようにっ!!

「あったかぁ~い」

 実際、ヌクヌクという程ではなかったが、寒さを凌げるほどの防寒具にはなってくれた。

 さて、明日からどうしよう?

 先生のお話では、まず飲み水を探さなきゃいけないんだよな。

 一日で4リットルを飲みつくすとは主催者も想定外だっただろう、ふはははははははぁ……。

 カ○リーメイトはやっぱりノーマルが一番美味しかったな。

 飽きないように五つの味を用意してくれた主催者の心配りに感謝しないとな。

 もう無いけどな。

 ふはははははははははははははぁ……。


「ふ、ふ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」


 何が悲しいのか判らなかったけど俺は泣いた。

 塩分を失うのは良くないってあったけど、目の前の海水をちょっと口にすれば補給できるはずだから大丈夫だ。

 俺は、何かが何かして何かによって無人島に放り出された。

 正確には約千人の俺の同類が放り込まれたはずなので既に有人島だけど。

 こうして、俺の一年間に渡るサバイバルライフが始まったのであった……。


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