表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説集2 (51話~100話)

混雑

作者: 蹴沢缶九郎

とある葬儀場、人々が悲しみにくれる中、突然棺の蓋が開き、中から亡くなったはずの老婆が顔を出した。


「死んだ婆さんが蘇った!!」


場内は騒然。


この世に悲観し、高層ビルから飛び降りた若者。地面に叩きつけられるも、暫くすると平然と起き上がる。または病院、手の施し様がない病の患者が息を引き取る。「ご臨終です」と医師が言い終わるやいなや、再び目をあける。


その様な不思議な現象が世界のあちこちで起きていた。蘇った人々の話によると、


「閻魔様が、もうあの世は定員いっぱいなので死なないでくれ」


と、現世に帰されたのだという。


かくして、人が死ねなくなった世の中。まず無くなったのは戦争。敵が殺せないのだ。これほど無駄な争いもない。兵士達は「アホらしい」とそれぞれ持っていた武器を投げ捨てた。牧師や寺の僧侶は、自分達の存在意義が薄れた事を実感し、各々好きに生き始める。困ったのは葬儀社。人が死なないので商売上がったり。人質事件発生。犯人の常套文句、「こいつの命が…」が通じるはずもなく、人質は、


「あ、好きな時に殺してくれて構わないですよ」


と呑気なもん。


人は不死に憧れた頃があった。しかし、こうもあっさり実現すると、不死という言葉も軽く感じてしまう。何しろ、皆が平等に不死なのだ。


ある片田舎に住んでる男が友人に言った。


「最近この辺りも人が増えたよな?」


「田舎暮らしに憧れた人が増えたんだろ?」


と友人は笑いながら答えた。


人が死ねない、死なない世界。この世の定員もいっぱいになるのは時間の問題だろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ