黒いアレ
お腹が空いた為、家を出る。
美味しそうな匂いに誘われ飛び出したは良いが……それは失敗だった。
目の前には良く見かける人、こいつはいつもはほとんど動かないので、寝ていたのかもしれない。
だが今、眼前に居るそいつは奇声を上げている。
あ、危険――。
生命の危機を感じ、一目散に逃走を図るが……。
以外にもそいつは、奇声を上げるだけで、こちらに攻撃してくる事は無かった。
ただ、こちらから一度も視線を逸らさずに、何かを探しているらしい。
一度止まってその様子をチラっと見た後、大きな建物の影に滑り込む。
建物の中は光が遮られ、暗闇が支配している。
あ、危なかった……。
最近越してきた自分の部屋に戻る。
ここは日差しこそ良くないが、近くにいろいろ揃っている。
その為、生活するには申し分ない環境だった。
ただし、仲間内の噂では、家から出ていったきり帰って来ない者も居ると聞く。
さっきの奴が原因と言う仲間も居た気がするが、間違いでは無いのかもしれない。
この辺りには川は無いが、一度入ったら抜けれない沼もあると聞くし……。
お腹は空いてはいるが、身の安全が一番だ。もう少し時間が経ってから出歩くか……。
ブシイイイイイイイイ!!
けたたましい音と共に外から、白い霧が流れ込んできた。
周りを囲まれたが、視界を奪われただけだった。
ふむ、異常はないのかもしれない。
少し眠くなって来たので、お出かけはまた今度かな。
今度出る時は、あいつに出会わないように祈らなきゃ……――。