四月十六日 十八時十分
四月十六日十八時十分。
七ヶ崎が、俺の泊まるホテルの一室を訪ねて来た。
まあ、俺の泊まると言っても、昨夜の記憶がないことと、七ヶ崎がこの部屋に訪れたから察するに、ホテルは七ヶ崎が用意したものであるこは、推測出来た。
しかし、俺が死んだことと、昨夜の後のことについては察しが付かない。
その辺のことを七ヶ崎に説明してもらった。
弁財の石の弾丸を受けた後、俺はやはり一度死んだらしい。
心臓を貫かれらしいので、それは仕方がない。
人間である以上、心臓を貫かれて生きていたられるわけがない。
しかし、一分にも満たない時間の後、俺は目覚めて弁財を追い詰めていたらしいが、まったく記憶がない。
そして、七ヶ崎と俺が追い詰めたことろで、意外な結末を迎えた。
なんと、弁財は奴の仲間によって殺されたのだ。
奴を殺した仲間は、こんな言葉を残したそうで、
「お前の役目は終わった・・・」
この言葉が何を意味するのかは、今となっては知るすべがない。
弁財は死んでしまい、話す口を持たないからだ。
その後、俺は気絶してしまい。七ヶ崎の手配で、このホテルに運ばれ今に至るらしい。
結局、俺は冬司の仇を討つこともなく、生き延びてしまったようだ。
ことの真相を聞き、失意の淵に立つ俺に七ヶ崎は、意外な相談を持ちかけた。
「今日ここに来たのは、君の様子を見に来たのと、もう一つ理由がある。・・・こんな時に話すことではないのかもしれないが、君に私達の仲間になってもらいたい!」
「・・・・・・」
「今すぐに答えは出ないかもしれないが、聞いてほしい」
そう言って、七ヶ崎は説明を始めた。
四百六十三人。
ここ十年間での久慈市における失踪者の数だそうで、公にはされていないが、これ程の人間が理由も解からずに行方不明になっている。
公にされていないのには、二つ理由がある。
一つは、極端な人口の増加によるものだろう。
久慈市は、アグニの支店ができたことに伴い急速に発展してきた街だ。あらゆる人間が、この久慈市に移り住むようになり、やがて人々は周りに対しての関心を失ってしまったからだと言う。
確かに、極端な話だが、現代社会においては一概に疑問を持つことができない。
例えば、隣りの家に誰が住んでいて、何をしているのか知らない人も多いと思う。
昔ほど、ご近所付き合いがおこなわれなくなった現代だからこそ、人は周りに対して興味を持っていない。さらに言えば、これだけ急速に発展した街なので、当然のように人の出入りは激しい。
そのことが、さらなる加速を生んだのだろう。
二つ目は、失踪事件の裏にいる大きな黒幕の存在だ。
とは言え、これだけの人が失踪していることを考えれば、当然報道されてもおかしくないだろう。
しかし、久慈市ではそういって報道されていない。
警察が動いていないわけではないだろうが、何者かによって隠ぺいされている可能性がある。
つまりは、そこまで大きな力を持っている者が、この事件の裏にいる。
七ヶ崎はそう説明した。
つまり、昨日の事件には、その失踪事件が絡んでいると考えているようだ。
馬鹿げた話だと正直に思ったが、実際に巻き込まれた俺としても、あながちそうとは言い切れない。
しかし、その失踪事件を、一高校生である七ヶ崎が調べている理由はなんなのか?
その疑問を、直接本人にぶつけてみた。
「それで、お前はなんで、この失踪事件を追っているんだ?」
「それは、この街が好きだからだ」
そう言って、七ヶ崎は曇りのない目で語り出した。
「私は、この街で生まれ育った。そんな街で、こんな訳の解からない失踪事件が起きていることを、見逃すわけにはいかない。いや、私の正義が許さないのだ!」
その言葉は、少し芝居がかっているように感じたが、七ヶ崎の真剣な表情が嘘のようには思えなかった。
七ヶ崎にとっての正義。
それが、この事件を追う理由だということらしい。
ところで、と枕にして、七ヶ崎が言う。
「君のことについては、色々と調べさせてもらった。随分と苦労をしてきたようだな・・・何でも屋。こうしよう、私が、君に失踪事件の解決を依頼する。もちろん、お礼はする。君の言い値で構わない、だから協力してくれないかな?」
疑問だった。
なぜここまでして、俺を仲間に引き入れたいのか。
そのことについて、七ヶ崎は言う。
「君は、昨日のことを覚えていないようだから、話をするが、弁財を追い詰めたのは君なのだよ」
「・・・え・・・」
「君は、ギフト能力を無効化するギフトを与えられたのだ」
耳を疑った。
俺が、あの不思議な力を持っていると言うのだ。
「ちょっと待て、俺にもあの不思議な力を持っているってことか?」
「そうだ。しかも、君のギフトは特殊なもので、発見せれていないものだ。その力を貸してほしい」
それが、七ヶ崎が俺を仲間に入れたい理由だった。
あの不思議な力、ギフトを無効化する能力なんて反則もいいところだ。
多分、この事件にはギフトを持つ者、ギフトホルダーが関わっている、俺の能力はそいつらにとって脅威となるだろう。
だからこそ、七ヶ崎は仲間に入れたいのだろう。
少し、時間を置き、俺は、七ヶ崎の依頼を受けることにした。
別に、この失踪事件に興味があるわけでも、七ヶ崎の正義に感銘を受けたからでもない。
これは、復讐する為の近道だと考えたからだ。
冬司は、この失踪事件に巻き込まれて命を落とした。
未来を夢見て、前を向いていた冬司にとって、余りにも無念だったはずだ。
生憎俺には、夢も無ければ未来に対して希望も持っていない。
この言いようのない、イライラを晴らせればそれでいいのだ。
しばらくして「また明日」と言って、七ヶ崎は部屋を出て行った。
こうして、俺は失踪事件を追うことになったのだが、もしかしたら、この選択は間違いだったのかもしれない。
時刻は昨日と同じ二十時十六分。
しかし、昨日と違い冬司はもういない・・・。
そのことに、自然と涙がこぼれた。




