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プロローグA  作者: 一ノ瀬樹一
第壱話 『八久慈区誘拐事件編』
8/10

四月十六日 十八時十分

 四月十六日十八時十分。

 七ヶ崎が、俺の泊まるホテルの一室を訪ねて来た。

 まあ、俺の泊まると言っても、昨夜の記憶がないことと、七ヶ崎がこの部屋に訪れたから察するに、ホテルは七ヶ崎が用意したものであるこは、推測出来た。

 

 しかし、俺が死んだことと、昨夜の後のことについては察しが付かない。

 その辺のことを七ヶ崎に説明してもらった。


 弁財の石の弾丸を受けた後、俺はやはり一度死んだらしい。

 心臓を貫かれらしいので、それは仕方がない。

 人間である以上、心臓を貫かれて生きていたられるわけがない。

 しかし、一分にも満たない時間の後、俺は目覚めて弁財を追い詰めていたらしいが、まったく記憶がない。

 そして、七ヶ崎と俺が追い詰めたことろで、意外な結末を迎えた。


 なんと、弁財は奴の仲間によって殺されたのだ。

 奴を殺した仲間は、こんな言葉を残したそうで、

 「お前の役目は終わった・・・」


 この言葉が何を意味するのかは、今となっては知るすべがない。

 弁財は死んでしまい、話す口を持たないからだ。

 その後、俺は気絶してしまい。七ヶ崎の手配で、このホテルに運ばれ今に至るらしい。

 結局、俺は冬司のかたきを討つこともなく、生き延びてしまったようだ。

 

 ことの真相を聞き、失意の淵に立つ俺に七ヶ崎は、意外な相談を持ちかけた。


 「今日ここに来たのは、君の様子を見に来たのと、もう一つ理由がある。・・・こんな時に話すことではないのかもしれないが、君に私達の仲間になってもらいたい!」

 「・・・・・・」

 「今すぐに答えは出ないかもしれないが、聞いてほしい」


 そう言って、七ヶ崎は説明を始めた。


 四百六十三人。

 ここ十年間での久慈市における失踪者の数だそうで、公にはされていないが、これ程の人間が理由も解からずに行方不明になっている。

 公にされていないのには、二つ理由がある。

 

 一つは、極端な人口の増加によるものだろう。

 久慈市は、アグニの支店ができたことに伴い急速に発展してきた街だ。あらゆる人間が、この久慈市に移り住むようになり、やがて人々は周りに対しての関心を失ってしまったからだと言う。

 確かに、極端な話だが、現代社会においては一概に疑問を持つことができない。

 例えば、隣りの家に誰が住んでいて、何をしているのか知らない人も多いと思う。

 昔ほど、ご近所付き合いがおこなわれなくなった現代だからこそ、人は周りに対して興味を持っていない。さらに言えば、これだけ急速に発展した街なので、当然のように人の出入りは激しい。

 そのことが、さらなる加速を生んだのだろう。

 

 二つ目は、失踪事件の裏にいる大きな黒幕の存在だ。

 とは言え、これだけの人が失踪していることを考えれば、当然報道されてもおかしくないだろう。

 しかし、久慈市ではそういって報道されていない。

 警察が動いていないわけではないだろうが、何者かによって隠ぺいされている可能性がある。

 つまりは、そこまで大きな力を持っている者が、この事件の裏にいる。


 七ヶ崎はそう説明した。

 つまり、昨日の事件には、その失踪事件が絡んでいると考えているようだ。

 馬鹿げた話だと正直に思ったが、実際に巻き込まれた俺としても、あながちそうとは言い切れない。

 しかし、その失踪事件を、一高校生である七ヶ崎が調べている理由はなんなのか?

 その疑問を、直接本人にぶつけてみた。

 

 「それで、お前はなんで、この失踪事件を追っているんだ?」

 「それは、この街が好きだからだ」


 そう言って、七ヶ崎は曇りのない目で語り出した。

 

 「私は、この街で生まれ育った。そんな街で、こんな訳の解からない失踪事件が起きていることを、見逃すわけにはいかない。いや、私の正義が許さないのだ!」


 その言葉は、少し芝居がかっているように感じたが、七ヶ崎の真剣な表情が嘘のようには思えなかった。

 七ヶ崎にとっての正義。

 それが、この事件を追う理由だということらしい。


 ところで、と枕にして、七ヶ崎が言う。


 「君のことについては、色々と調べさせてもらった。随分と苦労をしてきたようだな・・・何でも屋。こうしよう、私が、君に失踪事件の解決を依頼する。もちろん、お礼はする。君の言い値で構わない、だから協力してくれないかな?」

 

 疑問だった。

 なぜここまでして、俺を仲間に引き入れたいのか。

 そのことについて、七ヶ崎は言う。

 

 「君は、昨日のことを覚えていないようだから、話をするが、弁財を追い詰めたのは君なのだよ」

 「・・・え・・・」

 「君は、ギフト能力を無効化するギフトを与えられたのだ」

 

 耳を疑った。

 俺が、あの不思議な力を持っていると言うのだ。

 

 「ちょっと待て、俺にもあの不思議な力を持っているってことか?」

 「そうだ。しかも、君のギフトは特殊なもので、発見せれていないものだ。その力を貸してほしい」


 それが、七ヶ崎が俺を仲間に入れたい理由だった。

 あの不思議な力、ギフトを無効化する能力なんて反則もいいところだ。

 多分、この事件にはギフトを持つ者、ギフトホルダーが関わっている、俺の能力はそいつらにとって脅威となるだろう。

 だからこそ、七ヶ崎は仲間に入れたいのだろう。


 少し、時間を置き、俺は、七ヶ崎の依頼を受けることにした。

 

 別に、この失踪事件に興味があるわけでも、七ヶ崎の正義に感銘を受けたからでもない。

 これは、復讐する為の近道だと考えたからだ。

 冬司は、この失踪事件に巻き込まれて命を落とした。

 未来を夢見て、前を向いていた冬司にとって、余りにも無念だったはずだ。

 

 生憎俺には、夢も無ければ未来に対して希望も持っていない。

 この言いようのない、イライラを晴らせればそれでいいのだ。


 しばらくして「また明日」と言って、七ヶ崎は部屋を出て行った。

 こうして、俺は失踪事件を追うことになったのだが、もしかしたら、この選択は間違いだったのかもしれない。


 時刻は昨日と同じ二十時十六分。

 しかし、昨日と違い冬司はもういない・・・。


 そのことに、自然と涙がこぼれた。

 

 

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