彼と彼女の、牽制とアピール。-1-
今回からは新しい話です。が、ちょっと誰得もいいところになってしまいました。
意味不明、読みたくない、このノリじゃねぇよ、と色々な感想が、もしもあるならばお待ちしております。
「ね、きなこは誰が好きなの?」
「まいちゃん、毎回毎回、よく飽きないねぇ。私、まだ好きな人はいないって言ってるのに」
「そーんなこと言ってぇ。かなたくんとか、どうなのよ。いいって言ってたって裏情報が来てるよ?」
「かなたくん? …って、誰?」
「っえぇぇぇ??! きなこ、去年も同じクラスだったし、しょっちゅう隣の席だったじゃん! 覚えてないって?!」
「う、うーん。……隣?」
「…はぁ。マジか。まーじーかー」
「まいちゃん、声が低っ。そ、そんなさぁ、私が気が付いてしかるべき、みたいな人なの? かなたくん」
「んー? いやまぁね、きなこがそんなんだから、かなたくんも気が楽なんだろうねぇ。時々話してたから、てっきり、きなこのほうも脈ありかと」
「ないなー。っていうか誰だろうなぁ、かなたくん」
「おっそろしい勢いでないなぁ。そうかぁ。…じゃ、じゃあさぁ、あんどうくんは? わかる?」
「あんどうくん。…うん。同じ図書委員の人だよね? わかる」
「わ、わかるのかぁ……。あのね、あんどうくんってさ、イケだよね?」
「…………うん?」
「ん? きなこ、あんどうくんは覚えてるんでしょ?」
「覚えてるけど…イケ? ハンサムさんってこと?」
「う、うん。そういう意味、かな」
「っあー。ハンサムさんだね。多分ね。一般的に言えばそうなんじゃない?」
「……なんなの? 投げやり?」
「投げやりっていうか、顔がいいってんならそうだろうなっていう話さ。…まいちゃん、そろそろ本気で理解してよ。私、きっと、まいちゃんとかとハンサムの基準が違うよ?」
「は? いつも言ってるアレって、じゃあ本気なの?」
「ガチだよ。私の好みはまず20代の後半から。じゃないと男の人の顔にならないでしょ?んーで、びっくりするほど草食系、食べてって言っても食べてくれないくらいのヘタレ眼鏡男子。優柔不断で、あと、ちょい太ってるくらいが好き」
「……うーわぁ。っつかそもそも、クラスにいないじゃん。そういうの」
「いない、かなぁ。年は置いとけば、多分きっと、おかべくんとか…いや、その」
「……きな? きなこちゃん? おかべはちょっと…」
「うん? まいちゃん、なに?」
「……や、いいや。きなこがあんどうくん狙いじゃないなら、もういい。いいことにする」
「?…あっ、あ、そう?! そうなんだ!? うわ、すごい、まいちゃんイイね! 青春だね!!」
「青春?! うん、そうか。そうだね!!」
さて始まりましたねコノワタさん。女子高生のリアルを探る! 検証、『私は見た!』の第一回目が!!
僕はコノワタじゃないですけどね、庄野朱里さん。アンタほんと京子会長によく似てますよ。なんでしたっけ、いっこ上の従姉妹になるんでしたっけ?
似てるかな? そう? あんな美人と? へへ。
アンタはかわいいですよ。や、美人はともかく、僕が言ってるのはその見た目との残念なギャップですから! あの先輩ときたら無自覚ハーレムをいつでもどこでも繰り広げてて! 僕が書記のころとかほんっきで面倒だったんですからね?!
コノワタくん、きょーこさんのことになると、わりとスタートダッシュでガチ切れだよね…。普段クールなのにね。……ふふ。
だーかーらー、ち が い ま す か ら !! くそっ、そっち方向にだけ発揮される鈍感さは遺伝か?!
じゃなくてコノワタくん、あのね、今回こうやって二人で会話するのは、
むしろ鈍感さの意味を聞いて欲しいですよね?! ……はぁ。……ええ、知ってますよ。女子高校生と男子高校生の本音と建前のギャップを探る、んでしょう? あぁもう、誰がこんな企画だしやがったんだって。
おお、口が悪くなってる。やだー、コノワタくんこわーい。
茶化して落とそうったってダメです! コノワタくんって僕のこと呼んでる時点でアウトですから! 河野渉、こうのわたるですよ! 朱里さん!
政治家みたいだよコノワタくん。あかりさん呼びはうれしいけど。
……うれしいとかさらりと言ってるし。ねぇ、どうしてアンタ、これで僕の気持ちが伝わってないって事態なんですか? どうして女子高生の会話とか、盗聴まがいに聞いてまで突っ込まなくちゃいけないんですか……?
うーん。なんかね、京子さんの弟であるとっしーと、その彼女さんが、私に『女子力と恋愛力を上げろ』ってこのミッションをくれたのね。つまり、女の子側の気持ちとか行動の解説を私が入れるから、そのあたりの……なんて言えばいいのかな、当確判定っていうのかな、本当に私の推測があってるかを解説してもらってほしいんだって。そんで相手として白羽の矢が立ったのがコノワタ君ね。同じ学校を出てるし、京子さんのあと私が生徒会長をしてた時にすっごくいい子だった君ならきっと、呆れもせずに男の子側を説明してくれるんじゃないかって。面倒だろうけど。
…………つまり、この事態はアイツのせいだと。余計な世話だと。
んー? 余計な世話かまでは知らないよ? けど、少なくともあの女の子たちの話は私にはまったく意味がわかんないから。学習する意味が……ねぇ、これだけ年が離れてても、あるんだと思う?
は?! あんな、年なんて全く関係なさそうな、わかりやっすい牽制のどこがわかんないんですか?!
牽制? してた? っていうか、どっちがターゲットとして本命の女の子なの?
ターゲット呼ばわりまでするんですか?! アンタ、ガチでミッション扱いしてません?
っえー。コノワタくんったら理解してほしいな。ミッションとまで言われなきゃどうして私が貴重な休みをつぶしてまでこんなとこにいるのよ。
おっと。こんなとこって、ずいぶんな言い草ですね? 少なくとも僕は、会社帰りの時間も、きっとこれからつぶされる貴重な休みも、朱里さんと一緒なら楽しみだったんですけど?
……っあ、ごめ、ごめんなさい、コノワタくんっっ。そんなつもりじゃ、ええーと、その。
…………言い訳をしないところもよく似てますよね。『そんなつもりじゃないのに、そんな結果になったんなら、なお悪い』でしたっけ。
う。……コノワタくん、京子さんの口癖まで知ってるんだ。ほんと、仲がいいなぁ。
もう何年もあっていない先輩と、仲がいいわけないでしょう? 会ってる時間でいうなら朱里さんの方が、もっと。
京子さんに会いたいなぁ。
落 ち が そ こ で す か !!
うう。でも会いたいよ。
……なんですかね。なんでこの展開で僕が会長に敗北感を覚えるわけですか。…………あの彼女たちはね、朱里さん。少なくともまいちゃんのほうは『あんどうくん』が好きなんです。
う? ……うん。
で、『かなたくん』が誰かはイマイチですが、なんとなく彼は、きなこちゃんを意識してる。
……う?
きなこちゃんは図書委員、どうやら滅多に男の子を意識しないであろう彼女が珍しく認識してるあんどうくんも図書委員。まいちゃんとしてはあんどうくんが好きだから、せめてきなこちゃんを意識してるかなたくんを近づけようにも、きなこちゃんはかなたくんを意識してない。
そ、……相関図、描いていい?
だから、たったこれだけの会話から推測できるほど鈍そうなきなこちゃんに、まいちゃんは直接、釘を刺したんでしょうね。『あんどうくんは私が狙ってるから。応援してね?』…ふむ、実に女の子らしい牽制の仕方です。……というか、僕はおかべくんが見たいかも。好みを聞いてまいちゃんが止めたってことは、きなこちゃんが思ってるより草食系でもいい人でもないんでしょうね。
そんな人、会話に出てた?! 相関図のどこ?!
……相関図の、どこに描き入れるかはまだこれからでしょう。ちなみに僕とあかりさんの相関図は、僕の希望としてはごくシンプルに、二人しかいない図が希望です。ええ、切実に。
せつじつにー。
…………アンタ、人の言った単語をうわの空で繰り返しつつ集中する癖、止めてもらえませんかね?! っげ、しかも相関図がこの時点でカオス!!
えー? カオス?
まだ出てきてないあの子たちの家族は相関図に入れちゃダメです! 担任がなぜ入る?!
んんんんん。そうかんず。
……あかりさん、今日はもうこれでおしまいにしてケーキ食べましょうか。相関図は僕が今度、描いてきますから。ね?
…………おごっていい?
……っはぁ。いいでしょう。や、っつか、マジでアンタたち、意味ないところで勘がいいです。得意不得意をフォローできるから僕たちがペアなんでしょうに。相関図ごときでケーキおごってもらうほど苦労しません……や、えっと。
……私の得意分野ってなんだろうね、コノワタくん。
け、けーき半分こしましょうか。あかりさん。
う? ……うん!!
こんなノリです。理解できますでしょうか。