属性と凶悪モンスター
「ちょっ・・・荒れ地の開拓ってどういうことですか!」
「というかそれ俺らがやる意味あんのか?」
「村おこしにこの服ってなんか関係あるんですか!?」
突然の女王様からの開拓宣言に、まどかちゃん、颯介、ピリアーからの質問攻めが始まった。さすがの女王様も、これには苦笑していた。
「お、落ち着いてください、順を追って1つずつ説明いたします。」
「「「・・・・・。」」」
3人は落ち着き、話を聞く体制に入った。
「まずマドカさんからの質問ですが・・・この国は、これといって栄えた町がないのです。おかげで何も貿易をできず、経済状況が苦しい状態にあるのです。なので、新しく栄えた町を作る、つまり、経済特区みたいな場所を作るんです。」
「それなら、1つの街を栄えさせたほうがいいのでは?」
「それではほかの街に不平等となってしまいます。それに、すべての街を栄えさせるのにはかなりのお金がいるんです・・・。」
「そ、そうなんですか・・・。」
まどかはなんとか納得したようだ。
「次にソウスケさんの質問ですが、私がこのゲームをプレイしている方々を見たところ、あなたたちの団結力が一番高かったのです。開拓に団結は必要なこと。なので、あなたたち選びました。」
「それは褒めてる・・・ってとらえていいんだよな。」
そうして、颯介も納得した。
「最後にピリアーさんの質問ですが・・・今あなたたちが来ている服には魔力が備わっています。人によって属性は違うんですよ。」
「じゃあ、どんな属性が?」
「この世界の属性は7つ、回復と、増幅と、攻撃と、防御と、移動と、創造、そして・・・破壊。破壊は、本来封印されているはずの禁断の属性なんです。」
「7つそろえば・・・神に等しい力になるかもしれないって感じですね・・・。」
「メグさん、お察しの通りです。・・・それと、あなたたちの属性は、今私が授けます。」
女王様は立ち上がり、まずあたしの目の前に来た。そしてあたしの胸にに手をかざした。
『あなたに授けるべき属性は・・・回復。』
そう告げられた瞬間、女王様からあたしの胸の間に一筋の赤い光が伸びた。光が消えると、花の形のペンダントが現れ、首にかかった。
次に女王様は、芽紅のところに行った。さっきと同じ手順で、属性を授ける。
『あなたに授けるべき属性は・・・増幅。』
芽紅は、太陽の形のペンダントの様だ。それからは、まどかちゃん、颯介、ピリアーの順で、属性が与えられる。
『・・・攻撃。』
まどかちゃんは、雷の形のペンダント。
『・・・防御。』
颯介は、葉っぱの形のペンダント。
『・・・移動。』
ピリアーは、しずくの形のペンダント。
『・・・創造。』
そして羽矢斗くんは、雲の形のペンダントだった。
「これで皆さんと私の契約が終了しました。」
「は?契約とかいみわ」
「では、よろしくお願いしますっ!『シャインリング・ワープ』!!」
颯介の言葉を遮るように、女王様が呪文を唱える。そして私たちの足元から光の輪が現れ、そこに落っこちた。ある意味、説明がめんどくさくなったのかな、強制的に飛ばされた気がする。
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あたしたちが飛ばされたのは、本当に何もないところだった。
「本当に・・・荒れ地の名がふさわしいですね・・・。」
芽紅が苦笑いを浮かべながら言った。
「とりあえず、状況整理っすね。」
「まず俺たちは、女王によってゲームの中に取り込まれた。」
「それで女王様からここの開拓をお願いされたんですよね?」
「その時に僕たちがそれぞれの属性を与えられて飛ばされて、今に至るってわけだね。」
「そしてあたしたちが今置かれている状況は、絶体絶命大ピンチ。」
なんでそんなこと言ったかって?だって、ちょっと先くらいに3体の得体のしれない化け物があたしたちのほうを見てるから。おそらく、あたしたちを狙っているんだろう。
「これ、見たことあるよ・・・ゲームに出てくるモンスターだ。」
ピリアーが言った。
「ピリアー、それ本当?」
「うん、僕の記憶が正しかったら、こいつがいるのはただ1か所、迷宮砂漠。そしてそこには凶悪モンスターしかいないってことだよっ!!」
「大至急逃げろー!!!」
「「「「「ぎゃあああああああああああ!!!」」」」」
あたしたちは全力疾走を始めた。駆けだすと同時に、化け物も追いかけ始める。
「明菜先輩!これ私たちも女王様みたいに魔法とか使えないんですか!?」
「使えるはずだけど!聞いてないってか教えてもらってない!!」
『今お教えします!!』
「この声は・・・女王様!?」
全員息を切らしながら、女王様の声に耳を傾ける。
『まずソウスケさん!『ボア』と大声で唱えてください!!』
「はぁ!?なんでそんなこと」
『いいから早く!!』
「ボ、『ボア』!!」
颯介が唱えると、あたしたちと化け物の間に大きなガラスのような壁ができた。それを確認すると、あたしたちは足を止めた。
「た、助かったんですか・・・?」
『いえ、いずれは壊されます。マドカさん!壁が崩れた瞬間、『サンダーアロー』って唱えてください!芽紅さんはその直後に『アップ・レィド』と唱えてください!』
「「わかりました!!」」
2人が声をそろえて返事をしたとき、壁が化け物によって壊された。
『いまです!!』
「『サンダーアロー』!!」
「『アップ・レィド』!!」
まどかちゃんが呪文を唱えると光の矢が数十本出てきて、芽紅が唱えるとその矢の数が増え、化け物に向かっていく。
化け物たちはその矢をまともにくらい、すさまじい咆哮とともに絶命した。
「た・・・助かったぁー。」
よほど緊張したのか、まどかちゃんはその場に座り込んでしまった。
『お疲れ様です。明菜さん、皆さんとあなた自身の体力を『ラップ・リラーウ』と唱えて回復してください。』
「了解!『ラップ・リラーウ』!」
唱えた瞬間、私たちを赤くて優しい光が包み込み、どんどん疲れが取れていった。
「すごい・・・これが魔法なんだ・・・!」
『そうです、それがあなたたちが使える魔法です。ピリアーさんとハヤトさんの魔法については使うときになったらご説明しますね。じゃあピリアーさん、その化け物は『ワープ』でこっちに転送してください。』
「わかりました。『ワープ』。」
すると、さっきまでのたばっていた化け物はこつぜんと姿を消した。
「俺だけ魔法使ってない・・・。」
若干羽矢斗くんがショックを受けている。
『あとでハヤトさんは『スモーク』といって建物か何かを創造してください。・・・まだ経験がないので、創れるものは限られてきますが・・・。」
「了解です!!」
俺の出番だとばかりに張り切った声を上げた羽矢斗くんは『スモーク』と唱え、少しボロだが6人生活できるくらいの家を創った。
そのあとは夕飯・・・といきたかったのだが、あまりに過酷な1日だったため、速攻で全員眠りについた。
こうして、私たちの不思議な体験は始まったのである。