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ゲームの世界で村おこし!  作者: 奈乃ありす(元Nano)
第4章 HAPPY ENDへ!
20/20

反撃開始

『……無様だな』


誰もいなくなった部屋に、カーリーの低い声だけが響く。


「皆……」


今、1人の少女がその地に降り立った。 少女は周りを見渡す。 あるのは……死んでいった仲間たちの亡骸。


「時を破壊すればこんなの簡単にできる、けど……」


まだ未熟な彼女には、時を操ることはできない。 今まではカーリーがいたからできたのだ。


「ならば自分ができる魔法で精一杯戦うのみ」


少女は決意を固め、にやりと笑う。


その少女の名は、山口愛加。


----------


愛加……戦ってる。 あたし達6人がかりでかかっても倒せなかった相手に。 やっぱり、愛加に成りすましていたカーリーなんかとは姿が違う。


瞳だって彼奴より澄んでいるし、何よりオーラっていうのかな、それが違う。


ゴメンね愛加。 私は愛加の約束を破った最低のやつなのに、仇だといって彼奴と全力で戦ってくれている。


あたしは死んじゃったからこうやって見ていることしかできない……。 やっぱりあたしは愛加に何もできないの……!?


『そんなことはないです』


その声は……女王様?


『明菜さんの魔法を使えば、皆さんの力を集めて愛加さんに送れます。 それを芽紅さんの魔法で増幅させれば、彼奴に勝てるかもしれません』


本当……ですか!?


『しかし、これは危険な賭け。 失敗すれば皆さんも愛加さんも死んでしまいます』


愛加にまで被害が及ぶ可能性があるのか……。 でも、可能性があるならやるしかない。 集めるだけ集めて、愛加にどうするか聞こう。


『それでいいのですね?』


勿論……あたしは、どれだけ犠牲になったって構わない。 発端はあたしなんだから、あたしがけりをつける。


「私たちも、でしょう?」


-----------


気が付くと、私はさっきの部屋に立っていた。 ふと足元を見ると、私の死体が転がっている。 そうか、私カーリーに殺されて……。 ああ、私の死体はなんて無残なんだろうな、なんて考える。


前方に目をやると、愛加とカーリーが戦っている。 ……え!? 愛加!? どうしてカーリーから出てきているの!?


いや、今はそんなのはどうでもいい。 愛加……。


「皆を傷つけた仇……とらせてもらうから!!」


死んでしまった私は、何もすることができない。


愛加、どうして? 私たちは一度とはいえ、あなたを敵視していたんだよ? なのにどうして助けてくれるの……私は……本当に何もできないの?


『------皆さんの力を送れます。 そうすれば、彼奴に勝てるかもしれません』


この声は……女王様? 後ろのほうから聞こえてくる……。 確か私の後ろは明菜と女王様が死んだところのはず。 てことはまさか……。 淡い期待と共に、私は後ろを振り向く。


思った通り……女王様の話し相手は明菜だった。 一瞬、生きているのかと思ったけど、明菜の近くにある明菜の体をみて、すぐに死んでいるのだと分かった。


『しかしこれは危険な賭け。 失敗すれば皆さんも愛加さんも死にます』


僅かだが聞こえる話し声。 きっと女王様がわざと皆に聞こえるように仕向けているのだろう。 この距離で聞こえるはずがないもの。


「勿論……私はどれだけ犠牲になろうが構わない」


明菜は……決意を固めていた。


「芽紅先輩!」


横から聞こえてきた、まどかちゃんの声。 安心感を覚えた。


「先輩……今の話聞きましたか?」


「もちろん。 まどかちゃんは……どうするの?」


「そんなの、答えは既に決まってるじゃないですか」


まどかちゃんは私に向かって、ニコッとはにかんだ。 私もこくりとうなずいた後、少し遠くにいる明菜に大声で言った。


「私たちも、でしょう?」


----------


ものすごい轟音と共に意識を取り戻す。 私……死んだんだよね? じゃあここは天国かあの世? なんて考えは戦っている愛加先輩とカーリーの姿を見て覆された。


「カーリー、一つだけ言っておくよ。 皆は……無様なんかじゃないから!」


そんな愛加先輩を見て、私は後悔した。 どうしてもっと早く愛加先輩の気持ちに気付けなかったのか。


正直、愛加先輩のことは苦手だった。 話に混ざってこようとしないし、大人しすぎて何を考えているのかわからない。 そう思っていた。


けど本当は全然違う。 あの態度も心の闇があったからで、本当は私たちをずっと好きだったって、今になって気づいた。


会いたい、話したい。 そして謝りたい。 けれどそれは過ぎた願い。 死んでしまった今、私は償うことも、今愛加先輩を助けることもできない。


何が仲間だ。 先輩1人助けられないで、何が……っ!!


『------えば、皆さんの力を送れます。 そうすれば、彼奴に勝てるかもしれません』


ななめ後方から声が聞こえたのは、そんな時だった。 この声は……女王様かな? そう思って後ろを振り返った。


でも、女王様だけじゃなかった。 明菜先輩までいるのだ。 生きている……わけないか。


『しかしこれは危険な賭け。 失敗すれば皆さんも愛加さんも死んでしまいます』


なるほど……。 まとめると、危険だけど状況を変えられる方法があるってことか。 それも、皆の力を使うことによって。


「私は、どれだけ犠牲になっても構わない」


やっぱり、明菜先輩ならそういうと思った。 けど、「私は」ってどういうことですか? 一人で背負う気ですか? そんなこと……させませんよ?


横から人の気配を感じた。 その方向に顔を向けると、芽紅先輩がいた。 私は決意を固め、芽紅先輩の元へ駆け出した。


「芽紅先輩!!」


-----------


俺は最初に死んだ。 だから、全員の死を見てしまった。


芽紅とまどかがカーリーにかかっていって吹き飛ばされたところ、羽矢斗が背後から攻撃されたところ、ピリアーが消滅したところ、女王が脳天ぶち抜かれたところ、そして……明菜が心臓を貫かれたところ。


元はと言えば、俺がもっと強力なバリアを張っていればよかったんだ。 あれが壊されることがなければ、皆死ななかったのかもしれない。


俺は……なんて無力なんだろうか。


『……無様だな』


カーリーのその一言が重く、確実に俺にのしかかる。 このまま……終わってしまうのだろうか。


「皆……」


その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。 それは明菜でも、他のやつらでもない。 1か月ぶりに聞いた声。


愛加。


彼奴は俺たちを見ると、何かを決意したようにカーリーに攻撃を始めた。


「もう、お前の自由には絶対させない。 皆は私が助ける!」


……は? あいつ馬鹿か? 俺たちはここにいる間、ずっとお前と対立してたし、なによりお前が俺たちに距離感じてたろ……。


くそっ! 俺……何もできないのか?


『------使えば、皆さんの力を送れます。 そうすれば彼奴に勝てるかもしれません』


一筋の希望といったところだろうか。 少し遠くから声がする。 この声は……女王か?


耳を澄まして話を聞いてみると、近くに明菜もいることがわかった。 どうやら明菜の力を使えば彼奴に勝てるかもしれないらしい。 危険な賭けだが。


「私は、どれだけ犠牲になったって構わない」


やっぱりな……明菜ならそういうと思った。 けど、お前だけに背負わせるわけないだろ。


俺は覚悟を決めた。


----------


俺……馬鹿すぎるだろ。


まどかがあいつに殺されて、それが許せなくて逆上して、先輩の言うことも聞かずに1人で立ち向かって……。


結局なんの役にも立ててないじゃないか。 まどかだって守れなかった、俺はあいつの彼氏なのに。 彼奴にも勝てなくて、弱くて。


そんな時、明菜先輩と女王の会話を聞いた。 


-明菜先輩の力を使ってみんなの力を集めれば、彼奴を倒せるかもしれない-


それを聞いたときは、本当にうれしかった。 無敵と思われた彼奴に勝てるかもしれない。 まどかの仇を取れるかもしれないと。


しかし、代償に課せられたのは、消滅するかもしれないというリスク。


消滅……どうなるのかな。 やっぱり消えてしまうんだろう。


コワイ。


嫌だ、消えたくない。 消えたらなくなってしまう。 怖い。 どうなるかわからない。


「何言ってんだよ」


……颯介先輩!? どうしてここに?


「どうしたもなにもねえよ、お前そんなもんだったのかよ」


そんなもんって……どういうことですか?


「自分でまどかの彼氏って言い張ったんなら、最後まで守り抜けばいいんじゃねえのか? 少しでも助かる望みがあるなら、それにかけようって思わないのかよ?」


まどかの……彼氏。 俺が。


「俺だったらそうするな。 助かる可能性を何もしないうちに捨てはしたくない。 大事な人が助かるなら俺は消えたってかまわない。 彼氏って言い張るんならそのくらいの覚悟で行けよ」


……そうだ、俺は大事な人を守らなければいけない。 そのためにも……俺はやる。


----------


愛加さんもこんな気持ちだったんですね。


仲間を襲いたくないのに、体が勝手に動くこの感覚。 この体自体は僕のものではないけど、そんな感覚がする。


いい気分ではない。 いや、むしろこんな感覚早く捨ててしまいたい。


このまま感覚を閉ざしてしまえば楽になれるだろうか……。 でも、そんなことしたらこいつはさらに強くなって、愛加さんが死んでしまう。


だから……僕は自我を保ち続けなければ。


さっきから聞こえる、皆の声。 どうやら反撃の準備をしているらしい。


……僕にも聞こえる!? じゃあ、こいつにもきこえているんじゃないのか!?


だとしたら危ない……! みんな気を付けてくれっ!!


----------


それぞれが、それぞれの思いを馳せる。


故に、全員が決意を固めた。


今……軽音同好会の仲間が、反撃を始める。


勝利を信じて。





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