音楽室前のある風景
それは、ある日曜日のことだった。その日は軽音同好会の活動日。しかし・・・。
「音楽室・・・まさかの工事中!?」
会長である黒瀬明菜、つまりあたしが鍵を開けるためにみんなより先に音楽室についたんだけど・・・どうやら昨日あたりから工事が始まっていたようだ。
「「おはようございます、明菜先輩!」」
後ろから聞こえた2つの明るい声。後輩の関口まどかちゃんと、阿部羽矢斗くんだ。
「あ、おはよう。今日は早いねー。」
「今日は羽矢斗が寝坊しなかったので早くこれたんです!」
ちなみにまどかちゃんと羽矢斗くんは付き合ってるので、行き帰りはいつもいっしょなのだ。リア充・・・うらやましいな。
「羽矢斗くんが寝坊しないなんて、今日は雨でも降るんじゃないかなぁ?」
「あ、明菜先輩・・・!!」
茶化してみたら羽矢斗くんはかなり焦ってしまった。
「ところで明菜先輩、音楽室の前で一体何をしてたんですか?」
「えーとね、音楽室が工事中だったの・・・。」
「えぇ!?今日は活動できないじゃないですかっ!!」
「そうなっちゃうね・・・まぁこうなっちゃったことだし、ピリアーの家でゲームでもしない?」
「「大賛成です!!」」
2人が声をそろえて答えた時だった。
「なんで僕の家が勝手に遊び場になっちゃってるんですか?」
「てか、今日は学校にすら来ない日じゃねぇの?」
「そうですよ、明菜ちゃん日程間違えてませんか?」
残りの同好会メンバーの3人が来た。横尾芽紅、藤巻ピリアー、瀬尾颯介だ。
「だってピリアーの家おっきいし、ゲームいっぱいあるじゃん!てか、日程間違えてるってどういうこと?」
「そうですけど、こっちの都合というものが・・・まぁ、今日は両親もいませんし、大丈夫ですけどね。」
「日程間違ってるっつーのは、今日は日曜で部活ないし、それに今は愛加の件で」
「颯太くん!」
「あ・・・わりぃ。」
「・・・・・。」
山口愛加。軽音同好会のもう1人のメンバー。彼女は私の幼馴染で、すごく仲が良かった。
でも・・・愛加は1ヶ月前に行方不明になった。部活が終わったあと足早に帰った彼女は、そのままいなくなってしまったのだ。
当時の私はかなりショックで、1週間くらい立ち直れなかった。そのあとはみんなの支えもあって笑顔で待とうって結論に達したんだ。
「大丈夫だよ芽紅、颯介。きっと愛加は帰ってくるし!だからピリアーの家でゲームしよう!!」
「いや、だからなんで僕の家っていう結論に達するんですか!」
そういって、皆で笑いあった。
でもまさか、あんなことになるなんて・・・・・。