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ゲームの世界で村おこし!  作者: 奈乃ありす(元Nano)
第4章 HAPPY ENDへ!
17/20

新たな目覚め

「ピリアー!こっちの譜面できたよ!」


「こっちもできましたが、もう夜が明けてしまいましたね」


「大丈夫、こんな時のための回復魔法だよ。『ラップ・リラーヴ』!」


あれから、あたしたちは大急ぎで譜面を作り上げた。 ところどころあたしは度忘れしたけど、ピリアーの並外れた記憶力のおかげですべての楽器のパートの譜面が出来上がった。


「いくら魔法にかかっているとはいえ、譜面を忘れたら相当なあほだと思うね」


「それもそうですね、これはさすがに思い出してもらわないと僕も縁を切りますよ」


休憩がてら雑談をしていると、ノック音が鳴り響いた。 ドアが開くと、メイドさんが朝食を持ってきてくれた。


「お疲れ様です。 朝食をご用意したので召し上がってください」


「ただでさえご迷惑をかけてるのに朝食までありがとうございます」


「こちらこそご迷惑をおかけしていますからね、これくらい当然ですよ」


朝食を並び終えたメイドさんが顔を上げた。 その姿に、あたしたちは驚いてしまった。


「え、あなた…ミル!?」


そう、ミルにそっくり。 というか、ミルそのものだったのだ。


「どうして私の名を知っているんですか!?」


ミル自身も驚いているようだった。 まさかミルが実在していたなんて。


「いや、同じ顔で同じ名前の人をこの町で見かけたもので、つい」


「そうでしたか。 世界には似た人が3人はいるといいますが、本当なんですね」


そういってミルは、ニコッと笑った。 愛加が成りすましていたミルとは雰囲気が違ったことで、このミルはあたしたちが見たミルとは違うんだということが頭の中で確立した。


「では、私は失礼します」


ミルはそのまま部屋を出て行った。 丁度お腹がすいていたところだったので、そのまま朝食をとることにした。


「わ、このパン甘くておいしい!」


「さすが王宮の料理ですね、何もかも一味違うような気がしますよ」


おいしい朝ごはんをたっぷりと食べ終えたあたしは、歌詞が書いてある譜面に目を通した。


「さて、あたしは歌の練習をしないと」


「もうですか? 少し休んだほうがいいんじゃないんですか?」


「そうしたいところだけど、ボーカルがちゃんとしなきゃ折角皆がいい演奏をしてくれても台無しになっちゃうからね」


あたしは席を立ち、窓辺に向かった。 大きくお腹から息を吸い込んで…優しくはきだし、音をのせる。 この音で、皆がもとに戻るように思いを込めて………


----------


そして、あっという間に2日が過ぎた。 今あたしの目の前には、颯介と芽紅とまどかちゃんと羽矢斗君がいる。


「…今更何の用だよ、俺たちは早く元の世界に戻りたいんだ。 どんな犠牲を払ってまでも」


「犠牲?」


「一人が現実世界に戻るには一人がゲームの世界に一生取り込まれなければならないんです」


「だから女王様は、禁断魔法って言ってたんですね」


「この国の制度で死刑囚となったものを取り込ませているのですが、私はあんまりそういうことはしたくないんです…」


あたしは一瞬怖気づいたけど、ピリアーがぽんっと背中を押してくれた。 それで伝えてくれている。 「いけるよ」って。 勇気をもって前に進む。


「皆変わっちゃったなあ、命をもって自分が助かりたいなんて考える人じゃなかったのにさ」


そういいながら、あたしは颯介にギターを渡した。


「何の真似だよ」


「いいから!ほら、羽矢斗君はドラム、まどかちゃんはキーボード、芽紅もギター、ピリアーはベース!」


次々と楽器を渡したあと、ピリアーと徹夜で作り上げた譜面も渡した。


「使い方と譜面の読み方くらいはわかるよね? じゃあ羽矢斗君、その譜面通りにドラム叩いてくれる?」


羽矢斗君は無言ながらもバチを手に持ち、叩き始めた。


------♪ドンッドドンドンッジャァーン


「じゃあ次はまどかちゃん!」


「わ、わかりました…」


------♪ジャジャッジャジャジャッジャァーン


「芽紅も!」


「…」


------♪キュイーンジャラララララララ


「じゃあ颯介!」


「っ…」


------♪ジャラララララキュイーン


「最後はピリアー!」


------♪ジャンジャンジャッジャジャンジャン


「どう皆、何の音楽が分かった?」


「わかるはずないっすよ、こんなばらばらで」


「だよね、じゃあ今度は皆でテンポ合わせて!せーのっ!」


------♪♪♪♪♪♪♪♪♪


皆で合わせてできた音楽。 音と音とが重なり合って、美しいメロディーが出来上がった。


「これ、どこかで聞いたことが…」


「!!」


あたしとピリアーはアイコンタクトで確認した。 皆徐々に思い出していってるということを。


「じゃあ本番行くよ、あたしも歌うから」


一瞬の静寂が訪れる。


「ワンツーワンツースリィーフォー」


ぴりあーのカウントで、イントロが始まった。あたしは練習の時みたいにお腹から大きく息を吸い…優しく吐き出した。そして…歌う



♪君が笑って僕も笑う 夕暮れの帰り道は

1つしかない 冒険の1ページなんだ

RPGのようにファンタジーとはいかないけど 

僕らはそれくらい冒険を重ねて 突き進む!

辛くて 苦しくて だめだと思ったとき

大丈夫 僕がいるよ

敵も味方もない僕らのGAME

青春RPG ENDINGはない!


♪ケンカしちゃって気まずくなった 夕暮れの帰り道は

ひとつしかない仲直りの魔法 けど中々使えない><

RPGのようにモンスターは出ないけど

君とのケンカはモンスターのように 心を蝕むんだ

言いたくて 言えなくて だめだと思ったとき

大丈夫 それで変われるよ

敵も味方もない僕らのGAME

最強の魔法 それは「ゴメンネ」


♪辛いな 楽しいな どっちつかずの僕ら

それでもこのゲーム 皆でやれば楽しいよ!

敵も味方もない僕らのGAME

青春RPG 仲間と共に



…歌が終わり、演奏も終わった。


「…皆、今の演奏すごい良かったよね!」


あたしが後ろを振り向くと、皆は茫然と立ち尽くしていた。 


「…まだ誰も思い出さないの?」


やっぱり駄目だったか…そう思った時だった。


「…青春RPG」


「えっ!?」


「これ、青春RPGだよね、明菜?」


「…思い出したの?芽紅!」


あたしはあわてて芽紅のもとに駆け寄り、下から顔を覗き込んだ。すると、 一滴の雫が落ちてきた。 それから一滴、また一滴。 これは、芽紅が流している涙だ。


「これ…あたしたちが最初に作った曲…っうわあああああああ!!」


芽紅は声を上げて泣きながら、あたしに抱き着いてきた。


「ゴメン、ゴメンね明菜ちゃん。 明菜ちゃんを見捨てて帰ろうとしてたなんて、私・・・っ!」


「芽紅」


「最初にっ立てた約束を…っ!」


芽紅が、目を覚ました。 元に戻ったんだ…


「明菜先輩…私っ…!」


「まどかちゃんも…2人とも、元に戻ったんだ…!」


あたしも、芽紅とまどかちゃんを強く抱きしめ返した。 「おかえり」の、思いを込めて。


「…颯介、羽矢斗!?」


突然ピリアーが大声を出したので、驚いて振り返ってみると、ピリアーが2人を抱きしめて泣いていた。


「よかったよ、2人も元に戻って・・・っ!」


「おいおい、男が泣くなよ…」


「ピリアー先輩すいませんでしたああああ!」


「僕はいいから。 黒瀬さんに…」


ピリアーは2人を抱きしめていた腕を解いた。 そして、2人があたしのほうに歩み寄る。


「明菜…ゴメン、俺、めっちゃ最低なこと言ったな。 …本当にゴメン」


「俺も…明菜先輩にひどいことをッ」


「いいんだよ、2人が元に戻ってくれたなら…皆…っ」


ここまでこらえてきた涙、もうこらえきれなくなった。 あたしも大声で泣いてしまった。


----------


「…だから、ことの発端はあたしなの、ゴメン」


あたしは愛加が失踪する前日のことを話した。 あたしが愛加より萌花を優先したこと、更に約束すら忘れてしまっていたこと、そして、愛加がいじめられていたこと。


「そんな…愛加がいじめられていたなんて」


「これは破壊された記憶の中で知ったことなんだけど、多分これだけは真実だと思うんだ、だから…」


「だからどうしたんだよ」


「颯介!?」


これは…あの世界と似た展開だ。 まさか、颯介…


「明菜が約束を破っちまったのも悪い、俺は約束を破るのが一番嫌いだからな。 けど、愛加は自分の弱さに立ち向かえなくてこの世界に逃げた、それだけのことだ」


「あ…」


そうか…あの世界の颯介が言っていたのも、同じ意味だったのかな。 そう考えると、あたしが勘違いしていたんだ。


「…違う!」


「「「「「「!?」」」」」」


入り口から聞こえた叫び声。


「…ミル!?」



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