Mの存在---ニセモノ---
日も暮れ始めたので明菜たちはそれぞれの活動をやめ、また仮の家としているところへ戻る。朝集まったところにみんな集まっていた。颯介が中心となり、話を進める。
「じゃあ活動報告を俺たちから。俺と羽矢斗は適当な範囲を決めてバリアと偽物の木で壁をつくった。今日はそれで手一杯だったよ。じゃあ次はピリアー。」
名を呼ばれたピリアーはバックから3冊の本と地図とメモを取り出した。
「僕はこのメモに書いてあるところを聞きに行ったところ、この3冊の本を女王様からもらいました。左から属性の本と作物図鑑とモンスター図鑑と地図です。あといくつか作物の種ももらいました。・・・あ、どんな村にするか聞くの忘れてました。明日改めて聞きに行こうと思います。いろいろもらってくるのもやってませんしね。」
「わかった。」
「それと、この砂漠でモンスターの生息に異常が起こっているという報告を受けました。本来ここで生息しないはずのモンスターがなぜか生息しているという現象らしくて・・・。」
「その原因ならなんとなくだけど推測できました。」
芽紅が眼鏡を付けて話を始める。
「活動報告も兼ねますね。私たちはモンスターを3体倒し、そのモンスターたちの集まっている場所、つまりオアシーの森を見つけました。その時に犯人らしき人も見つけたの。おそらくその人が発端なんだと思うの。」
「その人物っていうのはどんな奴ですか?」
羽矢斗が身を乗り出して話を求めるが、芽紅とまどかの表情は険しかった。その時に2人が見たのは、報告の間ずっと下を向いて黙っていた明菜だった。その様子から察したのか、羽矢斗の顔は少し青ざめる。
「まさか、その犯人らしき人って・・・愛加せ「違うッ!!!」」
それまで黙っていた明菜が、叫び声で訴える。その様子に、全員が静まり返る。
「絶対に違う・・・あれは愛加なんかじゃない、あんな、あんな奴・・・!!」
-----明菜Side-----
「どうしてあなたがここにいるの・・・愛加!!」
モンスターたちからあたしたちを守ってくれた紫の目の少女。その人の顔は、愛加そのものだった。あたしは確信した、この人は愛加だと。
「愛加・・・?愛加なの?」
芽紅が少女に問いかけると、その人はにっこりと笑った。
「久しぶり、皆元気だった?」
その明るい声で言われた一言は、あたしの心を輝かせた。2人があたしになにか言ってるみたいだけど、そんなの聞こえない、あたしは愛加のところまで走り出す。
「あたし、ずっと待ってたんだよ?愛加とまた会える日を、また笑って遊んでいる日を・・・!」
息を切らして愛加のもとにたどり着く。あたしの足元には、さっき息絶えたモンスターたちがいる。
「そう、だったんだ。・・・でも。」
さっきの笑みが消え、冷たい表情になった愛加は手をあたしにむけると、
「『ロック』」
「っ!?」
体の自由が、きかなくなった。まるで地面から生えた根っこに絡まれているかのように。
「「明菜ちゃん/先輩!!」」
後ろは振り向けないけど、2人が駆け寄ってきてくれたようだ。それが分かったのか、愛加は瞬時にあたしの後ろへとまわる。
「『チェイプル』」
愛加がそういった直後、2人が倒れるドサッという音が聞こえた。
「愛加・・・2人に何をしたの?」
身動きのできないあたしは、愛加に問いかける。
「大丈夫、心のバランスを崩しただけだから、すぐにもとに戻るわよ。」
そういってあたしの前に再び現れた愛加は、あたしの知ってる愛加じゃなかった。さっきとは違って冷酷な笑みを浮かべる・・・愛加?本当に?
「・・・私がここに来たのは、あくまで忠告のため。村の開拓を今すぐやめなさい。この要求がのめなければ、私がここにいるモンスターをすべて送り込み、明菜たちを全員抹殺する。」
何を言ってるの、『コレ』は?こんなの、愛加じゃない。誰?あなたは誰?
「大丈夫、明菜ちゃんが私の居場所を壊さなければ、皆には何もしないから。それじゃあ、ね。『アンロック』」
『アレ』とともに倒れていたモンスターたちが消えるとともに、あたしの体も自由になった。2人が心配になって振り向いてみると、体制を崩してはいるが苦しみは内容だった。
「2人とも、大丈夫?」
「はい、やられたときは胸が苦しくてたまらなかったんですが、消えた瞬間にその苦しみが消えました。」
「私も同じ・・・でも、今のって・・・愛加、なのよね?」
愛加?違う、愛加はあんな酷いことしない。友達を裏切って気づつけるような子じゃない。幼馴染だからよくわかる。『アレ』は、愛加なんかじゃない。
「そう、あれは愛加なんかじゃない。絶対に違う。愛加は・・・愛加は・・・。」
・・・あたしの心は、もう壊れる寸前だった。
「明菜ちゃん・・・今日はもう戻ろう?」
その一言で、あたしたちは家路についた。
-----明菜Side終了-----
「そう・・・だったんですか。」
「そうだよ、あれは愛加なんかじゃないんだよ羽矢斗君。わかって・・・くれた?」
明菜の目は、必死にあの人物は愛加ではないと訴えていた。
話が終わったのを見計らい、颯介が話を続ける。
「じゃあその人物は・・・Mとでも言っておこうか。そいつが原因だっていう根拠は?」
「まだ明白ではないけど、あの30体のモンスターを一撃で鎮めたから、そいつらに対して熟知していると思えるの。だから・・・。」
「それではMの件についても明日僕が聞いてきますね。」
「おっけい。じゃあリーダーの明菜もこの調子だし、今日はここまで。」
こうして、また1日が終わった。
次回からまた明菜Sideでいきますねー(^^)