勇者と少女と祝10話
…あれから彼女(?)に必死で説明を続けたが、誘拐だの拉致だのキリがなかったので、とりあえず既に日も沈んでいたので魚を取って見せ、目の前で焼いて食わせた。
焼いてる間もぐちぐちと文句を垂れていたが…。そこは省略させてもらおうか。
「あのですね…、何度言ったらわかるんですか?私は野宿はおろか、直で魚も焼いたこともない。ただの一般人なんですよ?そんな少女に床で寝ろとか、あなた本格的に頭おかしいですよね。脳みそ沸いてますよね。変態ですよね」
…勇者は呼ばれても変態はなかったな。ははは…。
「もういい、わかったからもう寝ろ。」
「…こんな寒い中で地べたで寝ろと?!」
「だから、俺の今着てるローブを布団代わりにとさっきから…「だあああああ!!何勝手に脱ごうとしてるんですか?!変態!変態!」
「はいはい。変態でも何でもいいから口の音量を下げてくれ。頼むから…。」
「仮にも女性でしょう?!そんな簡単に服を脱いじゃあ、そのうち本物の変態に襲われちゃいますよ?!」
「はいはい。肝に銘じときますよ。だから口の音量を下げ「わかってないです!!欠片も、微塵もわかってないです!!いいですか?!幾ら貴方が山に住む変態だとは言え、人前で簡単に服を脱ぐのはただの露出狂となんらかわりません!!そんなんじゃあ折角の美人も台無しですよ?!聞いてますか?!」
「はいはい。わかったからもう寝ろ。いい加減腹立ってきた」
「腹が立つのはこっちですよ!!此処は何処ですか?!貴方は誰ですか?!私は誰ですか?!」
「此処か?森だ。俺か?変態だ。お前か?一般人だ。万事解決だ。さぁ寝ろ」
「なに投げやりな質問に投げやりな回答かましてんですか。万事解決?どこらへんが解決したのか詳しく教えていただきたいですね!!」
…ぶち。
「…強制的に眠らされたくなかったら今すぐ横になって目を瞑り羊を数えろ」
聞く耳もたんとする彼女の姿勢に、ついに堪忍袋がきれてしまった。しかし、彼女はというと…。
「へぇ?!それで現状は解決するんですか?!ふざけるのも大概にしてくださいよ露出狂の変態女!!だから、何度言わせれば気が済むんですか?!私をお家にかえし《ドスッ》━━━」
瞬時に背後に回り込み、手刀を彼女の首元に浴びせた。
手荒い方法はなるべく取りたくなかったが、幾ら説明したところで同じ事の繰り返しだった。
素敵なローブを脱ぎ、彼女の体に被せる。
風邪でも引かれたらたまったもんじゃないからな。
俺には医療の知識なんてないんだから。
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此処が何処なのかもわからない以上、彼女を『日本』という国へ帰す方法はまず皆無に等しい。
いや、仮に正確な位置を把握できていたとしても、俺には転移は使えないし、この森一つ抜け出せない俺にどうしろと?
「…はぁ…どうしたもんか…」
…正直、厄介なモノを抱え込んでしまったと思っている。
自己嫌悪に浸りつつも、これからの事を思うと頭が痛くなる。
俺一人でならどんな化け物が襲い掛かってきたとても自力で何とか出来る自信が多少なりともある。
だが、彼女を守り通せるだけの自信がない。
「しっかりしろ、それでも勇者か…」
望んでなった訳ではないだろう?
人間、生きる為なら時に非情にならなければならない。
こんなお荷物抱えてやっていけると思うか?
「お荷物である事に違いは無いさ。でも、見捨てるなんて選択肢は最初からない」
無駄な思考をさっさと取りやめ、改めて少年の体を観察する。
…しっかし、近くで見ると随分かわいらしい顔をしてるじゃないか。
先程までは言い知れぬ不安と怒りが混ざったような表情だったが、こうして寝顔を見てみると微笑ましい限りだ。
知り合いの女魔術師が好みそうな容姿をしている。美少年、ってやつか?
…中身は少女で、体は少年。
そんな特殊な病をもって生まれた人間もいると聞いたことがある。
だが彼女の場合、本気で自分のことを女だと認識しているようだ。
もしも俺も同じ境遇でなければ、もしも俺の体が男のままだったら、幾ら彼女が自身の事を女だと主張したとしても無視していた自信がある。
まあ今となっては信じるしかないんだがな。
舐め回すように少年の体を観察していき、骨格などは見るとやはり男の物だというのがわかる。
だが所詮これは俺の憶測でしかないし、実際に確認してみるのが手っ取り早いか。
ふと思ったので手を徐々に彼女の股に近づけ…いやいやまて。
これをしてしまうと本物の変態になるぞ。
早まるな、まだそこまでして確認する必要は無いだろう。
自分自身で確かめないと気が済まない。俺の悪い癖だ。
しかし、今の現状を客観的に見てみれば
『全裸の女性が眠っている少年の体に触ろうとしてる図』、じゃないか…。
はは、うはははははは。
これじゃあ彼女の言う本物の変態と変わりないぞ。
あー、もう少しで変態になる所だった。危ない危ない。
俺も久々の会話で興奮していた部分もあったんだろう。
落ち着け、落ち着け。
こんなアホな思考してる場合じゃないだろ。
肝心なのは俺も彼女と同じ境遇という事だ。
目が覚めれば、という表現なら俺も同じだ。
俺自身も肉体が変換してしまった事に関しては疑問が尽きん。
何故俺の体、彼女の体は、性別が反転してしまった?
これをただの偶然、或いは事故だとは非常に考えにくい。
全部聖剣のせいにしていたがどうやら性別に関しては違っていたらしい。
まぁここに飛ばしたのは聖剣に違いないから海には沈めなくとも川には流してやるが。
「…はぁ」
何度目か忘れた溜息をこぼし、目を瞑っている内に、いつの間にか今日という一日が幕を閉じていた。
記念すべき10話という事ですが、まず2ヶ月も放置にしてすんませんでした。
…それもこれも箱○の野郎のせいなんです!!
僕は悪くな…あ、いえ。すんませんでした。
というか正直、もう続きが思い浮かびません。
いや、一応続きは考えてはいるんですが…。
例え書いたとしても凄いgdgdになりそうなんで、更新停止にさせてもらいます。
まぁ所詮素人が書いた小説なんて駄文以外の何者でもないんですがね。
改めて、こんな駄文に付き合ってくれて、ありがとう。でわでわ。




