桜の木の下で
その時は突然やってきたのです。
私とマサルさんは、いつもの様に私の右足で話した後、夜の街を二人、手を繋いで歩いていました。
そして、いつもの公園の脇を通り過ぎようとした時、急にマサルさんは立ち止まり、少し緊張したような顔で私を見たのです。そして私の手を引き、公園の中の大きな葉桜の木の下に立ったのです。
「あのさぁ……オレも違う景色を見てみようって思ったんだ……」
「えっ?」
「……就職活動、ちょっと視野を広げてみようって……」
そう言いながら、マサルさんは私の手を強く握りました。
「こうして二人でいると、目の前の景色が変わって見えるんだ……そんな風に思えたのは、たぶん……いや、きっと、君と出会ったからだと思うんだ……ありがとう」
「……ありがとうだなんて…………あっ!」
マサルさんは優しく、私をフワッと包み込むように抱きしめたのです。
ドキドキドキ……そう、いつものマネキン姿の自分のように固まってしまいました。
「だから……就職が決まったら、正式に付き合ってほしいんだ」
「つ、付き合う?」
「……オレの事、ずっと見ていてくれて、想っていてくれて……すごく嬉しかったから。だから……」
「そ、そんな……私は今のままで幸せです……このままではいけませんか?」
だって……私はこの街から出て行けないから……。
「いけなくはないけど……でも、ほら……前にも言ったけど、水族館や遊園地や……そう、一緒に行きたいところがたくさんあるんだよ……」
「で、でも……」
「ほら、前に話してた水族館、一緒に行こうよ……」
「で、でも……」
「そうだ! 今年はここの公園の桜、見れなかったけど、来年は二人で見れたらいいね!」
「……」
「一緒に……いろんなところへ行っていろんなものを見よう!」
「……一緒に?」
そして……私の目をしっかりと見つめて……。
「君の事が好きなんだ……大好きなんだ!」
マサルさんの告白に、泣きたいくらい嬉しいのに……飛び上がりたいくらい幸せなのに……。
恋する人間の女の子なら、きっとここでハッピーエンドなんでしょうね。
でも、そろそろ魔法が解ける……これ以上一緒にはいられないようです……。




