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ハナちゃん  作者: 志村菫
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二十歳の恋

 私が「意識」を持ち始めたのは、二十歳の頃でした。そう、あの彼氏に振り回されている女子大生の子と同じくらいの年ごろで……。


 最初は、ここから周りの人たちを眺めたり、会話を聞いているだけの巨大マネキン人形でした。でも、ずっと私の足の間を通り抜ける、ある男性を気にするようになり……その彼を想う様になってから、私の何かが変わったのです。少しの間でいいので、彼と同じ目線で歩いたり、喋ったりしたい。ずっとそんな事を望んでいたら、ある日……。


 彼は深夜に酔っぱらって、私の右足の辺りに寝転がっていました。何か辛い事でもあったのでしょうか?

 私は彼の事が心配で心配で、「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」そんなふうに、優しく話しかけたい気持ちでいっぱいになりました。その気持ちが抑えきれなくなった時、私の体は感じた事がないくらい熱くなり……わっと何かが溢れ出しそうになった瞬間、私はいつの間にか彼の横に立っていたのです。

そう……奇跡が起きた瞬間でした。


 そして、すぐ横のガラス戸に映った自分の姿を見つめました。

 肩までの茶髪ストレートヘア、服はその時代に流行っていたキャミソールワンピ。足元はずっと履いてみたかった厚底サンダル。もう興奮してピョンピョン跳ねて、手の甲から掌を何度もくるくる回しながら、喜びのあまり、「きゃーっ」と叫んでしまいました。


「ウソ、声が出る! 私喋ってる! わーっ!」


 彼は私の声に驚いて「朝? 遅刻だ!」と寝ぼけたように起き上り、目の前の私に気づくと、「こんな所で大声出しちゃダメだよ」と注意をしたのです。

 思わず私も、「そちらこそ、こんな所で寝ていちゃダメじゃないですか」と言い返すと、彼は「そうだよね」と急に笑い出して……。

 ああ……素敵な笑顔でした。私は、彼の笑顔をドキドキしながら見つめ、そして尋ねたのです。


「あの……何か辛い事でもあったんですか?」


 笑顔の彼は、急に真剣な顔をして私に近付いてきました……。

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