2025/12/8 はじめまして
さて、まずは何から書いていきましょうか。
私の現状か、気持ちか……。もう今年も終わることだし、今年を振り返ってみるのもそれはそれでありかもしれませんね。
ノートを開いて一ページ目に、何を書いてくれるだろうとあなたはワクワクしたでしょうか。ごめんなさい、あまり楽しいことは書けないかもしれない。それでも、この一冊分は最後まで書き切るつもりでいるので、どうか許してくださいね。
ひとまず、あなたに名前をつけたいと思います。『アンネの日記』をあなたは知っていますか? アンネ・フランクは自身の誕生日に贈られた日記帳をキティーと呼び、キティーへの手紙として日々を日記帳に綴ります。「紙は人間よりも辛坊づよい」として、時にザクザクと心を抉られるような辛い日常も書きながら、いずれ訪れるだろう自由な日を思い日々を過ごします。窓を大きく開けることもできず、ほんの少し開いて鼻を押し付けるようにして新鮮な空気を取り込む、そんな日々を。
今書いているこの文は、私、北原蒼が、アンネに倣って書き始めた日記です。ただの日記ではありません。あなたに向けて書く、遺書という形の日記です。誤解しないでくださいね、今すぐどうこうというわけではないのです。
特に体が悪いわけでもない。元気ではないかもしれないけれど、心も不健康とまではいかない。それでもどこか、漠然と、そう遠くない日に、私はこの世界から消えている気がするのです。そんなとき、後悔があっては気持ちよく旅立てないでしょう。
祖父母が終活という名の整理をするように、私も人生の整理をしておきたい。いつ何が起きても、すべてを前もって記しておけば、慌てないで済みますから。
ですから、あなたは気楽にこの日記を読んでくださいね。いえ、あなたという紙面に書くのだから、気楽にこの文字を滲ませてくださいね、とでも言いましょうか。なんだか表現がおかしいような気もしますけど。
ではあなたの名前を発表しますね。あなたの名前は、"青さん"です。どうでしょう、驚きましたか? 蒼と青。字が違うだけで同じ名前では、青さんは微妙な反応をするかもしれませんね。
けれど私は、日々浮かんでくる問いの答えを、あなたに用意してもらいたくなるかもしれないのです。自分が問いの答えを持っていないとき、私はいつも思い浮かべる人物がいます。その人が、青さんなのです。
青さんに語りかけるようにして書けば、もしかしたら良案が出るかもしれない……そんな期待を、あなたにしたいのです。青さんという人物像を、あなたという日記に転写したいのです。
勝手でしょうか。勝手だと思ったならば、どうぞ私が書くインクを次のページにまで滲ませて、嫌がらせをしてください。長い付き合いになりそうですから、嫌なことがあったらお互いぷんすこして、まあいっかと笑って、それでおあいこにしてもらいたいのです。
たまにはベッドで一緒に寝て、ご飯も一緒に食べましょう。あなたに私の生きた証を刻み、私の文字が途絶えるその日まで。
青さん、今日からよろしくお願いしますね。毎日来ることは難しそうですけれど。




