食べ物を作り出せる世界一醜い顔の幻術師
「俺が選んだのは幻術師・食べ物を作り出せる・世界一醜い顔の三つだ。それじゃあ行くぜ」
星狼の声が、低く響く。広場に、微かな緊張が走り、風が葉ずれの音を添える。皆の瞳が、星狼の毛並みに注がれ、茶狼の目が細く輝き、岩狼はゆっくりと頷き、石狼の爪が土を軽く掻く。読狼は膝を抱え、息を詰めて見つめる。
「僕の友人の名はヤマト・サカザキ。最初に言っておくよ。アイツは世界一醜い顔をしているんだ。女にモテるどころか、その顔のせいでずっと苛められてたんだ」
星狼の言葉が、静かに落ちる。銀狼の銀色の毛並みが微かに震え、茶狼の表情がわずかに引き締まる。岩狼は腕を組み、深く息を吐き、石狼の瞳に影がよぎる。読狼は指を絡め、里の古い因縁を思わせるような、重い沈黙を共有する。
「だが、そんな世界一醜い自分でも何か出来るんじゃないかと思って、今は幻術師……まぁ、手品師だな。エンターテイナーとして皆を笑わせる仕事をしてるんだ。」
星狼の声に、微かな温もりが混じる。広場の空気が、ゆっくりと解け始め、茶狼の尻尾がぴくりと動き、岩狼の目が静かに細まる。
「正直、こんな事言ったら、アイツの営業妨害になっちまうけど、アイツの手品の種って、魔法なんよ。アイツ、食べ物を作り出せるって魔法が使えるんだよ。」
少年たちの視線が、より深く星狼に絡みつく。石狼は身を少し前傾させ、読狼の耳が微かに前傾する。銀狼は無意識に爪を立て、想像の糸を追う。
「最初は仮面を被って登場するんだ。そして仮面を取り、醜い顔を見せる。当然お客さんはビックリだな? でも、そこに即座にクリームか何かだろうな……? それで格好いい顔を作るんだ」
星狼の語りが、生き生きと動き出す。茶狼の瞳が、好奇の炎で揺らぎ、岩狼は小さく頷き、双子の絆を確かめるように石狼の肩に視線を移す。
「そして『エヘヘ、ビックリした? 僕、ヤマト・サカザキだよ〜』というのが掴みネタだ。そこから食べ物を作り出せる魔法を使って手品をする。お客さんを笑顔にしていくんだ。」
広場の夜風が、優しく星狼の毛並みを撫でる。皆の息が、微かに揃い、読狼の指が膝の上で軽く動き、期待を刻む。
「アイツの手品は勿論面白い。だが俺はアイツが世界一醜いってハンデを背負ってるのに、それを武器にして、自分にしか出来ない事をしてる所が一番好きだな」
星狼の言葉が、静かに締めくくられる。彼の瞳に、里の争いの影が一瞬よぎるが、すぐに笑みの光で覆われる。ヤマトの幻が、皆の心に小さな橋を架けるように。
星狼の友達が紹介された。広場に、温かな拍手が広がる。茶狼が最初に掌を合わせ、岩狼と石狼が双子のように揃って続き、銀狼の銀色の毛並みが喜びに震え、読狼も控えめに手を叩く。月光が、皆の輪を銀に染め、遊びの余韻を優しく包む。
星狼は読狼に向かって声をかける。坂の端に佇む新来の影に、視線を優しく投げかけ、里の風を味方につけるように。
「さぁ、最後はお前の番だ。恥ずかしがってるんじゃねぇよ。チャレンジしてみる事が楽しいんだ。感想コメントで言ってみればいい。せっかくここに来たんだから、楽しもうぜ?」




