調査
好評!夕方に投稿した叉三郎の冒険の続編、ぜひ見てください!
押し出された筒の中身は彼が見ても空っぽであった。彼が従業員から探偵に成り変わる頃には服も下地の良い紫を基調にした寝巻に変わっていた。
「どうぞ」
叉三郎が手を広げると「失礼します」と女性が入って来た。いや、男性の心を持った女性の見た目をしているヒトなのかもしれない、私は彼女と言うことにした。
「あの、叉三郎様は」
キョロキョロと二人を見回すと暫く立って内装に目を凝らしていた。しかし、「ミス」と言う言葉に再び意識をこちらへ向けられた。
その声はよわよわしく、彼女が私の事を見ていると女性の身体をこわばらせながらも、必死に前に出ている様を見受けられた。もどかしいと手を握ると感謝の言葉の後彼女をその席に座らせた。
叉三郎は煙草を吸っていた。
首を長くしていたが、長い目つき、男性で有りながらも垂れた目尻であるが鋭い切っ先、大きな黒い瞳孔が彼女の身体から隅々と夢野は見回していた。
「とりあえずはこんばんわ」
彼がパイプの煙草を見て回ると彼女は私に話をしているのか彼女の手の事を言いだした。敬愛するべき一般市民かつ女性であっても、手を出した人間のみならず先導した人間を許すほど彼はお人よしでなかった。
「あのう」
女性は二人を見回したがどちらもお目当ての男性では無い様だ。彼女は彼のザンギリ頭をまじまじと見つめると生唾を飲んだ。彼女は階下の下宿先から聴こえる惰性の声を聴いているとキッチンの洗面器から水の流れる音を聞いた。
「どうされましたか」
男は女性が困惑している時に「井戸水は無いのですか」と聞いたので、裏手から引いた水を飲んでいた。三度感謝する、流行りの型から掛けるスカーフを試着しシルクハットを長い髪の上に被ると耳まで伸びたもみあげに息を飲む、彼女は手の中に入った。
「彼女の手編みの男を探してください」
彼女は必死に困窮し、困惑した顔を見せていた。手提げにおにぎりと本を抱えた右手を押し退け彼に顔を近づける女学生は鳴いて懇願し、目を閉じた。
叉三郎は彼女の言葉に鼻を鳴らしながらも奥の肖像画を視る要領で葉巻に煙草を散らしてしたのだ。彼女は彼の行動に起こるどころか畏怖し恐れている様であった。
近づけば割れ停止増しそうなガラスは彼が慰めなくとも私が駆け寄り背中をさすっていた。のみならず容器に入れられた水を彼女に入れてコップのそれを飲ませた。
「私、待ちます」
彼女が、玄関の窓ガラスに張り付いた時から、幾分か落ち着いたように見えた。粗茶を出してから短い針が二周する時であった。真剣な表情と姿勢と度合いに、何時間と椅子に居座るため叉三郎は見るに見られなかった、開いた目を見れば彼女の言葉に言いくるめられそうであったからだ。
「警察に行かれましたか」
すると途端に彼女はその口を噤んでしまった。「お嬢さん」彼女が下を向いてしまったため私は彼を見た。彼は鼻を鳴らすことにした、もごもごをしているが言わんとしていることは明白だ。
「冷やかしだな」
彼は、そう冷たく言い放つと彼女は私が話して居る事が多いいため、彼女の言葉に話をしているのである。彼が、話をしていると彼女は私がそうそうたる面子で、入って来たのが分かった。彼が黒縁の固定電話に手を伸ばすと、受話器を手で押さえつけた。細い針金も変形し、電源を抜いて意志を示すまでは席に戻らない、困った人だ。
「今日は晴天でそして平日と来たものだ、難解な事件が来るに違いない、だから帰ってくれ」
敬愛するべき冷やかしは、テコでも椅子から離れないでいた。治が服を引っ張ろうともボンドで木材を接着し貼った強度だ。彼が暗示を掛けようとして心眼を捉えその耳の鼓膜を自身の意図で動かさない珍芸を見てくれたため、両手を挙げる始末だ。
「女中は・・・」
手の人差し指を向けると何もない廊下に向かい腕から伸びた。マチさんも彼女の事を見ていた。指に連られた窓辺の白い銀化粧に目を取られながら耳を欹てていた。ノックの音が聴こえる。声高であるが野太い声に似ていた、医者が自身の威厳を含めた吐息を紙に打ち立てる様に。
「誰が女中ですか」
女性は私が彼女の言葉に聞こえるからと彼女の手の中に入って居た。バンカラに囚われた卑しい歴史の亡者であった。大正も終わろうとしているのに発展するのは鉄道と文学だ。天子の所在は未だに誰も解明してはいないのである。
「誰よ!天子が居るわ」
依頼人と目が合うが喉の奥からホッピー缶を切る溶接設備の半濁音を機械混じりに交差すると彼女の手を握った。腰に手を当てて緑茶の淹れてあるお椀をお三方の卓の上に置いたのである。簾尾は体を身体で揉まれた。
「天子では」
彼女は私が話して居た彼女の言葉を聞いていた。のみならず言葉を話して居たからモノトーンの声も相まって灰色に見えた。 少なくとも彼女は天子ではない、胸の間から取り止めない断末魔が聴こえる始末である。
「夢の中でずっと見ていられるわ」
彼女のみならず手の中に話をしている女性が手を伸ばしていた、私は彼女らに手を離して居ると女性の言葉に聞こえていた。
「コップ一グラム」
彼はお茶を飲みながら彼女の事を見ていた、女性と男性の間に挟まりその胸の圧に押しつぶされながら女性窓辺の斜陽に目を合わせていた。
「下に何か」
テピベアの人形であった、チャックが縦長に付けられており首筋から腰に掛けて縫いつけられていた、私は彼女に話をしていると女性の口から「ああ」と言われたためテピベアのチャックを頂点まで上げ彼女の手を見ていた。
「ありがとうございます」
夢野が声を荒げ治を跳ねのける、足裏から進もうとしていた男は後ろに縺れ金色の王冠が立てかけられて在る緋色の座席カバーが付けられた椅子に座る、伏せていると見えるが腰の容態が椅子の奥にめり込むからいつまでも体が浮いていた。
「私は・・」
彼女が話し始める頃は日が差し込む羊皮紙をペンの重みで留めているが風で吹き飛びそうだ、戸締りをしていた、従事していた仕事に取り掛かった、彼女の言葉は手が振り落とされない様に治の裾を引っ張った。
西日に明け暮れた十二時に当てられた言葉の数々は女性が井戸端会議をする程の時間である。彼女が会話に興じるのではなく、分厚の本に縦横十六インチの付箋を貼りシャープペンシルを用い論理の牙城の一部分一部分を取って突貫工事を仕掛けていた。
「ずっと見てられるね」
「ああいう、取り止めない日常にこそ推理のヒントは隠れている。もし僕が大空を飛べる翼があったとして家の屋根を自由に取れるとしたらその日常をつぶさに観察して頭に、あるいは紙に記録しているだろう」
眉間にその皺を向ける頭を抱えると彼女がハンカチーフを持って来たため彼女に差し出した。私はそれで涙を拭くしかなかった。
「何とか言ってくれ」
「多分私も、丘の上にクジラの骨が落ちていたら空飛ぶクジラが生きていたんだなと思うから分かり合えないわ」
寸とすまし顔に成ったところで彼女は私の背中をさすってくれた。何をしているわけでは無いが、私は財布から数枚の紙幣を取り出すと「御駄賃だ」と言い彼女に渡した。夏目漱石が書かれた少し大きなピン札である。
「さて、治の財布もすっからかんになったことだしさっさと依頼を完了しますか」
彼女の閑静な声が轟くと彼女は空いた切り込みの場所から奥の寝室に倒れる程に体を回した。「やった」彼女は響き渡る。その後ろ姿は手を振って答えるだけであった。
私は嬉しく成りながらも自身が蓄積し表現して来た知識が古く成る事に目頭が熱くなる想いだ。叉三郎のみならず治は少女の頭の眼前を通る際に目でそっと髪の揺らめきを引いている様でもあった、春野は彼女のみならず金切り声が気に入らず耳の蓋が締まり開くことがしばしばあった。
「デジタルデトックスも完了すると言う事だ」
ブルーライトの影も光線も太陽を構成する一要素であることを考えるとパーソナルコンピューターの画面と一緒の成分であるのか不思議なものだ。ブルーライトは両方とも変わらないのであるならばどちらとも私の心を濁らすきっけかけに成るはずなのに、『斜陽は綺麗だ』南中高度を見ながら唱えていた、ちっぽけの不安も感じなかった。
朝の残り香がいつまでも残る。
「とりあえず夢野さんと一緒にこの家の様式を知りなさい」
彼女は元気よく「はい」と言うと戸を開き階段を駆け降りた、彼女の足音は階下から聴こえていた。私は、向いの椅子から歩き扉の裏を見た、誰も居ない次に横の部屋の扉を開けた、コンサートホールの垂れ幕より厚い黒と深緑のカーテンが掛かっている、二つの扉を閉じ深く深呼吸をしては彼女の言葉が反芻する、振り払う様に首を二つに降った。
「どうした」
彼が聴いたがその声は彼女の抑揚有る語より高らかに聴こえた。眉間を親指の瘤で抑えると横目に彼の言葉が聴こえた。
「何?」
鈍痛に訴えて言うと彼は肩を竦めた、手を広げてオーバーアクションだ、「さあ」と言う彼に対して私は横目に見た目尻を下げると、閉じて笑う。
「いや、案外優しい所が有るんだなと思って」
夜に近づくと生活苦の様を考える私人が今を捨てることに依る機会の損失・・・Σで合わされた暗君は人の心根を終わらすことが出来た、自身の仕事が人の人生を終わらす仕事であることが良く想え、
「金欠・・・金・病苦・生活苦」
月夜に塗られた一晩を彼は私と共に彼女の怨敵を探すのに費やした。私は時折り思い出しながらも洗い物を夢野さんに任せ床に入る。
「頭を下げて嗚咽を吐いて、私が慧眼を持った人間であると振舞い、立膝を突いて手を合わせて祈った事が自然であると考えているのかい」
どこかの偉人が言う言葉を呟きながら部屋の電気を消すのである。白い部屋に花畑と闇の中を輝かせる花が見える、太陽だ。彼は一息つくとその風体を見るに留めた。機会損失・・うんぬんかんぬんを振り払う様に頭を振るが、表情には微塵も疲れた様子は見受けられない、煙草を吹かしながら暗黒を楽しんでいた。
「太陽とは期待だ」