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叉三郎の冒険  作者: 猫八
3/18

手紙

「おや、なんの手紙だい」

 降りながら封筒を入れている男性の元に駆け寄った。男性は猫背で中肉中背であり背中から硬い背骨の突起が生え出そうな見た目をしていた。中身を取り出すと彼が私を見ていたためポケットの金貨一つを郵便配達員に渡すと蒸されたジャガイモの崩れた具合に浮足立ちながら場を去る。(私は馬車から)

「それにしても」

 叉三郎は付属の足かけに腰を掛けながら、努々、封筒を見ていた。夜風が運んで来る各々の通りから各々民衆の声が偶像と成り聞こえて来るのだ。

「どうしてあの男が持って来た荷物が手紙だと断言できたんだ」

 私がパイプ式の煙草を天井に向けて吹かしながら安楽椅子に毛布を敷くと彼が首を傾げて聞いていた。私は叉三郎の機嫌を伺いながら震えて言う、瞬きを擦る頃に。努々彼の角が当たるかと思うと緩くなった頭があがると口から入った空気が目を覚ましてくれた。

「なんだい」

 神妙な面持ちで指と指の腹を摩っていた不安に肩を動かしていた挙動から椅子を蹴り上げて立ち上がる。トイプードルが早朝の朝冷えを凌ぎ早起きした敬愛すべき主人と散歩に出かける親しみを感じられた。彼は椅子から立ち上がると削がれた頬骨の肉を更に萎ませ(目を)閉じては煙と共に吐き出した。

「勿体ぶるなよ」

 一貫して彼の幸せそうな顔は崩れることが無かった。遠い夢の中から彼がいつまでも通り抜ける窓の無い向こうの扉まで歩いていたかと思うと、(またしても)叉三郎は片方の手をポケットに入れる事やぼんやりしながらも利き手を出しプラプラと歩いては戻って来て座った。

「彼は手を洗わないのに妙に綺麗だなと思ったからだ」

 横のマントルピースから左に向かい棚を上げてから彼が持つ専用の鍵を取り出すと施錠した閂を開けた。扉を開けて反対側から閂の鍵を閉めた。

 暖炉の赤い燃える火からアラスカの死に絶えた街を手紙の裏に思い起こしていた。口に咥えたマントルピースは寝返りを打つが落ちることは無かった。握った右手は折れんばかりに茶封筒の手紙を持っていた。

 無防備な子犬の視線が、彼の動きにすっかり釘付けになり、興味ありと見上げている。口元に微笑みを浮かべ、トイプードルを連れて外へ出した。冷たい空気が彼の頬を撫で、そして心の奥には暖かな記憶が呼び覚まされるようだった。

 彼が止めてくれたおかげで私の財布の中身がオケラに成ることは無かった。「とりあえずは勝ち」と言うと深い眠りに陥る、身体が寝る事を許した様だ。自制心が私の心根を聴き静けさに共鳴したからである、私は確かに扉を閉めていたが金具が軋む音と共に半身扉が空いたのだ。

「待って居なさい」

 すると数秒もすれば軋む音はすり減って先ほどより鈍重な声で鳴いたのだ。もう一度聞くと彼は扉を毘舎利と閉めて電源を切っては戸棚に戻した。

「夜は怖くないのか」

 それに対して叉三郎は笑って返した。あざける笑いではない、幽霊を気にしては商売にならないのかと問い詰めても彼は首を振る。彼はその金具を開けては閉めるを繰り返すと、今度は横に在るヒーターに手を伸ばした。

「何をしたんだ」

 問い詰めても彼は何度もはぐらかすばかりで何も答えてはくれない、本当は何か知って居るが知って居ない素振りをされると、無性に頭に血が昇るのだ。彼はそんな私を抑え込むと薪をくべては窓辺に近づいた。

「おい、おい」

 水晶玉の世界が治の視界を彩る、アンティークは私が話すほどに彼の手の中に入って居た。彼女の言葉に話をしていると、彼の下地が見えていた。私を起こす声は野太い。こういう頭を動かそうとするほど能率が悪くなる、何も考えず慣習に身を任せるのだ。

「嫌簡単なことなんだが、暖炉の暖かい風があるだろ、そこに窓の隙間から入る冷たい夜風が入るとするならば熱から遠い場所に行く、毎度その扉に当たっていたわけだが最近等々錆と老朽化で留め具の役割ができなくなりとううとう半開きの生半可な戸締りでは支えきれなくなったという次第さ、至って見れば簡単な事だろ」

 彼が空いたグラスを持ちながら話す様は月光に照らされ出して日の目を浴びるようになった。恍惚し潤んだ瞳からは鷹の目をほうふつとさせる大きな二重が二つ備わっていた、一方は鋭く一方は太しく、だ。

 戻そうとしても簡単に戻すことはできなかった。抑揚の付いた高音のみならずかすれ声に近かった。彼が電源を入れ、室内から扉に当てると椅子を寄せ座った。

 「や、や~」よし、聴こえて来た。彼はここまで元気でも朝はゾンビだ。「さて、事件も解決したし酒でも飲むか」彼はバッカスを飲みながらもそのワインの口を私に向けていた。

 楽しんでいると彼はそんなことも考えていたのかとしているが、私はそれを手で飲むと彼が堪能し楽しむ様を見ていた。

「やあ、帰っていたのか」

 起き抜けのベッドと言うのは、脇腹で布団を跳ねのける万力の力が藩閥しているか実際に有りもしない幻肢痛を体験しているか両方だ。憂鬱に誘われて体を置き上げかと濃い渋柿の匂いが部屋を充満する、部屋で換気をするまでの一連の動きをし、朝食を食べるかの勝負だ。

 「いただきます」と言うと菓子を用意してくれたトレーから甘味が一つ消えた。勝負には食べ物が必要であるためつまみ食いも必用だ。そのため私のお菓子を一つ上げよう。

「ありがとう」

 重低音が響くと彼がトレーを机の上に置いた膝の関節程も無い座高の卓の上に濃い渋柿の臭いが充満すると菓子を用意してくれた。食べているのを見ると私も彼の好意に釣られて口に運んでしまった、彼がポリポリ、食べていると信頼するべき友の夜食は消えていた、彼が家からそばを取って来るまで。



 


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