四輪馬車
「治」
彼が言うと、空を指さした。私は彼女の四輪馬車が過ぎる所を待つとコートに泥が付いていないか心配であった。振り裏に汚れが付いていないことを知る、晴天の空を見上げていた、もう夜であるから満月の輝きに満ちた闇だ。
秋に浮かぶ明滅を繰り返した星々の中核から波が来る、ヒカリからごまかしきれない遠くの星空は懐中電灯を照らすが消えることも無かった。
ひときわ輝くオレンジ色の視等級は恒星として一番の輝きを放っていた。形が無い点光源である、目の星はひときわ大きい星である。
静かな大きな碧の覇気を纏う点光源は周囲の闇を押し退けて場を自分の領域に引き込んでいた。北極圏
より遠い宇宙の果てで太陽は関係無い、強い青色の光がいつまでも見えていた。
不定形の形が小さいながらも歪に見えた、見つめていると、熱風が青白い光線が当たった。
手のひらの中で小さな宝石が反射している様で、手を使って三つの光を追うと、結ぶときより大きな三角形をつくることができた。タバコの煙が中心点を漂う、「あれをどうするか」私に答えた、「秋の大三角形と名づけようと言った。
粉塵が舞うと私は手で灰を押しのけた。工場の労働者が炭を誇らしげに振り払うのに似ていた。黒い煤を手で叩く。
「ほら、欲かっただろ」
亀裂が入った帯を一周させると赤い固形のモノを彼の口の中に入れた。大根を割るか手の人差し指を鳴らした時の音に似ていた。断片は薄桃色の円形が周りの斑点に沿って描かれていた。芯に向かうに連れて皺が多くなる、お菓子であった。
(私は)
話すごとに彼の呼吸が一層深くなるのを知った。(道を歩くごとに)猫背であった彼の頭身も背筋が整った。寝不足もどこかへ消えていた、私が寝るより婦人の帰りを待つ夫の悲痛な叫びから塗られている夫の叫びは窓越しからも聴こえる、振り返り警察に通報する事が筋であるがいつもの痴話げんかだろうと胸を撫でおろした。
「何度言ったらわかるんだ」
夫の言う事に文句を言うのみならず目を下げては上げ機嫌を伺いながらも吊り上がった広角に自身の欲求を満たす算段が植え付けられている、この神聖な星空にはふさわしくないのだろうか彼は通りから過ぎた事だと聞き流していた。
「典型的な自己愛だな」
キーキー声を挙げながら空に浮かぶ星空を揺らす声を挙げて彼女の言葉に聞いていた。二歳児を相手にするのは辛かろう、私は両手を合わせて祈る、彼はそれを見てもタバコをふかすだけであった。食べ物が戦果であった。
「まあいいじゃないか」
彼がその間から彼の事を見ていた老人は呆れながらに過ぎ去っていた。首を長くして見ていると男は空を見上げようと背筋を伸ばした時に水が跳ねる運転をした運転手と乗車していた男であった。彼は追いかけたが、叉三郎が肩を叩いた。
「結構です」
老婆のつっかえた顔は何とも楽しかった。のみならず鼻を蒸気機関車の様に包んでは体を震わせていた。相手の話を聞き流す基本は彼の言っていることをすでに知って居る事だと考えて取り組む事に始まるのだ。
彼女が私の所に見ると女性が彼女の言葉に輝きを取り戻していた。彼女が話をしていたが他人であると言うこともあり耳に入らなかった。
「うるさいじゃないでしょう」
圧力が加えられたと感じられた。私はそれを見ると女性のからだから湯気が出ていた。天井を見ると湿っている、彼女の圧に耐えきれなかったのだ、私は目を反らす事が出来なかった。哀れに見えたのみならず人間に出会ってしまったことに対する嫌悪感に満ちていた。
むっとなり彼の手を払うと「ありがとう」と言い彼に寄った。(私は)ひたすらに歩くと商店街の亭主が寄って行かないかと私を誘う、私は行こうとするが彼が足を引っかけたりまた、肩を叩いたりして場に行くことはできなかった。
「それ、買わなくてもよくない」
打ち上げられた凝り固まった思考の障壁が彼という作業員の手により行われた突貫工事のおかげで消えかかっていた光明の光すら機会にする事ができた。余裕打って彼の身体に手を置きながらも私は老婆に広角を挙げて断った。
「それじゃあ行こうか、叉三郎」
一通り見ると「だるい」と言いながら彼女の事を見ていた。老婆も言葉に面を食らったのか彼の言っていることをすごすご見過ごしていた。彼には重苦しい人間関係を捨て一人なり横目に彼らを見ながらもタバコパイプの淵を拭いていた。
「そうですか」
自分が望んだ結果を得られなければ他者を攻撃しても良い思考回路は親と離別できなかったおぞましい存在だ。この人もきっと二歳児でとまってしまったのだ。
「じゃあたくし」
四輪馬車の後部座席に乗ると彼女の事を想いだす、自身の心に波が来ようとも私は一歩先を行っている。称えられた誇りが自身の事が獲得したものであると再確認し旅断つ、通りから見る子供の顔が美しく見えた。