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第九話 アップルパイがやけました。

「エルマー……? どうしたの?」


 そう俺に尋ねるカミネ

 どうやら窓の外の異常な光景は、カミネの身長的には見えななったらしい。


 それはいい、子供にあんな光景を見せたら精神に悪い。

 俺は笑って腰を落とし、カミネと目線を合わせる。


「いや、なあに。ちょっと森が怖く感じただけさ」


 心配そうに俺を見つめるカミネに対して俺はそうフォローした。


 だがカミネも先ほどの俺の動揺から何か異常事態が起こったことを察しているだろう。

 となれば、俺たち年長組は尚更、気丈に振る舞わなきゃな。


 少しでも緊張はほぐしてやるべきだ。

 さて、だがこの状況はまずい、俺はミラナに視線で語りかける。


 するとミラナも俺が何を言いたいのか理解したのだろう。

 ため息をつきつつ語り始めた。


「まず状況を整理しましょう、この村、アナタたち2人うとうとしてて気がつかなかったでしょうけど、鬱蒼としたあの獣道の進路上にあったものよ」


「は? どう言うこったミラナ?」


「そのままの意味よ、本当にあったの……木々の影に隠れてあまり気がつかなかったの、それとあるわけないって心理的盲点でかなり近くに来るまで見間違いかと思ったもの」


 普通に考えて獣道の上に村を置く理由などない。


 獣道とはモンスターですら通ることもある危険な道、そんな場所をわざわざ選び村を作るメリットなどどこにもない。


「そして、村人の様子。明らかにおかしい」


 ミラナは続けて言う。


「言葉もなぜか舌足らず、視線も焦点が定まっていない。極め付けにエル……あなたも見たでしょ」


 窓の外にいる、俺たちを監視している村人達のことをミラナは言いたいのだろう。

 しかも明らかに俺たちのことを壁越しに見透かしてるような、そんな振る舞いを外の村人達はしている。


 状況を整理してみて改めてわかる

 この村はやはり極めて異常だ。


 しかしその中でも明らかにおかしな点が一つある。

 異常の中のさらに際立って異常な点が。


「……なおさら、あの女主人はなんなんだ」


「そう、私も同じことを思った。異常なこの村の中であの女だけ正常すぎる」


 そう、あまりにもあの女主人は普通の人間すぎるのだ。

 では彼女は何者なのか、いくつか想像できるが俺が一番可能性があると思うものをミラナが俺の口の代わりに喋る。


「あの女がおそらくこの村の中心。村人(コマ)をあやつる主人(クイーン)ってところかしら」


 やはりミラナの見解と俺の見解は相違ない。

 まんまと俺たちはやられたと言うわけだ。


「はぁ……狩場に迷い込んだってわけか」


「ど、どう言うこと?」


 不安がるカミネ。

 参ったな、もう隠せない。


「人に害をなすなんらかの怪異、その巣窟に私たちは招き入れられたってことよ」


「ミラナ! もすこし、やんわりいえねぇーのか!? カミネが怖がるだろが!」


 カミネの方に振り返ると、可哀想に肩を震わせている。

 ほらぁ!! 不安がっちゃうだろうが!


「じゃあ、どう言えばいいのよ? 言っとくけど真実を伝えないと言うのも、この子の身に危険をもたらすわよ」


「そうだけどよぉ……ごめんな、カミネ、大丈夫だ兄ちゃんと、このミラナお姉ちゃんが守るからな」


 カミネはこくこくと無言で頷く。

 さて、カミネを慰めたところで作戦会議に戻ろう。


 俺の予測ではこの村は怪異によるもの。

 怪異とは何か……と言われると説明に困るのだが、大きな意味で人語を解するモンスターの類だ。


 普通のモンスターよりも狡猾で強くヤバい。

 じゃあそんな状況で今俺たちが置かれている状況はどのようなものか。


 まず、武器の類は馬車に置いてきてしまった。

 村人に囲まれた異次元トランクにまで行けなかったのと、もしここで敵意を見せたらどうなるのかわからなかった為、下手な行動にうって出られなかった。


 まあ、最悪、俺ともミラナも武器などなくても戦える。だからこれはまず一旦置いとこう。


 問題は場所だ。実質監獄のようなこの宿で、果たしてどう立ち回ればいいのやら……。


 ──トントン……。


 部屋の扉がノックされた。

 誰だ? 俺はミラナに視線を送る、警戒しろ、と目で伝えた。


 敵が仕掛けてきたのか? わざわざノックをして?


 俺はカミネの手を握り、自分の後ろのいるように手を引き誘導する。


 では必然的にドアを開けるのは一人だ、ミラナはため息をつきながらドアに手をかける、そしてドアの横に立ち開け放った時にドアの影に隠れられるような立ち位置を確保した後、ミラナは思い切りドアを開けた。


 ギギィ、と軋む音がした後、ドアの向こう側の景色が晒される。

 そこにいたのは、例の女主人だった。


「パイをお届けしました! お腹、減ってるでしょう?」


 布を被せさせられたバスケットを持って女主人は笑う。

 パイ? 料理を作っているような匂いはしなかった筈だが、俺は苦笑いを浮かべながら返事をする。


「いやぁ、ありがとうございます。わざわざオヤツまで! なんのパイなんです」


「アップルパイですわ!」


 そう言って、女主人はバスケットに被せてある布を取り去った。


「……!」


 バスケットの中には、ゴキブリやムカデ、ネズミの死骸で満ち溢れていた。

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