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第八話 奇妙すぎる村! 発見

 謎の村に俺たち一同は動揺して再び目を凝らす。

 夢や幻ではないかと確認するためだ。


 だがどうやら何度、見直してもこの村は《《在る》》、現実に存在するようだ。

 日が暮れかかっているがはっきりと見える。


 木材の家々やそれらしく作ってある門。

 さらには門から見える広場には木材でできたトーテムらしきものが見えた。


 クソ、情報量が多すぎる。


「ミラナ、どうする?」


 とりあえずここは落ち着いて話し合うべきだ。

 俺はミラナに尋ねる。ここはあまりにも怪しすぎる。もし俺たちが何か判断ミスをすれば、それが命取りになりかねない。


「そうね、実は一つ残念な話がある」


「なんだ?」


「この馬車は魔法で走っていてね空気中の魔力、マナを吸い込んで走ってる」


「へー随分とハイテクなんだな」


「そして今、マナが切れた」


「へ?」


 俺の間抜けた声が響く。それはつまり……その……。


「馬車はここから動けないってことか?」


「そう、少なくともマナの充填に1日はかかる」


「マジかよ」


 最悪、それは考慮に入れていた。俺は機械に詳しくないが自動馬車には燃料がいることぐらいわかる。


 補充のために野宿だって覚悟していた。

 だが、まさかこんな胡乱な村の近くで馬車が止まるとは、流石に想定していない。


「クソ……夢でも見てんのか……?」


 俺はぼやきそして、ため息をついたその時だった。


「お困りジェスか?」


「うお!?」


 窓の外から、聞いたこともない声が響く。思わず声を上げた俺は声の主へと視線を向けた。


 それは、白目を剥いたスキンヘッドの男だった。


「これはカレは、ハジュメまして旅人の方、お困りダャスか?」


 窓の外から覗く白目の男、異様すぎる光景に思わず気押される、がしかしここで恐怖で思考を鈍らせてはならない。


 俺は毅然とした態度で言う。


「……ああ、馬車がちょっと動けなくなってしまってな、何、アンタらの村からはすぐに──」


「それは大変でシャウ」


 男は笑った。唇を三日月のように曲げ、目尻に口角がつかんばかりに笑った。


 そしてグルン、と目が周り玉虫色の瞳を表に表す。

 しかし全く焦点があっていない。


 右目は右斜め上を、左目は真下を見つめている。


「……っ!」


 やはり異様だ、この村は何かおかしい。


「みなさん、ツレテイッてあげまひょう」


 だが俺の判断よりも早く男がそう呟いた。


「皆さん……?」


 ミラナが疑問を呈したその瞬間だった。


 まるで答え合わせをするかのように、車の窓の下から一斉に村人達が顔を上げた。


 総勢10人ほどで、後方までは見えないが囲まれているのだろう。


「ぜひ──」


「──連れて──」


「──言って──」


「──差し上げワす」


 順々にそう呟いた村人達。

 後ろから「ヒッ」とカミネのか細い声が聞こえた。


 そして、村人達は俺たちの馬車を引っ張り押していく。

 なすがなされるまま俺たちは村の中へ招待されてしまったのだ。


 ─────────────


「ようこそお越しくださいました」


 そして村人に車から降ろされ導かれるまま、民家の門をくぐった俺たちを待っていたのは。

 メイド服に似ている服装の女性だった。

 どうやらここは宿屋か何かで、この女性は宿の家政婦か主人であるらしい。

 歳は若く、そして俺と同じ白髪で短髪の女性だった。



「旅人の方、ですわね。話はうかがっております」


 クソ、なんだこれ村人達と違って普通の丁寧な人だな、俺は訝しみながらも周りを見渡すが、特に変なところはない。


 それか俺が気づいていないだけなのかどうかはわからないが、隣にいるミラナも特に何かに気がついたような反応を示していない。


 万が一のためにも俺は俺の後ろに引っ付くように隠れるカミネに囁く。


「カミネ……俺から離れるなよ、ここは何か変だ……」


 カミネは俺の手を力強く握りしめた。

 それに応えて俺も握り返す、とりあえず俺の指示は理解してくれたらしい。


「あの……いかがいたしましたでしょうか?」


 すると、俺たちの不安や緊張を見抜いたのか、宿屋の女主人が語りかける。どう返答すべきか、迷った俺はなるべく自然な笑顔を作りながら言葉を返した。


「いやぁ! ちょっと見知らぬ土地に来て、疲れているだけっすよ! それにしても、村の皆さんには優しくしていただいて! 俺! 感激したっすよ!!」


 なるべく自然に、刺激しないように言葉は選んだつもりだ。

 すると、女主人は笑顔を返す。


「まあ、そうですか。喜んでいただけてこちらも感激です! 部屋を用意してあるので、是非休んでいってください」


「え、いや俺達は……」


 車の中でも……と言いかけたその時、ミラナが肘で俺を軽く突く。

 誘いに乗れ、と言いたいのか?


 俺は一瞬考えた後、女主人に向かって言った。


「ありがとうございます、じゃあその……一泊だけ……」


 ─────────────


「普通のベッド、普通のテーブル……普通の椅子」


 普通じゃねえか、と俺は締めくくる。


 俺たちが通されたのは宿屋の2階の部屋だった。

 外の村人達の様子からは想像もつかないほど部屋は普通だ。




「で、なんで泊まることにしたんだよ? ミラナ」


 俺の質問にミラナはため息をつき、部屋に備え付けてある窓を指差した。


「見てみなさいよ、外」


 俺は訝しみカミネの手を引きながら窓の外を見た。見るんじゃなかった。


 窓の外は村の広場を一望できる特等席だった。

 それが余計にこの気味の悪い光景に拍車をかけていた。


 村人達が家の入り口から、窓から、そして宿屋の入り口のドアの前から、ジッとこちらを見つめていた。


 ただ笑いそして、穏やかに俺たちを見つめていた。

 その焦点の定まっていない目で。

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