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第七話 指名手配?! ふざんけんな!

「いい加減、吹っ切れなさいよ」


 黒い髪を揺らし馬車を運転しながらミラナは言う。


「指名手配されたものはしょうがないでしょ? 諦めて今を楽しみなさい」


 揺れる道の中、馬車の外を見る。

 空、青い空だ青い空が見える。

 自由の象徴、世界の美しさの証拠だ。


 だが、そんな空すらなんだが俺を責め立てているように感じる。


「俺はヤクザ者の手から逃れれば自由になれると思ってた」


「うん?」


 ミラナの頭に疑問符が浮かぶ。


「だがどうだ、今度はこの空が檻に見えるぜ」


「考えすぎよ」


「考えすぎ? じゃあこの文字見てみろよ!」


 俺はミラナに向かって紙を突き出す。何を隠そうこの羊皮紙こそ俺の悩みの種だ。その紙にはこう書かれていた。


「国際指名手配、奴隷エルマー。だってよ」


 俺はわざわざその忌々しい文字を読み上げる。

 国際指名手配、この文字列の意味が理解できないほどバカではない。俺に自由はなく世界中が俺を狙うというわけだ。


「ちくしょー!! あのクソ王国! 俺に全責任なすりつけやがってぇぇ!!」


「うるさいわね、しょうがないでしょ状況的にもう挽回のしようもない」


 くっそー自分は手配されてないからって……。

 しかし、まあ騒いでもしょうがないのは確かだ、ミラナの言うことにも一理ある。


「クソー……俺なんもしてねぇのに」


 ぼやきながら俺は頭を掻く。そうだ思考を切り替えよう俺には、すべきことがある。

 身の安全の確保、俺の子供達の保護に、食材の確保、そして……。


「そろそろ話してくれねぇかな? なんで君がここにいんのか」


 そう謎の女の子の事情を聞かねばならない。

 歳は俺が見るに12か11。こんな小さな子だ親御さんはさぞかし心配してるだろう。


 だが根性は人一倍あるみたいだ、今はこうして馬車の運転席後方の小さなスペースに覇気なく座っているが、丸一日食料補完トランクに居座る肝っ玉も持ち合わせている。


 あと食い意地も。


「もう、怒んないからよ、お兄さんに話してみろよ。事情を聞かなきゃ君の父さんや母さんだって探せないんだぜ?」


 すると、ボソリと少女は口を開く。


「父さんは……私のことなんてどうせ気にしてない、母さんは死んだ……」


「なに……」


 なんだか複雑な家庭事情のようだ、思わぬ衝撃にしばらく自動馬車内は沈黙が走り、タイヤが地面と石を蹴り上げるだけの音が聞こえる。


 その沈黙を再び少女が裂く。


「私、父さんのフリンで生まれた子なの……だから、居場所なくて……でもあなた達を捕まえれば……みんな……褒めてくれると、おも……思って……」


 なるほど、だんだんと話が見えてきたぞ、この少女も俺たちが王都陥落の犯人だと思ってたクチか。


 それで英雄になるために、思わずこの車に乗り込んだと……。


 まあ、それに加えて家出をしたいみたいな願望もあったのだろう。

 納得、納得。


「グス……」


 え?


「うえぇぇぇ!!」


 な、ないちゃった……!!

 女の子が泣いてしまった、これはいかんと俺はズボンのポケットからハンカチを取り出す。


「泣くな、君! ほら涙拭け! ごめんな、辛かったな! 嫌なこと聞いてすまない! ほら可愛い顔と服がべしょべしょだ」


 思わず、俺は身を乗り出しハンカチを女の子の顔に押し付ける。


「うご……あう。あ、あり、あいがとうございます」


 思えば、そんな辛い身の上で随分物騒な状況に身を置かせてしまったものだ。


「やめなさいエル」


「あ? 何をだ? ミラナ」


 不躾なことを言うミラナに対して若干俺はイラつきの感情を出しながら答えてしまう。


「この子は、盗人でもあるのよ、私たちの食糧を全部食べた。今言ったことだって私たちの気を引くための嘘かもしれない」


「そう言う言い方はよせ、ミラナ。相手は子供だ!」


「子供だからよ、同情を引きやすいし、彼女もそれを理解してやっているのかもしれない」


「ミラナ、いい加減に──!」


「それに、これからあの子達を助けるのに、赤の他人の子供の面倒を見切れるの?」


 俺はため息をつく。なんだそんなことを心配してるのか。


「みれるさ、こちとら五児のママだぞ? それに安心しろよ、いつまでも見続けるわけじゃない、ちゃんと親御さんの元に返す」


 少なくともそれがこの子の安全にもつながるだろう。


「……そう言うでしょうねアンタは……」


 ミラナはそれ以上何も言わなかった、まあ同意ということでいいだろう。

 俺は女の子の方に向き直る。


「ごめんな……黒髪のお姉ちゃん怖いよな。ミラナって言うんだけどよ、嫌な奴ってわけじゃないんだぜ? 無責任な行動とリスクを何よりも嫌うリアリストなだけなんだ、許してやってくれ」


 不慣れな笑顔を形作りながら俺は女の子に話しかける。

 すると、くずりながらも女の子はこくりと頷いた。


 よかった少しは楽になってくれたみたいだ。


「ハンカチはやるよ、いらなくなったら返してくれ、えっと……で、名前はなんだっけ?」


「カミネ……」


「カミネ……いい名前だな! 俺はエルマーだよろしくなカミネ!」


 俺の精一杯の笑顔でそう言う。

 あ、少しだけ笑ってくれた。

 なんだ、笑うと可愛い子じゃないか。


 ─────────────


 俺、ミラナ、カミネの奇妙な旅が始まり2時間ほどだった。油断してうとうととしていた俺は急な衝撃に目を覚ます。


 どうやらミラナが車を止めたらしい。


「んあ!? すまんミラナ寝てた」


 まずい俺が誘導しないといけないのに久しぶりの戦闘で疲れたのか? 

 不意にミラナの方を見ると、何やら驚いた表情をしていた。


 どうしたミラナ、と言いかけたその時ミラナは俺に問いかけた。


「ねぇエル。地図を確認して」


「え? なんで?」


「寝ぼけないで!」


 ミラナの動揺に少しばかり驚いた俺はなぜミラナがそんなにも驚いているのか、視界の端に映った光景を認識して初めて理解できた。


「は? 村?」


 そこには、未開の大森林に似つかわしくない村があったのだ。

 俺は混乱しさらに当たりを見回すこんな所に人が住んでいるわけがない。


 すると偶然地面に突き刺さっている看板を見つけた、恐らく村の名前か何かが書かれているだろうと察した俺は目を凝らす。


 だが、そこに書かれていたのは村の名前などではなかった。

 というか──。


『ハか◯レくれナタモむらり△モ』


 なんだよ、この看板……。


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