3月7日火曜日 4
夜、日付が変わる30分前僕はベッドに入らずにただ空を見ていた。
「はぁ、寒」
もう朝のようにこはくが足にすり寄ってくることがないとわかったら、足に力が入らなくなり床に崩れ落ちた。何もせずただ時が過ぎるのをまった
「こんなことになっても僕は涙すら出ないのか」
怒りにも似たような、もっと別の何かの暗い感情に支配された。家族が亡くなっても泣かず大好きでずっと一緒だったこはくが亡くなっても泣かず、自分自身非情なやつだと思ってる
「はぁ、クソ見みてぇだ」
変わりたいこんな自分は許せない
「変わろう」
そう新たな決意を胸に庭に出た。星は見えにくいが目を凝らせばいくつかの星が見えたもっとよく見たかったから家の敷地の外に出ようとしたとき
「どこに行くんですか?」
自分のすぐ後ろ、手を伸ばせば触れられる距離に見知らぬ人がいた。
僕は一瞬にして目を奪われた
その人が綺麗というだけでなくいわゆる身の装束を来ていて頭と腰の辺りに綺麗な茶色の毛をした耳と尻尾があったからだ。一瞬お迎えが来てしまったのかと思ったが体のどこにも異常はない。
「どこに行くんですか勇さん?」
突然名前を呼ばれ顔を上げたら目があってしまいあたふたしてしまう
「今はまだ暗いですから、お家に入って温まりましょう」
何故かよくわからないが巫女さんは家に入るらしい
「ちょっと待って、僕君のことは知らないし、知らない人を家に上げるのはちょっと……」
「何言ってるんですか勇さんは、私です、私ですよ」
何かの詐欺だろうか?
「いや私じゃなくて名前を教えてほしいんだけど」
「勇さん、自分で名付けたのに忘れちゃったんですか?こはくですよこはく」