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ニーノの過去。孤児院に預けられました。

「おい、ちょっと。ちらっとでいいから、治癒の魔法をかけてくれ」 

 

 ニーノをゴミの掃き溜めのような場所から連れてきた男は、ベックと名乗った。

 ニーノは今にも息が止まりそうだった。それにニーノの足は腐り落ちる寸前らしい。己の治癒力に頼るには時間がかかりすぎるし、回復は難しいだろうと傷に詳しい人に言われ、ベックは高度な魔法である聖魔法の魔術師に最後の望みを繋いだ。

 ベックは自分が所属するギルドの中で、聖魔法が使える人を必死で探した。しかし聖魔法が使える人は稀有でなかなか見つからない。

 聖魔法は聖女でもない限りそう何回も使えるものでなく、見つかっても、治療は見知らぬ小娘よりも、同じギルドの仲間に使われる。何人目かでベックが大きな身体を屈めて頭を下げ、ようやくニーノの足に治癒の魔法がかけられた。


 ニーノの顔には布が巻かれていた。

 はじめは、こんな皮と骨だけのようになったニーノがみすぼらしくて隠されたのかと思ったけれど、そうではなかったようだ。


 ベックが横になっているニーノの口にガーゼに染み込ませた水を絞っていれながら、話してくれた。


「実はな、俺があんな人の寄りつかない場所に行ったのは、ギルドの依頼だったんだ」

 ギルド、とニーノは、声にならない声で呟く。


「オルトルーヤの国では今、緑色の瞳の少女が集められているらしい。そのうち、オルトルーヤの子供を連れて国外に逃げたという女が、緑目の少女をあの掃き溜めに捨てたという情報が入って、オルトルーヤから特殊な依頼がきたんだ。緑色の瞳の少女を捕らえてオルトルーヤに引き渡すようにという依頼だ」


 ニーノは自分を捨てた女の顔をぼんやり思い出してみる。自分の手を引いて、住んでいる家から連れ出したのは、見知らぬ女だった。

 誰かから依頼されたのだろう。はじめは頑張って隠そうとしてくれていた。ちゃんと国外に行く手筈も整えて、無事にリンドウ帝国に渡ることができた。

 だが、それでも追っ手が来ていると知ると、女が表情を変えていた。まるで異物でも見るような目でニーノに関わり出した。

 薄汚れた宿に泊まって何日目かに、ニーノはあの掃き溜めに連れていかれた。

「少しだけ、ここで待っていてね」

 それが、あの女の最後の言葉だった。


 そうか、とニーノは思う。

 あの女はあのまま、オルトルーヤに帰ったのか。

 何か事故でも遭って、本当はニーノのところに戻りたかったのに、戻れない何かがあったのかもしれないとも思っていたのだけど。

 それは違った。

 ただ本当に捨てられただけだった。

 ニーノにまた、何度目かも忘れてしまった、心臓が潰れてしまうほどの悲しみが押し寄せる。


 泣きたいけど、もう涙がでるほど身体に水分は残っていない。

 ニーノは眉をしかめるしかできなかった。


 ベックはそんなニーノを、少し困ったように見る。

「ニーノがいたあの場所は酷い。臭いし汚いし、あそこに行くだけで病気になるやつもいる。汚いものに耐性がなければ、行くだけでまず下痢が止まらなくなる。ギルドに依頼がきた時に、報酬が良かったから皆食いついたが、場所があそことわかると、半分の奴らがそれをその段階で諦めた。そのうちまた半分が、あそこの場所に行って断念した。ーーー俺はスラムの出だからな、耐性があったんだ。俺に見つけられたニーノはラッキーだったな」

 ニーノの頭を、ベックは濡れたガーゼを持つ反対の手でくしゃりと撫でる。


 ではベックもニーノが回復したら、報酬のためにニーノをオルトルーヤに引き渡すのだろうか、とベックを見ると、それがベックに伝わったようだ。


「俺はもう、お前をオルトルーヤに引き渡すつもりはねぇから、安心しろ。だが、あの依頼を見たギルドのやつはまだ沢山いる。それでも、この国には緑の目をした人間は多いから、しばらく隠れていたら、そいつらに紛れてわからなくなるだろう」

 

 ベックの巨大なあんパンのような手が、小さなガーゼに水を染み込ませたものを絞り、小さなニーノの口に優しく流し込んでくれる。

 ニーノは、こくりとその水を飲み込んだ。


 それが何の液体なのかもわからないものを飲み続けていたニーノにとって、ちゃんとした水は、お菓子のように甘く、身体に染み込んでいく。


「その顔の布は、一時的なものだ。落ち着くまでは外すんじゃねぇぞ?」

 ベックの言葉に、ニーノは小さく頷く。それを見て、ベックは「よし、良い子だ」と目を細めた。

「ただ目が緑ってだけで、追われてこんな状態にさせられて。本当に辛かったな。もうしばらくの我慢だ。俺は貴族様じゃねぇから、楽な生活は約束させてやれねぇけどな。体力が戻ったら、安全な場所に連れていってやる」


 その言葉で、ニーノは悟る。

 連れていく、ということは、結局この人も自分を手離す気なのかと。そんな不安そうなニーノの瞳を、ベックはまた察してくれたようだ。苦笑してニーノの鼻を摘まんだ。

「俺は冒険者だからな。明日が無事とは限らないんだ。だが俺が生きている間は、ちゃんと責任持って会いに行くから。お前には、ちゃんと安心できる『場所』が必要だろう?」

 言われて、ニーノはゆっくりと頷く。

 安心できる場所。

 そんなもの、記憶がある限り、どこにもなかったけれど。


 そんなこと、ベックは知らない。

 ニーノの過去など、この能天気そうな男には興味もないだろう。


「まぁ、ここは俺が普段泊まってる宿だ。ここも理由があって、あんまり人はやってこない。安心していい。それより、しばらく何も食べてなかったんだろう?そんな状態でいきなり食べ物を入れたら、胃がびっくりしちまうから、今日は水を少しずつだけだな。明日になったら、様子見て、俺がお手製の重湯を作ってやる」 

「、、、うん」

 頑張って出したニーノの声に、ベックはまた、嬉しそうな顔を隠すことなく笑った。

「少し元気が出てきたか。良かった。じゃあ、ニーノはちゃんと寝ておけよ?寝るのも元気になるためには大事だからな」

「うん」

 ニーノが頷くと、ベックにわしゃわしゃと髪を撫でられる。

 ベックが立ち上がって部屋を出ていくまで、ニーノはその熊のようなベックの姿を眺めていた。

 ベックがいなくなると、急に眠気が襲ってくる。

 簡易的な安いベッド。もう秋も深まり、リンドウ帝国はオルトルーヤよりも早く冬がやってくるようだった。少し寒いが、布切れ一枚でも温かく感じるのは、きっと、毛布によるものだけではないのだろう。


 ベックの笑顔を思い出しながら、ニーノはゆっくりと目を閉じ、襲ってくる眠気に意識を手離した。



✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️



 翌日、約束通り、ベックはお湯に米を溶かしたような重湯を作って部屋に入ってきた。

 昨日と違って、身体はゆっくりとだが動くようになった。完治はしていないが、腐りかけた足が良くなったことが大きい。わずかに足を動かすだけで激痛が走っていたことを考えると、多少の痛みやだるさは我慢できた。

 ニーノは介助しようとするベックから、スプーンを自ら受け取り、自分で食べれることをアピールする。


「少しずつだぞ。気分悪くなるようなら、まだ止めておけ」

 言われてニーノは、恐る恐るその重湯をスプーンで口に入れた。飲み込んで、何の違和も感じない。

 吐気や痛みもなかった。

 むしろ、ほのかな塩味が利いていて、泣きそうなくらい美味しかった。

「、、、大丈夫」

「無理するなよ?」

「大丈夫」

 もう一度言って、ニーノはまた重湯を口に入れる。

 

 まだ自分の身体が自分のものでないくらいに重く、素直に動いてくれない。ニーノが必死に自分で食事をしている姿を、ベックはじっと、眺めていた。


 それから数日後、ようやくニーノは、ベッドから起き上がれるようになった。すぐに骨と皮だけの身体に肉がつくわけもなく、まだ足がもつれて倒れることもあったが、ずっと寝ているわけにもいかない。

 なんとか起きて、壁に手をついて歩く練習を始める。

 支えなしで歩けるようになった頃、ベックが荷物をまとめ始めた。


「、、、もう、行くの」

「俺がいない時に何かあったらと思うとな。ちゃんと常に誰かいる方が安全だろ」

 そしてまた、ベックの肩に担がれて、マントがかけられる。大きな身体に乗って揺られていると、小さい子供達がお父さんに肩車をしてもらっている姿が頭に浮かんだ。

 ニーノにそんな、子供の頃の記憶はない。

 気づけば親はおらず親戚という人の家に預けられていたし、その親戚もニーノに優しくしてくれることはなかった。裕福でも貧乏でもなかったけれど、いつもニーノの心は寂しかった。

 そういう意味では、たった数日だけど、昼間は殆ど側にいないけれど、それでも夜になるとニーノに温かいご飯を持って、くだらない話を楽しそうに笑って話してくれるベックといる方が、心が温かく感じていた。

 そして、今、ベックの肩に乗せられて揺られていると、父親とは、こういうものかもしれないと思う。


 大きくて、逞しくて、そして少し不器用で優しい。

 

 ベックは多分まだ20代後半くらいの歳だろうから、お父さんとか言われたくないだろうけど。


「、、、お父さん」

 マントの中でも小さく呟いたニーノの言葉は、ベックには聞こえてなかったようで、

「ん?なんか言ったか?」

と声がかかる。

「何でもない」

 ニーノは、本当に言葉にして呟いてしまった自分が少し可笑しくて、くすりと笑った。


✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️


 ベックが足を止めた場所は、スラム街から少し歩いたところにある、森の手前の孤児院だった。

 当初は白かったのかもしれないが、壁が劣化してあちこち黒ずんでおり、小さくヒビも入っている。

 大きな平屋の建物で、入り口からも見える庭は広くて、子供達が遊ぶ声が庭から響いてくる。

 楽しそうな声に、ベックもほんのり微笑んでいた。


 孤児院の玄関前に掛けられている小さな鐘を鳴らすと、全身黒い服で長いスカートの妙齢の女性が現れた。

「ベック。お久しぶりです」

 そう言って近づいてきた人を、ベックから下ろされて自分の足で立っているニーノは見上げる。

「マザー」

 ベックは破顔して、その女性とハグをする。

「元気そうで良かった」

「私はいつでも元気ですよ。それよりあなたはどうなのですか?だいぶ無茶をしていると聞きましたよ?」

「誰からそんなことを」

「フーイからですよ」

「あいつ、また余計な事を」

 ベックが苦い顔をすると、マザーと呼ばれた女性は吹き出すようにクスクスと笑った。

「あなた達は相変わらずのようですね」

「お陰様で」

 そして、マザーはちらりとニーノを視界に入れる。

「ーーーそれで?その子ですか。ここで預かって欲しいという女の子は」

「そうなんだ」

とベックは、ベックの後ろにいたニーノの肩を押して、前に進める。

「ニーノっていう。詳しくは言えないんだが、お願いできるだろうか?俺は冒険者としてあちこち行かなきゃいけないんだが、危険な場所が多い。こんな小さいやつを連れていくわけにはいかなくてな」


 マザーはベックの横にいるニーノに近づき、ニーノの目の前にしゃがんでニーノを見上げた。

「はじめまして。私はここの責任者で、マザーと呼ばれています。あなたはニーノというのね」

「、、、はい」

 ニーノは頷く。

「ここがどんなところかわかりますか?」

「、、、お父さん、お母さんがいない子供が引き取られるところ」

 聞いて、にこりとマザーは微笑む。

「正解です。ここはそういう子供達が集まって、自分達で助け合って生きていくところです。働くこともしますし、ここが楽だとは決していいません」

 ニーノは、ニーノを真っ直ぐに見つめるマザーを、じっと見つめ返した。マザーの茶色の瞳が、ニーノを映し出している。

「、、、それでも、あなたがここを望むのであれば、私達は歓迎します。ここにいる11人の子供達も、家族が増えることを喜んでくれますよ」 

 マザーはニーノを包み込むように優しく言った。

 その横から、ベックがニーノの肩をポンと叩いた。

「俺もこの孤児院の出なんだ。マザーには色々と感謝している。ニーノは賢いからな。ここにもすぐに馴染むさ」

「ベックはかなり()()()()でしたからね。随分と手を焼かされましたよ」

 マザーがからかうように言って、ベックは眉を下げる。

「マザー。それを言ったら俺の立場がなくなるだろ」

「こんなことでなくなるような立場だったら、そんな立場などないに等しいのでは」

 ふふふとマザーが笑って、それにベックの笑い声が続く。ニーノは、それを微笑ましく眺めていた。


 ベックが、仕事があるからとニーノの頭を撫でて、またくる、と言って去っていった。


 マザーと二人になったニーノは、マザーに手を握られて、建物の中を案内される。

 玄関から右に曲がって進むと、いくつかのドアが並んで見える。その手前のドアをマザーは開けた。

「ここがあなたの部屋になります。ここは二人部屋ですから、もう一人、この部屋を使う子供がいます。また後で紹介しますね」


 そう言って、マザーは次の場所に連れていく。

 次は正面玄関から真っ直ぐ進んだところに位置する場所で、大きく開けていた。

 奥に祭壇があり、その上に蝋燭と、三角形が集合した奇妙な形のオブジェが乗っている。

「ここはお祈りの場です。元は教会でしたので、日曜日になると、人が祈りにくることもあります」

 

 リンドウ帝国の教会では、『スクナ神』という神を祀っている。唯一神であり、その神が時々、地上に降りてきて恩恵をもたらす。

 

 昔はスクナ神の信者が多かったようだが、聖魔法を使える人でも『祈り』という形で恩恵を与えてくれるため、少しずつ信者は減っていったという。

 そして高度な聖魔法の使い手である聖女は、神のように重宝される。

 リンドウ帝国に1人現れたという聖女の噂は、隣の国の住人であったニーノの町にも聞こえてきていた。


 今は神より聖女の時代がきているのだろう。


 ニーノは寂れた祈祷場を越えて、食堂に向かった。

 食堂は祈祷場と同じくらいの大きさで、長細いテーブルが一つだけ、部屋を占領するように置いてある。


「ここで皆で集まって食事をします。時間は厳守ですよ」

 マザーはそうして、一つ一つ、丁寧に孤児院の中を説明してくれた。

 朝は五時に起きること。まずは朝の掃除を行う。

 食事の支度は当番制。朝食が終わると午前中は畑で農作業と、一角で飼っている鶏と山羊の飼育。

 昼食終わると、一時間の運動のあと、内職作業。そして夕食のあと、一日の汚れを綺麗にするために掃除を行う。

「難しそうでも、やってみるとできるものですよ」

 やんわりとマザーは諭す。

 ニーノは小さく頷いた。


 ニーノはオルトルーヤ国の親戚の家では同じようなことをやっていた。多分大丈夫だろうと思う。


 その時、バタバタと遠くから元気に走るいくつかの足音が聞こえてきた。

「マザー!新しい子って、その子?」

 大中小の子供達が食堂に入ってくる。

 ニーノと同じくらいの年の色黒の男の子が明るく笑った。

「こら、走りませんよ」

「ね。何歳なの」

 まだ3歳か4歳くらいの小さな女の子が、男の子の後ろからひょこりと顔を出して、はにかむ。

「、、、5歳」

と、ニーノが返事をすると、その横にいたニーノよりも年上だろう、シャープな顔の女の子が「ほら」と、小さい子をからかうように笑う。

「どうみてもエミリーより年上じゃない。エミリーはお姉さんにはまだなれないわね」

「お姉さんになれるかと思ったのに」

 ぷく、と頬を膨らめるエミリーという子供は、愛嬌があって可愛い。そんなエミリーに目を奪われていたニーノに、手が差し出される。

「俺、カーター。6歳だから、俺の方がお兄ちゃんだな。困ったことがあれば何でも聞いてくれ」

 カーターは笑うと八重歯が見えた。ニーノはその手をおずおずと握る。

「名前は?」

「、、、ニーノ」

 ニーノの返事に、年上の女の子も手を差し出した。

「私はアリア8歳。あと上に2人、私より年上がいるわ」

「マザー合わせて全部で12人」

 アリアの言葉にエミリーが可愛く付け足してくる。

「これからはニーノも、家族の一員だな」

 カーターがそういって、残る二人が頷いた。

 孤児院というから暗い瞳をした少年少女を勝手に思い描いていたが、三人の明るく、目が生き生きとしている表情に、安心感を覚える。

 マザーが、手を軽く打ち鳴らして、「よくできました」と優しく微笑んだ。

「ジャックの言う通り、これからはニーノも、ここの家族の一員になるのです。仲良くしてくださいね」

「はぁい」「はい」「わかったわ」

 それぞれが頷く。

「では、今はまだ、農作業の時間ですよね?ちゃんと各自、決められた場所に戻ってくださいね。カーターは、ニーノに農作業について教えてあげてください。家畜についてはアリアが説明を」

「エミリーは何を教えたらいいの?」

 エミリーはマザーを見上げる。マザーはくすりと笑って、エミリーの頭を撫でた。

「エミリーは、ここでの運動と遊び方を教えてあげてくださいね」

 言われて、ぱっとエミリーは頬を染めて破顔する。

「うん!わかった!」

 そして、ニーノの手を握りしめて、庭に向かって走り始める。

「遊ぶ場所はこっちだよ」

「えっ」

 今から、カーターに農作業を習うはずでは。そういう隙もなく、ニーノはエミリーに連れていかれる。

「あらあらまぁ。エミリーったら」

 困ったように、マザーは小さく微笑んだ。


✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️


 それから二週間は平和だった。元々、親戚の家で雑用をさせられていたニーノは、孤児院での雑用の仕事を覚えるのも難しくはなかった。

 急に新しく入ったニーノを虐める人もおらず、すんなりと孤児院の子供達はニーノを受け入れてくれた。


 裕福ではないが、ちゃんと味があってそこそこ腹の膨れる食事をさせてもらえ、叩かれることも貶されることもない。

 同じ年頃の子供達が、楽しそうに笑う姿を眺めていると、少し戸惑いもあるものの、自分もここにいていいのかもしれないという気持ちになってくる。

 少なくとも、もう泥水を飲むことも、毒があるかどうかもわからない雑草を食べて生きることはしなくてよさそうだ。

 このまま、ここの明るい子供達と、優しいマザーと共に成長できれば。ーーーーそんなニーノのささやかな願いは、あっさりと打ち砕かれた。



 その日、孤児院が襲撃された。


 明らかに、ニーノを狙っての事だった。



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