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救い主達が静かにやって来る  作者: 五島伊織庵
9/23

     二

 東部からアリゾナ州の鉄道駅に着いた汽車から、大勢の開拓移民達がホームへと降り、その中にズタズタになり果てた修道服姿の若い女性がいた。数日前、謎の化け物どもの襲撃に遭い、辛うじて脱出に成功した、あの見習いシスターである。

 すっかり疲れ切った表情で駅を出て、誰からも相手にされず、ただ夢遊病者の如く町を歩き回っていたのだが、道に倒れていたところを、教会の主任司祭に助けられ、手当てを受けたのだった。

「あなたは、うちの修道会の者とお見受けしますが、一体、何があったのですか?」

 ベッドに起き上がり、泣きながら理由を話した彼女の言葉に、司祭は思わず戦慄が覚えた。まさか、ずっと離れた場所でそうした恐ろしい事が起こっていたとは……!

「まぁ、とにかく。折角、主があなたをお助け下さったのですし、その御恩に報いるためにも、ここで引き続き、見習いとして生きては如何ですか?」

 願ってもいなかった司祭からの言葉に、少女はますます大泣きして何回も何回も、頭を下げた。

 こうして、その少女、リアは新たな修道院で見習いシスターをさせてもらえる事となったのである。

 周りにいる他のシスター達も、リアの身の上を知ってからはみんな本当に親切にしてくれたため、彼女もみんなへの恩返しにと一生懸命、修行に励んだのだった。

 しかし、その幸せも長くは続かなかった。

 ある日、リアが礼拝堂にて祈りを捧げていると、何たる不運な事か、数日前のあの化け物どもがまたしても、彼女を襲ったのだ。

 突然の事に、司祭や修道女達は為す術もないまま、皆殺しにされてしまったのである。

 またしても独り生き残ったリアは、自らの運命を呪いながらも化け物どもを操っている真犯人を見つけ出し、きっとこの手で殺してやると決意し、シスターになる道を捨て、彼女自身もガンマンとなる人生を選んだのである。


 「事情は解った。そうも迷惑しているのなら、俺達が何とかしよう」

 シモンズの話を聞いたヘススは、二つ返事で彼からの頼みを引き受ける事にしたのだ。

 シモンズは初め信じられないと言わんばかりの顔をしていたが、

「本当かね? 奴らを始末してくれるのかね?」

 改めて食い付かんばかりに訊ねると、ヘススは「ああ」とだけ答える。

 次の瞬間、まるで死刑になる筈だった囚人が無罪になった時みたいに顔をくしゃくしゃにして喜んだのである。

「ああっ! まるで夢みたいだ! 我々の頼みを聞いてくれる人が現れるなんて」

 同時に、彼の両眼からは大粒の涙が流れ落ち、ほんのちょっとだけ、ヘススとライアンは違和感に襲われた。

「今みたいに泣きたいほど、長い間ずっと苦しめられていたのか?」

 躊躇ためらいがちにヘススが訊ねると、シモンズは大きく頷く。

「もう、七年以上にはなる。さっき説明した理由で対立して以来、奴らと戦わずにいられたのはほんの数日しかない。我々は銃の扱いや戦術には疎いから、向こうからすればこっちなんか暇潰ひまつぶし程度に過ぎん。だが、君達が味方になってくれるだけで十分過ぎるほど戦力になる。いゃあ、本当に有り難い事だ!」

 一人泣いて喜ぶシモンズを前に、ヘススとライアンは随分と辛い七年間を生きて来たんだなと、複雑なる心境となった。

 そうした理由により、二人はシモンズが長を務めるソルテ村に迫る盗賊団を退治する事となったのである。

 次に奴らが襲って来るのは二日後だと聞いたので、ヘススとライアンは交代で見張り、村人達には罠の仕掛け方を教えた。

 そして、二日が経ったある日、ライアンが高台にて見張っていると、遠くから馬に乗ってやって来る大群が見えた。はっきりとは判らないが、少なくとも三十人はいると思われる。

「来たぞーっ!」

 ライアンの叫び声を受け、ヘススは村人達に隠れろと命じ、下りて来たライアンと共に各自のライフルで武装し、迎撃体勢に入る。

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