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救い主達が静かにやって来る  作者: 五島伊織庵
17/23

    五

 誰から話そうかと考え、出会った順に話す事になり、初めはヘススから語り始めたのである。

「俺は中部のミズーリ州にある、セントルイスで生まれた。だけど、両親は俺が生まれる前に別れて、母親に育てられたから、父親の事は判らないんだ。元北軍の白人であるのを除いては。母親はアメリカへ出稼ぎに来たスペイン系メキシコ人で、敬虔なカトリック信徒であった事から恵まれない人達に読み書きや計算を教えるなど、仲間達と慈善活動を行なっていたんだ。ところがある時、一人の男が母親を好きになって関係を迫ったんだが、神の教えに反する事は出来ないと断り、その理由だけで母親はその男に殺されてしまった。まだ幼かった俺は母を殺された時、彼女を返せと泣きながらその男にぶつかったものの、あっさりと殴り飛ばされてしまい、咄嗟にそばにあったショットガンで奴を射殺し、そのまま街を飛び出して以来およそ十三年間、荒野を転々としながら生きるために銃の技を磨いて来たんだ」

 ヘススが話し終えると、ライアンとリアは如何にも同情していると言わんばかりの表情を見せる。

 続いて、語り手がライアンになり、彼はまるで詩人の如く話し始めたのである。

「俺はネバダ州の片田舎で生まれ、小さな頃から盗賊団を組織していた両親のもとで銃や悪い事ばかりを躾けられて育った。しかし、村の神父から聖書の教えをずっと聞かされていたのもあり、両親の阿漕な生業に異を唱えるも、その度に酷い目に遭い、一時はリンチにかけられそうにもなるが、今から何年か前にその両親と子分達も騎兵隊に捕まり、みんな死刑になったものの、俺は前述の通り両親に反発してたから、結果的には何の罪にも問われなかった。判決の後、一度は施設へ入ったんだが、やがて荒野へと飛び出してさすらいのガンマンに転じ、用心棒などで生計を立てながら、今日に至るって訳だ」

 話し終えると、ヘススとリアは余りの美しい語り方に思わず拍手を贈った。

 そして、最後にリアの番となり、二人はドキドキしながら彼女のふんわりとした語りを聴いたのである。

「私はペンシルベニア州のフィラデルフィアに生まれ、元々は資産家の令嬢として豊かな生活をしていた。だけど、南北戦争で家が没落して、両親は私を残して失踪し、途方に暮れていたところを神父に助けられて、やがてシスターとなるために女子修道院に入ったの。ここからは今になったからこそ話せるんだけど、実は、他のシスター達には内緒で銃の使い方も習っていたの。まさか、その経験がこうした形で役に立つなんて、皮肉としか答えようがないわね、ハハハ」

 苦笑しながら締め括ったリアの様子を見て、ヘススとライアンも思わず笑い出してしまったのであったさ


 その頃、シャイターンが執務室にて何か書類を認めていたところへ、神官の一人が情報を知らせに来た。

「シャイターン様。例の街へ悪霊どもを大量に差し向けましたが、またしても逃げられてしまいました。申し訳御座いません」

 その知らせを聞いたシャイターンはちょっとペンを止め、

「うむ。思っていた通りか。この奇襲でさえ奴らを仕留められぬのであれば、前世からの力を受け継いでいるのは間違いない」

 独り言みたいに呟き、

「すぐに殺す事はない。じっくりと攻め、苦しめながら向こうが音を上げるのを待つのだ」

 如何にも自信満々と言わんばかりに命じ、神官が退室すると、またペンを走らせたのである。

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