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救い主達が静かにやって来る  作者: 五島伊織庵
14/23

    二

 街に入った三人は馬上からその様子を見て、一見、華やかだがどうも違和感もあるなと思っていた。そして、その理由はすぐに判った。

 少し進んで行くと、路地裏から急にチンピラ共が飛び出して来るや、ハンドガンをバンバン打ち鳴らしながら、

「ようようよーう、街の野郎共っ! 今月分の金は払ったんだろうなー? まだだって奴は、あと三日以内に払っちまえ! さもねぇと、街のおきてで絞首刑にしてやるからな! この街は、ボスのステッドラーさんのおかげで潤っているんだぜー!」

 と、乱暴にわめき散らすではないか。

 奴らの催促を聞いた街の人達はみんな慌ててその場を走り去り、三人も不快感を露わにする。

「この街は、俺を陥れたボスのステッドラー親子が裏で違法な商売を行なって、やりたい放題に支配しているんだ。そうでないなら、こうも治安が悪い訳がない」

 ヘススがポツリと呟き、ライアンとリアも納得する。

 だとしても、取り敢えず宿を見つけなければならなかったので、街の中を進んでとある一軒のホテルを見つけ、馬を柵に繋いでから建物内に入ると、三人はブーツの音を響かせて受付に行き、

「部屋は三人分、空いているか?」

 ヘススが訊ねると、支配人は「はい」と少し怯えた様子で答え、チェックインすると三人に震える手で部屋の鍵を渡す。

 まだ昼過ぎで、食事も摂っていなかった三人はホテルの一階にあるバーにて昼食を済ませ、バーテンと支配人に街の事情を改めて訊く事にした。

 すると、二人は大粒の冷や汗をかきながら恐る恐る話し始める。ヘススの予想通り、このサン・ジュリアンでは誰もがステッドラー親子の事をいい目で見ておらず、アウト・ロー達ともつるんで若い女性の人身売買等を行なって荒稼ぎしていると言うのである。どうすれば二人に会えるのかと訊ねたところ、親子は旅行に出掛けていて、明日の夜には帰るとの事だ。

 ならば、待ち伏せして接触しようと思い付くが、ヘススが脱獄しているのはこの街のステッドラー親子から賄賂をもらっている悪徳保安官にも既に知れ渡っているのは目に見えていたため、支配に向かい、

「金を払うから、俺達の事は黙っていてくれ。頼みを聞いてくれたら、殺しはしねぇ」

 そう言うと、殺したアウト・ロー達から失敬した金の入った袋をカウンターにドンと置き、支配人も余計な事には干渉しないのが西部の掟である事は解っていたので、黙って言う通りにした。その後、案の定ホテルに悪徳保安官が訪ねて来ても、支配人は知らぬ存ぜぬで通す。一方、部屋に隠れていた三人も、万が一に備えて常時迎撃出来る体勢を取っていたのである。


 翌日の夜になり、三人が寝ずの番で部屋の窓から監視を行なっていると、昨日のアウト・ロー達や悪徳保安官が街の入り口に集まって来たのでまさかと思っていると、遠くの方から馬のいななきと馬車の走る音が聞こえて来て、

「いよいよ来たな」

「ああ」

「ケリをつけましょう」

 各自のハンドガンを装備した三人は密かにホテルを抜け出し、入り口近くの物陰に身を隠す。

 やがて馬車が街へと入り、停まった馬車からは大柄な体に黒い帽子とスーツ姿の五十代と思われる紳士と、同じく黒いスーツを着たほっそりとした不良っぽい顔の青年が降りて来て、アウト・ロー達や悪徳保安官からの迎えを受ける。

「お帰りなさいませ、ステッドラーさん」

「道中はお疲れ様です」

 砂地に降りたボスのジョン・ステッドラーは御者に荷物を降ろさせながら、

「出迎えご苦労。変わった事は、なかったみたいだな」

 みんなを労う。

 月明かりで何とか二人の姿を確認した三人だったが、はやる心を抑えられず、物陰から飛び出したヘススにライアンとリアが気付いた時には、彼はそのまま大股で歩み寄り、親子に声をかける。

「おい。ステッドラーだな?」

 ヘススの突然の声かけに思わずびっくりしたジョンと息子のジム・ステッドラーに、周りにいたアウト・ロー達や悪徳保安官も慌てて腰のガンベルトに手を遣ろうとするが、

「待て。つまらねぇ争いは起こしたくねぇ。銃は抜きだ」

 ヘススが止めた。

「何を、こいつめ!」

 アウト・ローの一人が静止を振り切ろうとするが、一瞬、ジョンと目が合い、ボスが厳つい表情で顔を横に振るのを見て、辛うじて思い留まったのである。

「何かね、君は? 一体、何の用だね?」

 口髭を生やしたジョンは何故、声をかけられたのか全く判らなかった。

「とぼけてもダメだ。俺の事を覚えているだろ?」

 ヘススは更に詰め寄る。

「知らん。私は君など知らん。何の事だ?」

 ジョンが尚も判らないでいると、

「人を裁判にかける時はその面をちゃんと拝んどけ!」

 ヘススは彼の顔に自らの顔を近付ける。

 すると、少し見てからステッドラー親子二人は裁判と聞いて考えた末、

「ま、まさか! 君はあの時の?」

「お前、生きていたのか!」

 ジョンとジムは驚いて狼狽うろたえる。

「そうだ。俺はあの時、お前らに無実の罪でムショに送られたヘススだ。今日は、お前らに用があって来た。危ない思いをしてな」

 そう告げたヘススに対し、

「何が目当てなんだ? 金か? 土地か?」

 ジョンは震えながらも、無理に怖い顔をして訊ねる。

「どっちも興味はねぇ。本当の事をそこの悪徳保安官と判事に伝えてもらいたい。あの裁判はデタラメだったから、本当に非があるのは息子だったって事を、正直に話して欲しいんだ」

 ヘススが訴えると、悪徳保安官はドキッとし、支配人の奴、騙したなと怒りが込み上げかけるが、ステッドラー親子の手前、面倒を起こさないのが大人だと思い直し、グッと堪える。

 そして、彼の言葉を聞いたジムは真っ青になる。

「ちょっと待て。確かに、判事や検事を金で買収したのは事実だ。しかし、そうなったのにはやむを得ない事情があったんだ!」

 思わず叫んだジョンだったが、

「やむを得ない事情って何よ? ヘススを冤罪で刑務所にブチ込んでおいて!」

 いつの間にか物陰から出て来ていたリアが激怒して食ってかかろうとするのを、

「落ち着け。ヘススの話だ。俺達が口出し出来る事じゃねぇ」

 後について来たライアンが何とか窘めて止めた。

 一方で、初めのうちはちょっと興奮していたヘススだったが、相手にも何かしらの理由があると知り、

「一体どうなっているんだ? 何で俺に罪を被せるだけの苦しい立場にあったんだ? よかったら、その理由を話してくれないか?」

 と、ヘススは訊ねたのである。

 すると、ボス親子は少し話しにくそうに語り始めたのである。

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