表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

男の話

作者: 喜々

 

そこの人、少し俺の話を聞いてくれないかい?


廃れた世界。全てが灰色に見えた。この世界でモノを得る方法は貨幣のほかに対価で払う方法がある。対価に見合うモノならなんでも手に入る。金でも、女でも、夢でも、寿命でも、命でさえも。貧しい人々は家族を養うために己の寿命を対価に金を得る。労働力なんて対価じゃ暮らしていけないほど貧しいんだ。臓器や四肢を対価にする奴もいる。裕福な奴らは貧しい人々の臓器だの寿命だのを買い取って馬鹿みたいに長く生きる。笑えてくるだろ?

 

 こんな世界で今日まで俺は生きてきたんだ。全てを対価として差し出し、家族のために犠牲となった死体がそこらに転がるこの場所で寿命を少しずつ売りながら、なんの目的もなく生きてきたんだ。俺には家族がいないから、人のために犠牲になろうとする奴らが理解できなかった。寿命を少しずつ削って、必要最低限の暮らしで今までもこれからも生きていこうと思っていた。彼女に出会うまでは、な?

 

 彼女は阿保みたいにお人好しなんだ。家族がいない子供達を食わせるために寿命だけでなく両眼を売るほど。初めて見かけた時は聖母かと思ったよ。灰色に見えていた世界が一瞬でも明るく見えたんだ。こんなひどく優しく、愚かな彼女に惹かれたんだ。彼女の瞳を見てみたいと思った。きっと綺麗な色だったことだろう。

俺のこんな濁った瞳とは比べ物にはならないほど、透き通った色だったに違いない。

この時初めて目的ができたんだ。すぐ実行に移したよ。

「俺の眼球と、全ての寿命を彼女に。」


ありがとう、俺の話を聞いてくれて最後に一つ頼まれてくれないかい?

俺の命ももう尽きる。この路地を少し行ったところに彼女が暮らしてるんだ、どんな瞳をしているか見てきてくれないか?

きっと美しい色だろうよ。

読んで頂きありがとう御座いました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ