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囚人番号 002番

全く。たった3人しか収容されてないのに1日で2つも面倒事が起きるんじゃたまったもんじゃない。

俺はただ投獄生活という規則正しい生活を送りたいだけなのに何故こうもサイコパスなどという奴らがいるんだ。



ジョニーが手の皮を引きずって去っていき、僅か15分ほどだ。15分で奴は戻ってきた。俺が固めた手の皮はそのままだったが身体のあらゆる部位が溶かされ筋肉が剥き出しになっている。


ジョニー「た、た……助けてくれぃ……!や、奴ぁ!イカれてる!!イカれてやがるぅ!」


モンジィー「助けを求めにきたようだが生憎俺には何もできない。理由は言わなくったってわかるだろ。」


ジョニー「あ……あ……」


俺が助けを断った直後奴は何処かに引きずられていった。そして俺の見えないところでバリボリグチャっとおかしな音が聞こえた。どうせ奴が喰われてんだろ。まぁ、この世界じゃゴロツキ、しかも小物となっちゃそんなことは当たり前だ。

とは言え人を喰うことができる能力ってのは危なっかしい。俺は鉄格子の外をひたすら睨んだソイツが出てくるまで。


そして現れた。あのガキだ。さっきは下ろしていた前髪を今度は一丁前に後ろにかき上げてやがる。

奴が前髪を下ろしていた理由がなんとなく、いや確定でわかった。奴は複数の能力保持者だ。


能力ってのは多分こいつの場合、一つ、人間の皮膚を溶かしちまうような何かを出すこと。二つ、人間を丸ごと喰える機関を持つこと。三つ、これはまだ分からねぇが目に何かしらの能力を持つことだろう。


この世界の人間は大抵1人につき一つの能力しか持たねぇが稀に、具体的にいうと数十万人に1人、二つの能力がある奴がいる。三つ以上だともはや何十年に1人ってレベルだ。


それが今俺の目の前にいるガキ、確か……アラガとか言ってたな。っていうかこんな危ねぇ能力な上に無意味に人を殺して表情一つ変えねぇ奴がクラスBって……俺の扱いはどうなってんだ。


アラガはしばらく俺を見つめていたが品定めってとこだろう。少し間を開け、奴が動き出した。奴が出したのは……鼻水!?鼻から鼻水を高圧で出してきやがった。ジョニーのようにそこまで連射性はねぇから避けられるものの、奴の鼻水は岩でできた壁を溶かす程の溶解性をもってやがる!


しかも、さっき俺は避けられると言ったがそれは間違いだ。野郎、わざと外してやがる。何のために……    と疑問に思ったところで俺の手が自分の後頭部を掻いていることに気がついた。


鎖が溶かされている。


アラガ「クゥゥゥゥ………フンッ!!」


大きく息を吸い特大の鼻水を出し、鉄格子も溶かした。丁度俺が通れるくらいの大きさだ。


出ろってことか。………が敢えて出ない。


どうせ出たところで奴は俺を餌としか考えてないだろう。それにもし奴に勝ったとしても俺は脱獄なんていうしようとも思ってない罪を着せられる。どんな酷い目に遭わされることか。ならば、俺の庭で……って言ってもまだ来て1日なんだが……ここでぶちのめした方がまだこいつに罪をなすり付けられる。


俺はその場で仁王立ちをした。


奴も敢えて俺の考えに乗ったんだろう。鉄格子の溶けた後から独房に飛び込んできやがった。


血の混じったヨダレを垂らし間合いをとっている。

俺は拳と拳をぶつけ合い、拳を固めた。俺が固めたジョニーの手もなんともなかったってことはこれで一応奴の鼻水に手で触れても平気だ。


奴が飛びかかり噛み付いてきた。俺は左腕を顔の前に持っていき防御の姿勢を取った。固めた腕で防御しているが奴の顎の力は想像以上で二の腕から肩にかけてまで激痛が走った。だが、口を開けたままのこの状態がチャンス。奴の頬を右手で思い切り殴りつけた。これで口は開いたまま閉じることはできない。左腕を奴の口から抜こうとするが今度は奴は両手で俺の左腕を強引に喉の奥に突っ込んだ。


どんだけこいつの口内は広いんだ!?


右手で奴の手を殴ろうとするがすべてかわされる。

この至近距離でだ。俺の左腕はどんどんと奴の体内へ飲み込まれていく。喉の奥にも歯のようなものが返しとして生えていて抜くことができない。とうとう左腕は膝まで飲み込まれた。そこからさらに奴は鼻水を垂らし、その鼻水は俺の肩に落ちてきた。

ジョニーの身体のように俺の肩もジュワジュワと音を立てて溶けていく。激痛に顔を歪めながらも蹴ったり殴ったり繰り返すが何故かすべて的確に防御される。


アラガ「アガァ……お前、僕の眼のこと、忘れてない。」


口を開いたまま話してきた。口の構造上、声帯も独特な作りをしているんだろう。


アラガ「通常、人間の網膜は十層で構成されている……でも僕の網膜はその二十倍……二百層の特殊な組織でつくられている……お前の動きをスローモーションで読み取ることなんて容易い……これが僕の三つ目の能力さ……」


解説するほど余裕なのはよく分かった。


めちゃくちゃ痛いが、俺は肩についた鼻水を右手で腕に塗りたくり奴の口内で俺の左腕の筋肉を溶かしてやった。奴は溶けた皮膚を舌で舐めまくっている。


アラガ「ペロォ……う〜ん♪おいしい♪……俺の口内が僕自身の溶解液で溶けると思ったか……?この液体は人間を食べやすくするための物……僕自身に耐性が有るのは…当たり前……」


幸福に満ちた目でそう言っている間に俺は右手奴の口へ突っ込み溶けた左腕の皮膚を口内を固めた。俺の腕と奴の下は一つの物体になった。


モンジィー「そうやって喋くってるからこうなんだ。」


アラガ「あ……?ウゴッ…!!」


奴が俺の溶けた皮膚を舐めまくったお陰で口の中全体は俺の皮膚で塞がれ、奴は喋るどころか呼吸さえまともにできなくなった。


奴は爪を立てて俺の体を押し、左手を引き剥がそうとするが呼吸ができていない奴の力は大したことなかった。


モンジィー「さて……テメェの口は俺の左腕とくっついて息が出来ずに身動き取れないわけだが……俺が動かせないのは左腕だけだ……テメェよりは動けるぞ……後は分かるな?」


俺は右手で奴の呼吸の最後の頼みの綱である鼻を端折り、奴の顔面に連続で何度もチョップを喰らわせた。俺の能力は拳で殴らないと発動しない。だから奴が固まっちまう心配もない。


最後にくっついた左腕を強引に引っ張り出し、奴の口内の皮は俺の左腕と一緒に引きちぎられた。


俺の独房はそこら中、血に濡れた。


アラガはその場に倒れて血反吐を吐きながら失神している。俺は看守を呼び、腕の治療と奴のことを告げた。


後で分かったことだが奴はあの後、常に人工呼吸魔法を使用されないとまともに息すらできなくなったらしい。俺は何とか正当防衛ってことで看守から数発殴られる程度で済んだ。


この件で流石に群れるのが嫌いな俺もこれからはもう少し他の奴とうまくやってけるように心がようと思った。

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