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囚人番号001番

さて投獄され早速鎖に繋がれた俺は誰もいない地下で揺れる松明の灯をずっと眺めていた。たまに手をバタつかせて鎖をジャラジャラと鳴らしてみるがそれらに特に意味はない。


正確な時間は分からねぇが30分ほど経つと早速飯が運ばれて来た。飯を食う時は口と食器に手の届く最低限の長さの鎖と取り替えられる。で、肝心の飯ってのは見た目は最悪なんだが意外と悪かねぇ味なんだ。一応人権とやらが守られているらしい。ものの数十秒で平らげると看守が皿を下げてくれた。


その日はそのまま消灯で俺も大人しく寝たんだ。問題は次の日だ。看守が鳴らす鐘の音で目を覚ますと俺の前に3人の男が立ってた。


1番右に看守。左には細身な刺青をいれたハゲ。真ん中には目が隠れるほど長い前髪のガキだ。2人とも絵に描いたようなしかめっ面でこっちを睨んでやがる。もっとも真ん中の奴は視線がどこ向いてんのかわかんねぇがな。


看守「囚人番号001!今日、ここに配属されたチベットだ!そして右から囚人番号002番 アラガ・ス=ペテルと囚人番号003番 ジョニー・サラスミスだ!002番と003番はこの回の一つ上、クラスBに収容する!以上だ!」


とまぁ自己紹介されたんだがぶっちゃけ興味なかった。俺はどうせ動けないし違う階だ。会うこともないだろう。と思った。


それとクラスBってさっきの看守が言ってたが「クラス」ってのは囚人の犯罪経歴、身体能力、魔力なんかを考慮した総合的な危険度のことで収容される場所も変わってくる。俺が今いるのはクラスA(特殊独房)で、いわゆるスイートルームって奴だ。全部でA〜Eまでの四段構造で上の階に行くほど放飼いにされるらしい。


前言撤回だ。あいつらとも頻繁に会わなくちゃいけなくなった。クラスBでも自由に出歩けるようで早速ハゲが鉄格子から顔を出してきやがった。


ジョニー「よぉ、先輩。」


街の隅っこにでもいそうな小物だ。相手にする必要ねぇなと思って無視してやった。


ジョニー「ふぅ……ほんと刑務所暮らしはやだねぇ……」


その割には楽しんでるように見えると思ったが無視は安定だ。


ジョニー「なんか言えよ。」


モンジィー「………」


ジョニー「おい!」


鉄格子を蹴ってきた。が、知らんぷり。その時、俺は本能的に危険を悟って頭を地面スレスレまで下ろした。振り返ってみると壁には何かが刺さってた。


モンジィー「爪っ…!?」


まるで奴の爪が付け爪のように指から剥がれて飛んできていた。


ジョニー「やっと反応したか。モンザイザイ先輩よぉ!」


また来た。奴が一体何をしたいのか分からねぇが、一応短期で怒ると爪を飛ばしてくるのは分かった。


俺は手首に繋がれた鎖を腕に巻き付け短くし、吊り輪のように身体を持ち上げ、胴体を床に向けて足を壁につけ、避けた。爪が刺さったのはさっきまで俺の顔があった場所だ。


ジョニー「ヘッ…今のを避けたのは流石ってところだがぁ、繋がれた鎖でしか動けない図体のデカいだけの奴ぁ、ただのお祭りに使われる的なんだよっ!!」


次々に発射される爪。俺は鎖にかける体重のバランスと壁につけている足の位置を変えて急所に当たることは避けた。だが、壁に繋がれている以上腕や足に爪が刺さるのは避けれなかった。ガキの頃サボテンに刺されたことはあるがまるでそのサボテンで殴られているような痛みだ。それだけ奴が爪を飛ばすスピードが速いんだろう。


ジョニー「なかなかやるなぁ!まさかここまで打って一発も急所に当たんねぇたぁよぉ!」


飛んでくる爪の数がさらに増える。どんな能力だ!?


だが、そんなことはどうでもいい。このまんま一方的な展開はごめんだ。奴の爪を交わすのをやめて少々まともに攻撃を喰らうが腕に巻いた鎖を解き拳で足を殴りつけ固くした。体中が爪に刺されたがこっからは俺の番だ。


固まった足で飛んでくる爪を全て蹴り返した。


ジョニー「なにぃ!!?何故刺さらん!?」


自分の爪が返ってくることは予想外だったらしく刺さった爪を見つめながら数歩退けぞる。


ジョニー「馬鹿な……俺の爪が俺に……だがぁ!俺の武器は爪だけじゃねぇぜ……」


今度は腕を鉄格子の中に突っ込んできたと思えば奴の手はどんどんと大きくなっていった。いや、実際には奴の手の「皮」が面積を広げている。


ジョニー「見たか!?これが俺の能力ぅ!俺は皮膚の細胞が分裂する速さを自在に操れる!このまま貴様を手で飲み込み、窒息させてやる!」


奴の皮が身体にまとわりつく。不味い。息が苦しいのもそうだが、何より気色悪い。奴はトイレのあと決して手を洗わないタイプだ。汚い手で全身を包まれるなんて絶対に嫌だね。


片方の鎖を奴の伸びた皮に巻き付け包み込まれた自分ごと殴る。奴の皮は固まり鎖に縛られた状態になった。


ジョニー「!?何が起きた!?て、手が動かない!!」


モンジィー「さっきから1人でギャアギャア盛り上がりやがってよぉ!」


固まった皮膚を足で踏みつけてやった。


ジョニー「ギィァーーー!!」


モンジィー「うるせぇからって無視してりゃあもっと喚きやがって!!テメェと同じ階にいるガキと遊んでりゃいいだろうが!!俺はテメェみてぇな小物とつるみたかぁねぇんだよ!!」


ジョニー「う、わぁ、分かった!!分かった!!帰る!帰るぅ!!」


何度も何度も踏みつけて奴の手には俺の足跡が真っ赤になって残ってた。


ジョニー「こ、この手はいつになったら治んだよ!」


モンジィー「殴るもんによるが最低でも1週間は固まったままだ。とっとと帰れ!トンチキが!!」


奴は涙目になり腫れ上がった皮を引きずりその場を後にした。


俺はどうせ今度はあの前髪伸ばしたガキが来るんだろうなぁなんて思いながら身体のあちこちに刺さった爪を抜いていった。

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