第2章 「赤星」02
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翌日………。朝から、桜紡の案内のもと、4人で日本の観光に出掛けていた。時代とともに、街並みは変化していくが、歴史的な建造物は、当時の形を残し、古来の日本の文化を今に伝えている。トリルとディアは、始めて触れる、日本の歴史に感に堪えない様子であったが、僕は、子供の頃の記憶とは、隔世の感があった。
一通りの観光を終え、帰路に付く頃には、日も暮れ、僕たちの姿は黄昏れに紛れていた。
「今夜は、いよいよ例の謎解きの夜だね。なんか私、わくわくしてきた。夕食食べたらすぐに向かいましょ。その頃には、ファウストさんも来るからね」
桜紡の家で夕食を済ませ、僕は3人を実家へ案内した。実家の近くまで行くと、玄関前に背丈の高い、大柄な人影を見つけた。
「やぁ!4人とも今日はよろしくネ」
ファウストさんだった。欣快に耐えない表情をし、胸を弾ませている様子だ。
「こちらこそよろしくお願いします」
4人で軽く会釈をし、僕たちは、早速、祖父の書斎がある地下へ向かった。僕は、書斎の入り口付近で、白熱電灯を付ける。約1カ月前と変わらないその部屋が、僕たち5人の目の前に現れた。
「うぉ!凄い数の本と資料だ!学究的で、感銘を受けるよ!」
「暗い、狭い、じめじめ。だけど………温かい気持ち?」
「先生らしい。机の上が資料で散らばっていて、大学の先生のデスクと同じものを感じるヨ」
トリルは、興奮で声を震わせて、ひときわ生彩を放っている。いつもは、あまり物事に対する関心を表に出さないディアも、目を見開き、モチベーションが高まっているのがわかる。ファウストさんは、祖父の面影を感じ、感傷に浸っていた。
「みんな、こっちだよ。これが例の扉」
5人で扉の前に佇立する。
「先に、私がわかる範囲での意見を述べても?」
口火を切ったのはファウストさんだった。
「私が、確かにわかるのは、この数式のみダ。これは、現在確認されている宇宙の現象を数式として表したものだネ。この数式自体は、100年前には既に存在していたものダ。素粒子の標準模型の作用に、アインシュタイン=ヒルベルト作用を加えたものだネ。だが、残念ながら最新の研究では、この数式だけでは、証明できない、宇宙の現象がいくつか発見されている。つまりこの数式は未完全であり、不完全な宇宙を表しているのではないカナ?」
早速、数式の謎が解けた。さすが、祖父の助手であり、宇宙の専門家といったところか。ファウストさんの知見に関心をしていると、トリルが口を開いた。
「この数式なら目にしたことがある。ただ、この数式に関しては、高校レベルの数学や物理では、到底操れないものだ。だから、知っていても使えない観賞用の数式として見ていたよ」
「それは、そうだろうネ。でもこの数式と数式の難解さを知っているなんてトリル君は、高校生なのに見込みがある。私の大学にスカウトしたいくらいだヨ」
トリルも知っていたとは、僕は、改めて彼の宇宙好きは本物だと確信する。
「他に何か解ったことはある?」
この調子でいけば、案外早くこの扉の装飾について理解できそうだと、僕は安易に考え、4人に問いかける。
「次、私。」
今日は、珍しくディアもアグレッシブルだ。
「扉の切れ目。対を成しているように見える」
「対か。この地球と月らしいものと、3つの並んだ天体は、対局にあるってこと?」
「可能性の話。切れ目で左右の面積は、ほぼ等値。同形にして同値」
ディアの高い知能レベルの言葉足らずの説明に、僕の凡庸な脳はなかなか追いつかない。
「つまりディアちゃんは、3つの天体と地球と月は、軌を一にしているって言いたいの?」
ディアの意見に色付けする桜紡に、ディアが静かに頷く。
地球と月=3つの天体………。僕では、想像もしえないことをディアは、さらっと言い放った。やはりこの2人をイタリアから呼んだのは正解だったと改めて感慨を抱く。
「私もあの日から、お爺さんの伝言と照らし合わせて、日本語で書かれた文の意味を色々調べてみたんだけど………」
「何かわかった?」
「擦れていて読めない部分以外は、わかったわ」
「すごいな。こんな短い時間で。教えてもらってもいい?」
僕は、あっという間に扉の装飾の謎が闡明されていくため、胸が弾むのを抑えきれず、回答を急く。
「まず、九天九地だけど、これは簡単に言うと、全宇宙のことみたいね。そして、希求の地。これは、願い求める地。次は、多元の地。これだけは、あくまで推測になるけど、前後の文やお爺さんの伝言、そして数式の意味、さっきのディアちゃんの考察。これらを全て加味すると、この言葉に一番当てはまるのは、多元宇宙」
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