第1章 「暁星」 01
序章も終わり、本編突入です!最後までご愛読よろしくお願いします。
01
昨晩の奇矯な夢のせいで、寝不足な僕の名前は、新原繋。繋という名前は祖父が付けてくれた。高校3年生の2学期を迎えようとしている僕は、まだ夏の残暑が残る中、学校に行くことを余儀なくされている。僕の学校は、ギリシャ風ゴティック様式の歴史を感じさせる建築物が立ち並ぶ上品な街並みを抜け、緩い坂を登ったところに建っている古い学校である。街の外観を損なわないように、上手く溶け込んでいるように思える。
僕が登校し、教室に入ると、久しぶりに会う友達同士が談笑し、賑わいを見せている風景が目に入ってきた。僕は、他の友達のように夏休みの思い出話をすることはなく、自分の席に座っていた。しばらくして、先生が教室に入ってくる頃には、みんな自分の名前が書かれた名札が貼ってある席に着席していた。
「起立。礼。着席」
クラスの学級委員長の掛け声で皆一同に同じ行動を取った。
僕は現在、この教室において、みんなから一線引かれた立ち位置にいる。つまり、簡潔にいえば、ボッチということだ。この法則に則れば、机は窓側の1番後ろが特等席……ではあるが、現実はそんなに優しくない。この現実が、どこぞの漫画やアニメであるなら、僕を端っこに追いやってくれていただろう。だが、実際は、教室のほぼ真ん中の位置で、いつも周囲と教師からの視線に身を晒している、もとい晒されている席である。さて、なぜ僕がボッチという立場を頂くことになったのかという設問には、後々答えるとして、今の状況を整理しておこう。
高校生活最後の夏休みも終わり、受験シーズンまっしぐらの装いを魅せているクラスの中で、他の生徒とは全く違う心持ちで、この小さな社会に参加している僕は、新しく決まった席で怯懦していた。僕の学校は、成績順に席が決められていくなんとも過酷なシステムを執っている。教卓の前にいる、美人で聡明でスタイルの整った、厳しく鋭い目付きの女性曰く、真ん中くらいの成績だったということらしい。どうも気に食わないこのシステムは、生徒の勉強意欲、競争心を仰ぐために、代々この学校が受け継いできた素晴らしい伝統とのことだ。ただ、この秋霜烈日で古臭いシステムは、僕には全く無関係の措置である。僕には勉強以外に、一意専心に打ち込まなければならない問題があるのだ。その為、2学期初日のこの日も、僕にとっては、なんの意味も持たない、無味乾燥で、愚にも付かない日常の始まりというわけだ。
さて、先ほどの設問に戻るが、何故、僕が今、この小さな社会でこのような状況に甘んじているのかということだ。ただ、始めに言い断っておくが、僕が外国の雰囲気に、生活に、言葉や人種に順応できなかったというわけではない。ましてや、周囲が順応できなかったわけでも当然ない。友人も多くはないが、過不及無く居る。そして僕が、この学校に、いやそもそもこの国、イタリアに居る理由は、父の祖国であるためだ。生まれは母の祖国であるところの、日本ではあるが、日本での生活は約3年程で、今までの人生のほとんどをイタリアで過ごしてきた。其の辺りを加味しても、余り有るような出来ことが、今年の夏休みに突然に忽然となんの前触れもなく発生した。それがこの状況を作り出す発端だった。
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