引き篭もりの妹の素顔を知りたい!
俺はあの事件から一日、学校の図書室でスマホを片手に自分の作品のコメントを読んでいた
俺の小説にレビューとコメントに小春先生が出現したことが大きな騒ぎとなり、ネット上で大きな話題を生んでいた
そして、あれから一日、俺の小説のPV数が爆発的に上昇した
多分これは小春先生の信者が俺の作品を見てできたものだろう
コメントでは何故この作品を小春先生がオススメしたのかわからないとか、結局俺の悪口が増えただけだった
が、この影響で俺の作品のランキングがバク上がりし、現在6位まで登り詰めた
喜ぶできかどうか…これ、俺の実力ではなくて小春先生の実力じゃない?
「はぁ〜」
「どうしたの?」
「ん?…あぁ夏樹か」
突然声をかけてきたのがクラスメイトの佐藤夏樹、俺の幼馴染であり家が俺の家の隣だったため結構仲のいい数少ない女友達だ
そして家が本屋なのもありラノベ等にはかなり詳しい。いや、オタクのレベルだ
「その溜め息ってもしかして小説のこと〜?」
「うっ」
「ほら、あれでしょ〜?裕也の小説があの有名な小春先生からレビューとコメント貰ったってやつ」
「そ、そうだよ」
夏樹はニヤニヤ笑いながら俺のスマホを覗き込む。その時夏樹の豊かな谷間が見え―――――
「あ、今えっちなこと想像したでしょ〜」
「し、してねぇよ!」
「ほんと〜?」
「あ、あぁ」
「ふ〜ん……まあいいや、今どうなってるの?」
「……ワァオ、かなり上がってるじゃない、6位って…後少し頑張って終了まで耐えれば書籍化いけそうじゃない?」
「いやまあ、そうなんだけどさ…」
「どうしたの〜?」
「いや、なんか釈然としなくないか?自分の実力で書籍化されるんじゃなくてこのままだと、小春先生の影響で俺が書籍化されたみたいじゃないか」
「ん〜でも、小春先生が裕也の作品を絶賛…?したのは確かだし今回の場合異例の自体なんだからファンはそりゃあ見るでしょ?裕也だって小春先生がオススメした小説は読むでしょ?」
「うぐ…」
確かに俺は小春先生の大ファンだ、アニメも小説も全て買うほどだし最近知った雑談配信も毎日すかさず見ている。
もし、小春先生が絶賛した小説なんてあれば絶対に読むだろう
「まあ、私も裕也の小説ちょっとどうかな〜って思ってるけど小春先生が言うのなら書籍化行けるんじゃない?」
「おい、酷くないか!?」
「ちょっと静かにしてよ。ここ図書室よ」
「あ…」
案の定、周りの奴らが俺たちの事を冷たい目で見てくる。そういえばここ図書室だったな、興奮してて忘れていた
「そうそう、ちょっと気になってたことがあるんだけど」
「なんだ?」
「裕也の妹の小花ちゃん」
「小花?あの引き篭もりがどうした?」
「いや、普通に素顔が気になって」
確かに俺も顔は見たことがない、最初の時だって親の後ろに隠れてて顔は見えなかったし、体は見えたがかなり小柄だった覚えがある。
それ以外は現状何も妹の事を知らない
メッセージで顔を見せてくださいとは言ってるが全く出てくる気配がないし、風呂やトイレなんかはいつの間にか済ましてある。
今思えばかなり妹に関しては謎が多い
「そうだな…確かに俺も気になる」
「でしょ?だからちょっとやってほしい事があるの」
「やってほしい事?なんだ?」
「この隠しカメラを部屋にセットしてきて」
「おま、それ盗撮」
「いい?」
「いや流石にそれは」
「クラスの皆に小説の事を」
「はい、分かりました」
「よろしい」
夏樹は俺が小説を投稿しているのを知っている唯一の友達だ、親なんかは知っているがそれ以外で身近な人が知っているのは夏樹だけだ
本当は教える気なんてさらさら無かったが、部屋で書いている最中にいきなり家に押し掛けてきてパソコンを見られて発見という感じだ
「それじゃあ今日学校終わったら押し掛けるからよろしくね〜」
夏樹はそう言うと教室に帰っていった
にしても小花の素顔ねぇ……
確か、一年前に家に来たときは小学6年生と聞いたから今は中学一年生か……
一年中自分の部屋に引き篭もり、顔や声すらも聞かせてくれない妹
普段部屋で何をやっているのか気になってたし、盗撮とはなるが気になってるし夏樹の言うとおりにしてみるか
でも、問題はどうやって妹の部屋に忍び込み、隠しカメラを設置するかだ
俺は妹の部屋なんて入ったことが無いし、妹が来る前の部屋は確か物置部屋で俺はほとんど入ってないはずだ
そんなどうしようもない引き篭もりの妹だが、兄として一度だけでも顔は見てみたい
「よし、やるか!」
「……静かに」
「あ、すみません」
「大体いつもいつも」
俺は大声を出してしまい図書委員に怒られた
だが、そんな説教の内容よりも妹のことを想像してしまう。
でも本当はこんな方法じゃなくてちゃんと面と面を向きあって会いたいなぁ
頼むから、一度だけでいいから部屋から出てきてください