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魔法少女はヒーローの夢を見る  作者: 染島ユースケ
第3章
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15

「随分と、こっぴどくやられたようじゃの」


 そこは、2人きりの和室だった。


 開け放たれた障子の向こうに、純和風の日本庭園を眺む。季節は秋。時刻は22時を過ぎているはずなのに、そこには昼下がりの秋晴れが広がっている。リアルと遜色ない爽やかな風が吹き込んで、縁側に真っ赤な紅葉が舞い落ちた。


「こっぴどく、ってのは語弊だな。割といい勝負だったんだぜ? もう紙一重さ」

「ほぉー? まあ構わん、今回はそういうことにしておこうかの」


 言葉を交わす2人の身なりは、実にアンバランスだった。


 1人は小学生で通じそうな小柄な身体。白衣を着てちょこんと正座する金髪ツインテールのメガネ女子。


 もう1人は同じ金髪でも後ろに束ね、170センチはありそうな背丈。パーカーにホットパンツという装いで、どかっと胡座をかくヤンキー女子。


 まるで不釣り合いな2人が、ちゃぶ台を挟み向かい合っている。


 お察しの通り、脇谷廻とセレクターである。


「じゃが、今回の問題はそこじゃない。ティンクルのことで、少々出過ぎてはなかったか? あやつの監視は頼んでも狂言誘拐までしろとは言っとらんぞ、諜報員『ファントム』よ」


 だが、セレクターは別の名前で呼んだ。


 ファントム。


 それこそが、廻のヒーローアバターに与えられた名前だった。


『幻影』の名が示す通り、彼女の存在は表向きには知られていない。同じヒーローの間でも、ファントムの存在を知るのはほんのひと握りである。


 言わば、ファントムは「影のヒーロー」だった。


「だけど、あんたもそう言いながら機転を利かせて話に乗ってくれた。助かったぜ」

「……ふん」


 セレクターが、不服そうに茶をすする。


「確かに、ちょっと目立ち過ぎたなー、ってアタシも途中で思ったさ。そこは反省してるぜ、マジで。でも、アイツのことはこれ以上放っておけなくてよ」

「ほう。その心は?」

「七星のヒーローに憧れるとこ、リアルでも見てきたからな。その気持ちを、簡単に捨ててほしくなかったんだよ。それだけだ」

「なるほど……」


 見た目にそぐわないセレクターの老成した眼差しが、廻を見据えた。


「お主も、陽の当たるヒーローに憧れたか?」

「…………さあね」


 廻はどこか含みのある笑みを見せた。


「さて、他に用がないなら行くぞ?」


 背を向け立ち上がろうとした廻を、セレクターは「まあ待て」と制す。


「一つ、新しい仕事がある。頼めるか?」

「ふん、どうせ拒否権なんてねーんだろ」


 再び、廻はどかっと胡座をかいた。


「話、聞くぜ」


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