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夏井坂空は、全てを見届けていた。
それぞれの刃が交差して生まれる光。音。息遣い。
それはまるで演舞のように華麗で、それでいて獣のように獰猛な魂のぶつかり合いがあった。
真剣勝負の熱量を肌で感じる。その温度が錯覚なのか、電子的に再現されているものなのかはわからない。
でも、この戦いは本物だと思う。
ヒーローが、帰ってきた。
これこそ、自分が憧れ続けたヒーローの姿だ。
その様は、どこまでも気高く、美しかった。
一進一退の攻防が続く。さっきまで一方的に押されていたティンクル。それが、今では廻と互角に渡り合っている。蘇った。不死鳥の如く。
腹の底から湧き上がる興奮。それから羨望。
自分も、こんなヒーローになりたい。
鍔迫り合いから、一度離れて双方の攻撃が止む。いくつかの言葉を交わすと、それぞれの刀にエネルギーが集約されるのが見えた。2人は言っていた。この一撃で終わりにしよう、と。
緊張が走る。まだ拘束されたままの拳を握る。
一瞬。
初めの一歩は同時。爆発的な瞬発力で肉薄。
「勝て!!」
空は反射的に叫んだ。
刃が交差し、残像がすれ違う。
そして、空は戦いの結末を見た。




