12
空の言葉で、意識が引き上げられた。
何をやっていたんだろう、と七星は思う。
今更になって気づかされた、ヒーローの真理。
ヒーローは、外的要因で作り上げられるものじゃない。見た目で決まるものでもなければ、誰かが決めつけるものでもない。
ヒーローは、心の奥から、目覚めさせるものだ。
自分にとって大切なものを、守るものだ。
じゃあ、神崎七星の大切なものは?
そんなの、決まっているじゃないか――
「いゃあああああっ!」
叫びと共に、ティンクルは廻へと切りかかる。
刃と刃がかち合うたび、鮮やかに散る火花のエフェクト。闘争の熱が、電子仕掛けのライブハウスに戻ってくる。
いや、ただ戻ってきたわけじゃない。
さっきまでより、数段上のレベルで闘いが展開されている。
目にも止まらぬスピード。一瞬の判断と駆け引きの応酬。剥き出しの闘志。そして、それを心の底から楽しむ2人がいた。
「やるねぇ!」
「そっちこそ!」
鍔迫り合いから、弾け飛ぶように離れる2人。お互いの、正義のために闘う真剣勝負。その時間は尊く、濃密だ。それゆえに、激しく体力を損耗する。
急所を外しながらも、小さなダメージを積み重ねていた双方のHPゲージは残り3割を切っていた。
すると、廻は頭部のプロテクターを半透明モードに切り替えた。
「なあ、七星。次の一撃で終わりにしようか」
刀を構える。その柄の部分から剣先へと、淡い光が流れ込む。魔力が注入されている。
「奇遇だね……ちょうど、あたしも同じこと考えてた」
ティンクルも呼応して、刀を構えた。
「廻のやってるそれ、こうすればいいの?」
すると、ティンクルの刀も光を帯びた。廻と同じ、魔力による武装強化。
「おいおいそのやり方、誰から教わったんだあ?」
「見よう見まねよ。廻、前のワーム戦でもやってたでしょ?」
「ハハッ! 確かに難しくはねえが、まさか独学かつこんな短時間でモノにするとはな! お前やっぱりすげぇわ!」
感心して破顔した廻だが、すぐに目の色が変わる。獲物を狙う、猛禽類のような鋭い目。
「本気の一撃、行くぜ」
廻の半透明モードが解除された。
「望むところ!」
お互いの刀が、一際強い光を発する。薄暗かったライブハウスの全体を照らす。
そして。