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魔法少女はヒーローの夢を見る  作者: 染島ユースケ
第3章
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10


 話は、数時間ほど前に遡る。


 つまり七星がヒーロー引退を宣言し、それを聞いた空がショックを受けた、その直後。


 空は、再びヤンキーに絡まれていた。先日の3人と、全く同じ顔ぶれ。


 彼らはレプリカ内で空を見つけるやいなや、この前のリベンジを果たそうと息巻いて空に突っかかっていった。


 しかし、結局彼らの復讐は果たされずに終わる。


「何だ? 見た目の割に弱っちぃなこいつら?」


 5分後、彼らは3人仲良く地面に倒れ伏していた。全員、両腕両足を拘束されている。そして、そんな情けない彼らを見下ろして仁王立ちする金髪の女が1人。


 言うまでもなく、脇谷廻である。


「あの……ありがとうございます」

「何、アタシは当然のことをしたまでさ。あんた、名前は?」

「夏井坂空です」

「空、あんた七星に惚れてんのか?」

「なっ……!?」


 わかりやすく、空は動揺した。リアルに忠実な再現を目指すレプリカは、そんな彼の心理も細かく読みとって表現する。結果、空の顔は真っ赤になった。


「オーケーオーケー、何も言わなくていいぞ。その答えだけで充分だ」

「別に……そういうわけじゃ……」


 顔の赤さが引かないまま、もにゃもにゃとうつむき加減で言い淀む空。だがそんな様子の空を廻は笑いもからかいもせず、そのまま本題に持っていく。


「空には悪いが、さっきの七星とのやり取りをちょっとだけ覗き見させてもらった。そこでズバリ訊きたいんだが、あんたは七星にどうしてほしいんだ?」

「七星さんは……」


 相変わらずの、自信なさげな声。かと思いきや。


「七星さんは、僕の憧れなんです」


 次に続いた言葉には、はっきりとした芯があった。


「でも、今の七星さんは僕の憧れた七星さんじゃない気がするんです。最初に会った時のような自信はなくて、何か大きな壁にぶつかって迷っているように見えるんです。……もしその予感が正しいなら、僕はそれを乗り越える手助けをしたい。自分は非力かもしれないけど、少しでも力を貸したいんです」

「…………へぇ」


 意外と、ちゃんとモノを考えてるじゃないの。


 空の言葉を聞いた廻は、いろいろと試してみたくなった。空の七星に対する気持ち。それから、七星のヒーローに対する気持ち。それらが、果たして本物なのか。


「そういうことなら、アタシが協力してやろうか?」

「いいんですか?」

「ああ。ただし、アタシに1つ考えがある。そのやり方に従ってもらう。いいか?」


 すると空は難しい顔で考えたが、じきに意を決した表情に変わって。


「……わかりました。それで七星さんの力になれるなら、僕は従います」

「おう、いい返事だ。なら早速動き出すぞ。とりあえずは横になってるこいつらをだな」


 廻は倒れたままでいた3人のうちの1人を睨みつけた。ついでに、持っていた漆黒の木刀を眉間に突きつける。


「ひっ」


 相手は無言の威圧に負けて身を縮める。まさに蛇に睨まれたカエル状態。


「ここで会ったのも何かの縁だ、ちょっくら手伝ってもらおうか。ちなみに断るならもう一度シメるが……手伝うのとしばかれるの、どっちがいい?」


 言うまでもなく、彼らの答えは前者だった。


 かくして廻と空、その他3名による狂言誘拐の計画が始まったのである。


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