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魔法少女はヒーローの夢を見る  作者: 染島ユースケ
第3章
30/46

2


 きっと今、自分の魔力は最弱だ。


 レプリカで、のっぺりとした作り物の夜空を見ながら七星は思う。


 リアルと全く等しい時間が流れているレプリカ。だから今はすっかり日の暮れ切った夜である。一応時間を確認すると、まもなく20時になろうとしていた。


 マルウェアに打ちのめされ、空の前で大恥をかいた挙句突き放して逃げ出したのがだいたい3時間前。それから、七星は全ての通信を遮断し、ずっとレプリカの街中を放浪していた。レプリカ内のラボにはもちろん、リアルにすら一度も帰っていない。


 あてもなくぶらぶらし続けていたら、いつの間にかやってきたレプリカの夜。最後にたどり着いたのは、柏駅前レプリカの最西端に位置する高台の公園だった。リアルなら向原団地と呼ばれるエリアの公園。遊具は奥の方に大きめのものが1つだけ。それ以外には、ただの広場がずっと続いている。その片隅、ひっそりと設置されたベンチに七星は力なく座り込んでいた。もちろん、七星以外の人は周囲には誰もいない。誰にも会いたくない七星には丁度いい場所。だから、かれこれ30分はここにいる。


 もう、ヒーローはやめよう。


 力のない、ビー玉のようになった瞳の奥で、七星はそう考えていた。望んでいない魔法少女のアバターを与えられて嫌になって、誰一人救うことはできず、さらには空の心を傷つけた。


 もう、色々とどうにもならないと思った。多分、修復不可能なところまで来てしまった。ならば、大人しく自分がフェードアウトするのが最善手だろう。


「……なんだかなぁー」


 力なく、七星がつぶやく。


「結局何がしたかったのよ、あたしは?」


 虚空に、作り物の夜空に問いかける。それでももちろん、答えが返ってくることはない。


 ベンチに横になる。無力感に苛まれ、どんどん力が抜けていく。大丈夫、どうせ誰も気にしていない。


 ふわふわしている。脱力がセントエルモにも作用しているのか、全身が無重力のような感覚に陥る。距離感の掴めない、夜空の真ん中に堕とされたような。


 それからしばらく続く、仮想の宇宙遊泳。だんだん心地よくなってきた。このまま、終わりなき宇宙の夢に包まれたままでいるのも、悪くないかもしれない。そんなことを考え始めた、その時。


 突如、視界が真っ白に塗りつぶされた。


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