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魔法少女はヒーローの夢を見る  作者: 染島ユースケ
第3章
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1

「魔力とは、これ即ち精神力のことです」


 飾り気のない、真っ白な個室に2人。


 いや、厳密には1人と1体かもしれない。


 机に向かって座る新人ヒーロー候補生の七星と、その前に立つ講師のAI。彼の見た目はよく言えば無駄のない、悪く言えば無骨な作り。まるで針金で組まれた手抜きなマネキン人形のよう。顔はのっぺらぼうで、当然感情は読み取れない。しかし、話し方は普通の人と変わらずに滑らかで聞き取りやすい。


「そして、この精神力というのはMP、つまりマジックポイントとして視界の端に表示されるのです、こんな感じでね」


 すると、七星視点で、視界の端にMPのゲージが出現した。おー、と七星は驚きの声を漏らす。


「これを消費すれば、魔力として攻撃や回復、武装強化など様々な戦術に用いることが可能です。これがいわゆる魔法ですね。特に魔法少女型、魔法使い型のヒーローアバターはこの魔法を使った戦い方が基本になりますので、覚えておいてください」

「あの、質問いいですか?」


 テキストエディタでメモを取っていた七星が挙手する。


「神崎さん、どうぞ」

「MPを消費した場合の回復手段って、何があるんですか?」


 すると、正面の壁に箇条書きの文字が浮かびあがる。


「回復手段については主にこちらの3通りになります」


【MPの回復手段】

・魔法

・アイテム

・自然治癒


「この中で魔法とアイテムについてはこの後の講義でも触れるので割愛しますが、自然治癒については話しておこうと思います。先程魔力とは精神力である、と話したのは覚えてますね?」


 七星はうなずく。


「精神力はレプリカ内で設定されたステータスではありません。リアルと直結する能力です。要するに、筋力や持久力などと同じものなんですね」

「つまり、リアルで休まないと回復できない……?」

「その通り」


 のっぺりした顔が、少し嬉しそうに言った。


「それからもう1つ。ついでにリアルと直結するがゆえの、魔力の特徴を話しておきましょう。端的に言うと、魔力は精神力の強さに比例するのです」

「メンタルの強い人ほど、魔力の数値が高いということですか?」

「単純に言えばそうです。さらに言うと数値だけではなく、回復の早さや魔法の攻撃力なども変化してきます。加えて、魔力はその時のコンディションにも影響します。例えば気分が落ち込んでいたり、自信がなかったりする。すると、魔力へマイナスに作用してくるわけですね。もちろん逆も然り。気分が高揚していれば、本来の数値以上の力を発揮できます」

「へぇ……」

「だから、魔法少女型や魔法使い型のヒーローアバターを操るなら、精神力の強さは不可欠ということです」

「意外と精神論なんですね」

「むしろ昨今のレプリカ、ことヒーローアバターの能力については、あなたの言う精神論が重要視されている場面も多くあります。ただ昔とは違い、ロジックで説明できるものとしての精神論ですがね。だから『根性と気合いで乗り切れ!』とかそんな一昔前のスタイルとは違いますよ。むしろ無理はさせません」


 七星のテキストエディタに赤色の文字に書き込まれる。『精神力の強さは不可欠!』と。


「一見離れているように感じる精神の世界とVRの世界は、意外と近いものなのかもしれませんね……さて、今日の講義はここまでにしましょう」


 講師はAIらしくない感想で、その日の講義を締めくくった。


 もう数ヶ月も前の講義の話だが、七星はふと今になって思い出していた。


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