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魔法少女はヒーローの夢を見る  作者: 染島ユースケ
第2章
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13

 七星が光星とともにレプリカのパトロールをしていたのと、ちょうど同じ頃。


 夏井坂空なついざか そらも、レプリカの中にいた。1人で、レプリカの中で買い物中だった。


 レプリカ内の電子書籍専門店を出て、立ち止まる。改めて、アイテムボックスの中身を確認する。


 空が購入したのは、1冊の参考書。


 それは、ヒーロー候補生選抜試験の問題集だった。


 ヒーローを目指す。本気で、空は決意していた。今は未熟でも、七星さんに弟子入りを断られていても、独学でやれるところまでやってやるつもりだった。


 七星さんのようなヒーローになりたい。できるなら七星さんと共に平和を守りたい。その思いが、まだくすぶることなく燃え続けている。それは、間違いない。ないのだが。


「……七星さん」


 空にはまだ、心残りがあった。


 こまめにチェックするメッセージアプリ。その通知の中に、神崎七星の名前はない。


 確かに自分は七星へのメッセージで『無理に返信しなくても大丈夫』と書いたことはある。だけど、実際に何の反応もないのはやっぱり寂しかった。リアルの書店や携帯からの通販で買える参考書を、わざわざレプリカで買ったのもそのせいかもしれない。レプリカに来れば七星に会えるんじゃないか、という淡い希望があったから。


 しかし、そんな空の願いとは裏腹に、七星とばったり会えそうな予感は1ミリもなかった。わかってはいるのだ。実際はそんなに都合よく会えるはずもないことくらい。


「いや、今は仕方ないんだ……七星さんだって、忙しいんだし」


 自分に言い聞かせるようにつぶやいて、再び歩き出そうとした、その時。


 ふと、何か大きなうねりがやってくるかのように、通行人の流れが変わった。それと合わせて、混乱と不安の空気が流れ込んで満ちてくる。


 通行人のうちの、誰かが言った。


 マルウェアが来た。


 柏駅の南口側から聞こえた。何人か、慌てて逃げてくる人の姿も見える。


 考える前に、空は動き出していた。


 マルウェアがいるという、駅の南口側へ。


 逃げ惑い、混乱する人の中をかき分けて、流れに逆らいながら空は進む。


 南口駅前のやや開けた空間。ドーム状に張られた、透明なバリアに似たアクセス制限。その中で、空は見つけた。


 デジタル世界の産物とは思えないくらいに、生々しくうねうねと蠢くバケモノ。リアルなら全長2メートルはありそうな、巨大な芋虫のようなマルウェア。


 その真正面、突如現れた異形と対峙する2人の姿。2人の、ヒーローアバター。


 1人は、全身を細身のプロテクターで覆われた、まるで忍者みたいな風貌のヒーロー。そして、もう1人は。


「七星さん……!」


 緊張感ではち切れそうな空気の中、険しい顔で敵と向き合う少女の横顔。間違いない、七星だった。


 だが、気になるのはその装備。


 ピンク成分多めのドレス。


 至るところに飾りつけられたフリル。


 胸元と手首にはハート型のアクセサリー。


 頭には大きなリボン。


 手に持った、無駄にカラフルなステッキ。


 その姿は、誰がどう見ても。


「魔法少女……?」


 空は、思わず疑問形でつぶやいた。


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